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Monday, February 14, 2022

「ポスト黒田」にらみで広がった日銀「異次元緩和修正」の思惑 - 日経ビジネスオンライン

黒田東彦日銀総裁。「ポスト黒田」にらみ思惑が広がる(写真:つのだよしお/アフロ)

黒田東彦日銀総裁。「ポスト黒田」にらみ思惑が広がる(写真:つのだよしお/アフロ)

 日銀の異次元緩和が近い将来、金融政策の正常化を進める方向で修正されるのではないかという思惑が、海外勢を中心に市場で広がり、長期金利が上昇している。2月10日には5年物国債利回りが一時0.025%になるなど、小幅ながらプラス圏で推移。2年物はマイナス0.040%まで、マイナス幅を縮小した。

 日銀は異次元緩和を手直しする一環として、2016年1月29日にマイナス金利を導入した。考え方としては、日銀当座預金の一部に課されているマイナス0.1%(短期政策金利)が今後2年間ずっと変わらないとすれば、2年債はこのレベル近辺で推移するはずである。しかし、そうならずにマイナス幅がぐっと縮小したということは、近い将来のマイナス金利の解除を市場が織り込みにいっているということにほかならない。

 日銀は「2%の『物価安定の目標』実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで」現在の金融政策の枠組みである「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続すると表明している。また、この2%の物価目標は政府と日銀の共同声明に明記されており、政府の同意なしに日銀が勝手に2%という数字を引き下げたりして達成を容易にすることは許されないとみるのが、素直な受け止め方だろう。

携帯電話料金引き下げが影響?

 ところが、全国消費者物価指数(CPI)は21年12月分で、総合が前年同月比プラス0.8%、生鮮食品を除く総合(コア)が同プラス0.5%にとどまっている。仮に携帯電話料金の引き下げによる一過性の要因を除けば、プラス幅はもっと大きくなって目標である2%に近づくという主張もある。だが、恣意(しい)的にある部分だけを控除して物価目標が一時的に達成されたかのような数字を作りにいくことは、フェアであるとは言いがたい。

 総務省統計局が公表している全国CPIの上記2つ以外のカテゴリーには、日銀自身が以前に前面に出していた生鮮食品・エネルギーを除く総合(いわゆる日銀版コア)があり、こちらは12月分が前年同月比マイナス0.7%である(9カ月連続で下落)。足元で物価が上昇している主因は原油など国際商品の市況高騰であり、これを除けば日本の物価の実力は足元でまだマイナスだと見ることもできる。

 また、上記の通り、日銀は物価目標が達成された状態が「安定的に持続」するために必要な時点まで異次元緩和を続けるとしている。たまたま何らかの原因で2%の物価目標にワンタッチ届いただけではダメだということである。

 さらに、物価上昇が安定的に持続するためには、毎年の賃金上昇率が現在よりも顕著に高まり、物価のトレンドを規定する度合いが大きいサービス分野の上昇率が底上げされる必要がある。黒田東彦日銀総裁らが物価目標達成に向けては賃金上昇が重要だと繰り返しているのは、このためである。

 むろん、上記は異次元緩和の枠組み(長短金利操作付き量的・質的金融緩和)についての話であって、解釈としては、目標が達成されるよりも前の段階で、長短の政策金利の水準をいじる(端的に言えば利上げする)ことが排除されているわけではない。

 この点についてロイター通信が英文で報道したことが、市場における異次元緩和修正の思惑浮上に一役買った面がある。この記事を受けて、将来の政策金利の水準について文章で一定の約束をしているフォワードガイダンスの修正や、長期金利ターゲットの設定年限を現在の10年債から5年債へと短期化するのではないかといった見方が出てきた。

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