1947~49年生まれの「団塊の世代」が75歳に入り出す2022年は、「超高齢化社会」の始まりである。今後、年金、医療、介護などの社会保障費のさらなる増大は必至だ。一方で、少子化の進行で「支え手」が減少していく懸念は拭えない。
社会保障制度の持続性をどう確保するのか。参院選で自民党は全世代型社会保障の構築を掲げ、野党は支援の拡充を訴える。だが、各党とも国民の痛みを伴う財源についての言及には消極的だ。給付と負担は、セットで論じられなければならない。現状ではあまりにも議論が足りない。
政府の全世代型社会保障構築会議が、5月に中間整理をまとめ、経済財政運営の指針「骨太方針」にも反映された。給付は高齢者が中心で、負担は現役世代が中心となっているこれまでの社会保障制度を見直し、全ての世代が安心できる仕組みづくりを目指すという。子育て・若者世代への支援を「未来への投資」として喫緊の課題と位置付け、社会経済の変化に応じた制度を構築するとした。
会議では子育て支援策の充実に力を入れたが、給付と負担のバランスを改善する具体策には乏しかった。育児休業給付を雇用保険から切り離して再編成する案もあったものの、中間整理には記されていない。大幅な改革には財源の確保が不可欠だ。参院選をにらみ、負担増につながる事案を避けたようにも映る。
社会保障制度の「支え手」を増やさなければならないが、現実は少子化に歯止めがかからない状況だ。21年の出生数は約81万人と統計開始以降で最小を更新した。生産年齢人口(15~64歳)の急減は、制度の維持、存続を揺るがす。危機感を持って問題克服に取り組むべきだ。自民は出産一時金の引き上げで仕事と子育てを両立する環境を整備するとし、「人への投資の倍増」が必要だとする国民民主党は教育国債の発行を提案する。
内閣府が公表した「令和4年版高齢社会白書」によれば、21年の65歳以上人口は3621万人で総人口に占める割合(高齢化率)は28・9%。厚生労働省の研究機関、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、今後も増加傾向が続き、42年に3935万人でピークを迎える。
社会保障の給付費は21年度が129兆6千億円。00年度から1・7倍になった。「団塊の世代」が全て75歳の後期高齢者となる25年度に140兆円。40年度は190兆円に増えると推計される。社会保障制度は支え合いが基本だが、現役世代の保険料のみでは賄えない。給付が増え、税金や国債などに頼る部分も増大し続けている。社会保障の財源となっている消費税は、物価高対策として野党がこぞって引き下げや廃止を公約した。借金は膨れ上がり、次の世代につけを回すだけだ。
公的年金は今月支払われる分から0・4%減額となった。年金額は物価と現役世代の賃金の動向で毎年改定されるが、コロナ禍で賃金指標がマイナスになったためだ。物価高の下、実質的にも目減りしている。受給者は大きな負担を感じるだろう。
今後、物価や賃金が上昇しても、年金額は実質では増えないことが見込まれる。若い世代が将来受け取る額を確保するために年金支給額を抑制する「マクロ経済スライド」が導入されているからだ。5年ごとに制度を見直すが、19年の財政検証では基礎年金のマクロ経済スライドは47年に終了することになっている。
10月からは75歳以上の医療費窓口負担を原則1割から2割に引き上げる。サービス利用時の自己負担が原則1割の介護保険制度についても、財務省が2割負担の対象拡大などを検討している。
高齢者にも応分の負担を求めるなど、社会保障制度は「痛み」にも向き合わなければならない。各党にその覚悟があるのか、見極めたい。
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