
奈良教育大(奈良市)は、正倉院宝物や奈良の歴史文化遺産を「持続可能な開発目標(SDGs)」の教材として活用する取り組みを進めている。1300年受け継がれてきた宝物そのものや、成り立ちこそが「本物のSDGs」と位置づけ、目標を感じ取ってもらう狙いだ。(土谷武嗣)
教育現場で
「宝物を国内だけで制作することは不可能。持続可能な社会の実現に必要な国際協力のたまものです」。10月中旬、4年大竹玲央さん(21)の発表に、他の学生約10人が耳を傾けた。
社会課題の解決に主体的に取り組む「持続可能な開発のための教育」(ESD)の視点で、世界遺産を学ぶ授業の一コマだ。
福島県出身の大竹さんは、宝物の部材には東南アジア産の
授業を担当する中沢静男教授(63)は「宝物が運ばれ、現代に受け継がれるためには様々な協調が必要」と指摘。SDGsの17の目標の一つ「パートナーシップで目標を達成しよう」にあたるという。
ツアーも開催
同大は2020年度から、中沢教授が奈良商工会議所などと協力し、世界遺産「古都奈良の文化財」をSDGsの教材として活用する検討を進めてきた。東大寺や春日山原始林を巡る3種類の体験ツアー「奈良SDGs学び旅」として、修学旅行や企業研修での活用を呼びかけている。
ツアー参加者は、奈良の歴史文化遺産が17の目標のどれに当てはまるかを記した冊子を手に散策。大仏建立に込められた人々の願いが「貧困をなくそう」、鹿と人間が共生してきた奈良公園が「住み続けられるまちづくりを」などの目標と合致するという。これまでに約9000人が参加した。
中沢教授は「奈良には持続可能な社会を生み出す人を育てていく本物の学びの機会がある」と話す。
SDGsを文化遺産継承に活用する取り組みは、各地で広がっている。
岩手県平泉町は、中尊寺などの世界遺産「平泉」を巡ってSDGsを学ぶプランを用意。浄土思想を軸に、戦争のない理想郷を目指した町づくりが「すべての人に健康と福祉を」などの目標に関連しているという。
内閣府のSDGs未来都市に選ばれた神奈川県鎌倉市は、明治末期に建てられ、能舞台や茶室を備えた「旧村上邸」を市民活動の場などとして貸し出している。
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