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Thursday, March 11, 2021

「人間志向」のアプローチで持続可能な成長を──ポスト・デジタル時代、中堅企業の救世主へ - Forbes JAPAN


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「ポスト・デジタルの世界では、循環型社会における『持続可能な成長』が重要な価値観となる。企業がそうしたフェーズに移行する上で必要なDX支援を行なう会社を目指しています」

2020年12月、SHIFTグループでシステム開発を手掛けるホープスと、企業のDXを支援するクラウディオの合弁企業として、新会社ADX Consultingが誕生した。

同社を率いるのは、クラウディオ副社長の有江和文。アクセンチュアでの16年のバックグラウンドを持つ、ITコンサルティングのプロフェッショナルだ。

冒頭のビジョンを、有江は落ち着いた口調で語った。彼がこだわるのは、従来の“業務中心型”とは異なる「人間中心型」のアプローチ。クラウドERPの導入支援を独自の手法で推進し、新時代に寄り添うDXを実現するのだという。

デジタル化が浸透した後の日本社会を見据えた、中堅企業のDXを推進するADX Consulting。彼らは一体、何者なのか。

「2025年の崖」を乗り越える......3社の決意


「一緒に事業を立ち上げないか?」

そう口火を切ったのは、ホープス代表の上原健太郎だった。

「社内のエンジニアにキャリアの選択肢を豊富に持たせたい。クラウディオと一緒に事業をやることで、社員がコンサルタントとして成長できる道を用意できないかと思っている」

上原は、クラウディオの有江らにそう打ち明けた。

クラウディオのメンバーは、プロジェクトを通じて長年にわたりホープスと親密な関係を築いていた。上原は同社の実力を十分に知って、この提案を持ちかけたのだ。

また、ホープス社の親会社であるSHIFTにも、両社の連携に対する期待があったと有江が言う。

「経産省のDXレポートで取り上げられている『2025年の崖』。DX推進しなければ、業務効率・競争力の低下により、2025年から年間で現在の約3倍、約12兆円もの経済損失が発生すると予測されているものです。

これを乗り越えるために、今、各社がこぞってERP刷新を進めています。こうした市場のニーズに応えるべく、SHIFTさんにはERP関連ビジネスの経験が豊富なパートナーを求めていました。クラウディオは、その期待に応えられるのではと考えられていたそうです」

一方クラウディオにとっても、この提案は魅力的だった。紹介や既存のクライアントのみに頼るのではなく、新規のマーケットに打って出ていくためには、SHIFTグループのブランド力を活かさない手はない。

ホープスの提案に対する有江らの答えは「Yes」。2020年12月、クラウドERR導入支援を担うADX Consultingが発足した。

新会社の運営において、3社は緊密な連携を図っている。クラウディオはコンサルティングのノウハウを提供し、ホープス社は開発リソースを投入。SHIFTとはすでに共同営業を開始しており、シナジーが生まれつつある状況だという。

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しかし、ここまでの話を聞くと、各社の要望は業務提携で満たせた気もする。なぜ、新会社を立ち上げる必要性があったのだろうか?

「確かに、わざわざ会社をつくらなくてもこうした枠組みでのビジネスは可能です。ただ、別々の会社のメンバーとしてやるよりも、事業体を持った方がプロジェクトにコミットできる。お客様に責任を持って対峙していくには、この選択がベストだという結論に至りました」

やるからには、本気でやる。そうでなければ、クライアントへの価値提供なんてできるわけがない──。

新会社の設立は、時代の荒波を乗り越えようとする3社の決意の表れでもあった。

持続可能な成長を実現するのは、“人間中心”のコンサルティング


社名の「ADX」は、Accelerating Digital transformationの略。同社の存在意義は、「DXの加速」にある。

「デジタルの力で循環型社会を実現する」というコーポレートミッションの達成に向けて有江が提唱するのは、マーケティングの手法を応用した方法論“HOA(Human Oriented Approach)”だ。

「HOAを一言で表すと、『あるべきオペレーションの姿を考える際に有用な、人間志向のアプローチ』。従来の業務改革では『業務』に焦点を当ててプロセスを変える方法が主流でしたが、HOAでは実際にオペレーションをする『人』に注目します」

従業員のペルソナを分析し、カスタマージャーニーマップを引いた上で、従業員がストレスなく且つ効率的に業務を進められるプロセスを考えるのだと、有江は続ける。

「例えば、営業担当者が営業事務に見積もりの作成を依頼する業務について考えてみましょう。このプロセスを改善する場合、従来は『見積書の書式をどのように変更するべきか』という議論が先に来ていました。しかしHOAでは、営業担当者と営業事務の間に発生するコミュニケーションや、それぞれの動きを見て、業務を整理することから始めます」

どんな順番で物事を確認し、どんな情報を組み合わせてオペレーションするのか。こうした視点に基づくコンサルティングは、クラウディオが手掛ける近年のプロジェクトに導入されており、すでに一定の効果が現れているという。

また、HOAの目指す業務改革を実現するためのクラウドERPの開発手法も、持続的な成長を叶える上で最適なものが選ばれている。

「人の考え方は状況に応じてどんどん変わっていきますから、常に見直しを行い、適切な業務プロセスやシステムを考え続けなくてはなりません。そのため、HOAに基づく業務システム開発は全てアジャイル開発で行います。持続的に機能改善できる体制を整えることが、コスト削減や業務効率化などの付加価値につながるのです」

ポスト・デジタルの世界に寄り添うDXは、“人間志向”のアプローチによって実現される。有江らは、変革を望む全ての企業に一筋の光をもたらす方法論にたどり着いたのだ。

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大手コンサルファームは競合ではなく、「協業」相手


3社の期待を乗せて、大海へ漕ぎ出したADX Consulting。船頭を務める有江には、何事にも動じない芯の強さを感じさせるものがある。長年のキャリアで培ってきた経験が、自身の中に深く錨を下ろしているからなのだろう。

有江はクラウディオの創業前、シグマクシスで60社ほどの中堅企業を回っている。そこで、DXが全く追いついておらず、時代から取り残されている現状を目の当たりにしたという。

「大手のコンサルティングファームは大企業のDXを中心に対応していますが、DXは大企業だけが達成すればいいものではありません。持続可能な社会をつくるためには、社会全体がDXを実現しなければならない。今、その担い手が必要とされています。

そもそも大手のコンサルティングファームと弊社とでは、マーケットに対して存在感を発揮していけるセグメントが異なる。我々は中堅のお客様に対する強みを持って成長してけると考えています」

巨大な競合がひしめく中、有江が勝算を見込んでいる理由はここにあった。

また、有江は古巣のアクセンチュアとも良好な関係を維持している。クラウディオと連携して取り組んでいる案件もあり、「競合というよりは協業関係にある」そうだ。

そんなADX Consultingに、コンサルタントとしてジョインすることで得られる価値とは何だろうか。

「大手のコンサルティングファームでプロジェクトを推進する場合、チームの中の一つの役割を持つことになるので、得られる経験やスキルは専門化されますが、限定されてしまう側面もあります。

私が自分の経験から言えるのは、お客様に価値提供する上で本当に求められているのは、複数の専門性を深めた幅広い視点を持つ人だということ。その点、弊社では全スタッフが俯瞰的な視点を持って動いている。このような環境は、業界の中でも貴重だと認識しています」

有江の視界は、時代の変化を乗り越えようとする無数の中堅企業を捉えている。これまでの日本経済を支えてきた企業が、DXの波からこぼれ落ちてしまわないように。

ポスト・デジタルの世界へと移行する日本社会のピースを埋める役割を、ADX Consultingは果たすのだろう。

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