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Tuesday, June 11, 2024

チョコはしばらく高嶺の花に、カカオ豆不足が駆り立てる新たな挑戦 - ブルームバーグ

チョコレートの原料となるカカオ豆の不作に伴う価格高騰が、菓子メーカーや原料を扱う企業の頭を悩ませている。収穫量の回復が見込みづらい中、各社は数年先を見据えた仕入れ先の分散や代用材料の拡大に挑んでいる。

  ニューヨーク市場でカカオ先物は4月に一時1トン=1万1000ドルを上回り過去最高を 更新した。その後調整したが、10日時点では9687ドルと1年前の3倍超だ。チョコレート菓子の価格も上がっている。明治が「きのこの山とたけのこの里」の袋タイプの内容量を約3割減らし、実質 値上げしたほか、「チョコボール」で知られる 森永製菓もチョコレート菓子を含む49品目について3.3ー18% 値上げした。

  見通しも厳しい。国際カカオ機関(ICCO)は、2023/24収穫年度(23年10月1日ー24年9月30日)の世界生産量は445万トンと、前期比11%減を見込む。だがこうした状況が、持続可能な形でカカオ豆を調達し、チョコレートを作ろうという動きをさらに後押しする可能性もある。

チョコレートの消費者物価指数

基準の20年と比べると2割弱上昇した

Source: 総務省の発表をもとにブルームバーグが作成

  カカオ豆の価格高騰は、チョコレート業界にとって「大きな転機だ」と話すのは、 伊藤忠商事のカカオ・ゴマ課長の山田恵公氏だ。同氏によると、安定供給を望む一部の大手菓子メーカーからは、カカオ豆の調達地分散を求める声が上がり始めている。

  世界銀行によると、日本が輸入するカカオ豆の 約75%はガーナ産だ。苦みや酸味が少なく「日本人の味覚に合っている」ためだと 日本チョコレート・ココア協会の藤田康子事務局長代理は説明する。

  だが、世界のカカオ豆生産の半分以上を占めるガーナと隣国コートジボワールでは供給減が見込まれる。ICCOは2023/24収穫年度にガーナで前期比11%減、コートジボワールで同20%減と 予想する。日本貿易振興機構(JETRO)は豪雨が農作業や病気のまん延、運搬作業に影響を及ぼしていると 背景分析する。

  カカオ農園の減少や密輸、病害などの問題も深刻で、山田氏は「ガーナ1国に頼るのではなく、もっと分散させていかなければいけない」と語る。ナイジェリアやカメルーン、風味は異なるがエクアドルやペルーへのシフトも考えられるという。

  カカオやナッツなどの輸入販売を行う コンフィテーラの今村雄紀社長も、今年はガーナ産カカオ豆100%のチョコレートを供給していたメーカーの間で他の産地をブレンドする動きが広がっていると話す。

原料の多様化

  産地の分散に加え、原料を多様化する動きも現れている。 不二製油グループ本社はカカオバターの代替として使用される植物性油脂をパーム油から製造するが、今後は代用油脂への需要が高まると見込み、生産量を15ー20%程度増やす計画だ。 

Brazil Cocoa Farms Go High-Tech in Bid to Upgrade Ailing Market

カカオ豆

Photographer: Dado Galdieri/Bloomberg

  チョコレートは、カカオ豆から皮などを取り除き磨砕したカカオマスに、カカオ豆に含まれる油脂分であるカカオバター、ミルクや砂糖などを混ぜ合わせて製造する。不二製油Gが製造するチョコレート用の植物性油脂は、カカオバターの口溶けを再現することが可能だ。融点を調節すればパリッと割れる食感やチョコレートの劣化防止にもなる。

  酒井幹夫社長は、カカオ豆価格の高騰で植物性油脂を使用する コンパウンドチョコレートへの評価が高まるとし、「大きな機会になる」と決算 会見で述べた。

秋に値上げも

  とはいえ、カカオ豆の価格高騰は容赦なく、数カ月後には再び小売価格に反映される可能性も指摘される。伊藤忠の山田氏や協会の藤田氏は、秋ごろの値上げを予想する。菓子メーカーは半年から1年先の原料を確保するため、9月頃に価格転嫁せざるを得なくなるからだ。

  持続可能なチョコレート生産に向けて、新技術への投資も進む。 明治ホールディングスは、カカオ細胞の培養技術を開発する米スタートアップ、カリフォルニア・カルチャードへの 出資を決めた。記録的な先物価格の上昇と供給逼迫(ひっぱく)は、チョコレート生産技術への新たな挑戦を企業に催促している。

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