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2022年03月09日
一般社団法人エネルギー情報センター
ここ数か月、保険業界から自然災害による太陽光発電設備の被害による廃棄や近隣への賠償に関する保険商品が発売されています。今回は、脱炭素社会に向けて、保険業界が再生可能エネルギーの持続的な普及をサポートする取り組みを紹介します。
企業の再エネ導入が増加、コーポレートPPAも活性化
2050 年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロに削減するカーボンニュートラルの取り組みを加速させています。日本でも国内の大企業中心にカーボンニュートラル目標・宣言を掲げ、再生可能エネルギーを導入する発表が相次いでいます。
また、自然エネルギー財団のレポートによると、運営する事業電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目指す「国際イニシアティブの「RE100」に加盟する企業は 300 社を超え、2019 年の時点で各企業が使用する電力のうち 40%以上が自然エネルギーに切り替わった。年間に 1000 億 kWh(キロワット時)を超える規模である。日本企業の RE100 加盟数も 60 社を超え」た、ということです。
企業の再エネ導入にあたっては、太陽光発電施設などを自社で整備する、もしくはPPA事業者からの供給を受けるというケースが考えられます。
特にコーポレートPPAは、企業(需要家)が発電事業者や小売電気事業者と長期契約を結んで、新たに建設した再生可能エネルギーの発電設備の電力を固定価格で購入できます。例えばPPA事業者が、電力需要家の敷地や屋根に太陽光発電設備を無償で設置し、発電された電力を需要家に有償提供するというビジネスモデルです。
増加する自然災害と自然災害による保険金支払い
一方で、落雷や台風・竜巻などの自然被害は世界的にも多くなっています。国内の自然災害による保険金支払いは、ここ10年で増加傾向にあるといいます。特に2018年、2019年度は各地で大規模な地震や台風が起きました。そのため、風災と水災を中心に大幅に増加し、2年連続で1兆円を超える保険金支払いとなりました。(以下図、参照)
現在導入されている再エネの多くが太陽光発電ですが、こうした自然災害に伴って、太陽光パネルの破損やひび割れが多くなっています。そうした太陽光パネルは廃棄をする必要がありますが、受け入れ先が少ないことやリサイクルのフローが確立されていないことなどから、設備に置きっぱなしになっていたり、不法投棄されているケースもあります。
また、自然災害によってパネルが飛来し、近隣住民などに被害を及ぼすというケースも見受けられます。
つまり、自然災害による太陽光発電設備への被害に対する安全面の不安や、環境への影響等をめぐる地域の懸念が顕在化しているのです。これらは、事業の継続性や企業のブランド力に大きく関わります。こうした背景から、保険業界が新たな保険商品を開発しています。
PPA事業者向け近隣被災者への見舞金保険の販売
2022年2月21日、三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は、PPA事業者向け近隣被災者への見舞金保険の販売を開始しました。本商品は、自然災害によりPPA事業者が設置した太陽光発電設備が飛散し、近隣の建物等に損壊が生じた場合に、PPA事業者が支出した見舞金等の費用を補償しするものです。この保険商品を通じて同社はPPAモデルの事業を支援するとしております。
他にも、昨年の9月に東京海上日動火災保険では、太陽光発電設備の廃棄費用や賠償リスクを補償する商品を販売することを発表しました。当商品は、一般社団法人の太陽光発電協会(JPEA)が契約者、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)による認定事業者が被保険者となります。
「廃棄費用の外部積立前や積立中における廃棄費用」、「太陽光発電設備の所有・使用・管理等や急増するサイバーリスクに備える賠償責任リスク」などを補償する保険制度の構築は業界で初めてでした。
政府としては、こうした太陽光発電の普及と自然災害の増加を鑑みて、以下のような取り組みをしています。2020年6月に、エネルギー供給強靭化法に含まれる「再エネ特措法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)」の一部改正において、廃棄等費用の積立制度を創設しました。
廃棄等費用積立制度とは、廃棄等費用の確実な積立てを担保するために、10kW以上のすべての太陽光発電のFIT・FIP認定事業(ただし、複数太陽光発電設備設置事業を含む。)を対象とし、認定事業者に対して、原則として、源泉徴収的な外部積立てを求める制度です。
廃棄等費用の積立制度に関する法令の施行と内部積立ての正式な変更認定申請の受付の開始は2022年4月1日で、最も早い案件は2022年7月1日から積立て開始となります。
太陽光パネルのリユース・リサイクル業者紹介サービスを開始
最後に、太陽光廃棄パネルの再活用を促す保険会社の取り組みをご紹介します。損保ジャパンでは、「近年多発する台風等の自然災害により、太陽光パネルが被害を受ける頻度が高まり、廃棄処理される現状に問題意識を持って」いたといいます。実際に、国内で製造・使用されている太陽光パネルは多くが産業廃棄として処理されています。同社では、こうした背景として「リユースや流通の可能性を判断できる事業者がおらず、再販市場が広がっていないことに起因する」としています。
そこで、損害保険ジャパン株式会社およびSOMPOリスクマネジメント株式会社は、自然災害により被災した太陽光パネルの保険金支払い時に、リユース(再使用)・リサイクル(再資源化)できる業者を紹介し、今まで廃棄されていた太陽光パネルを再活用するための取組みを開始したと発表しました。被害に対する補償や廃棄費用に対する補償だけでない、保険会社が持つネットワークを通じてさらなるソリューションを提供している好事例といえます。
いかがでしょうか。持続可能な社会をつくるための再生可能エネルギー導入。しかし、その運用が持続可能性でなければ目的を達成することができないというジレンマがあります。今回ご紹介した保険業界の取り組みは、エネルギー業界にとっても心強い動きであると言えるのではないでしょうか。
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一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
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