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Saturday, April 2, 2022

地域の主体的変化を支援、持続的まちづくり目指す 宮城県の「蛻変プロジェクト」 - 河北新報オンライン

 宮城県は、栗原市の六日町通り商店街のような地域再生モデルを「蛻変(ぜいへん)」と定義し、多くの地域に波及させようと2020年度から側面支援を続ける。人口減少や都市一極集中という社会環境に対応して地域が自ら変わっていく姿に、幼虫から成虫へと脱皮する生態変化を表す言葉のイメージを重ねた。キーワードは「人」だ。

 蛻変プロジェクトはひとまず5カ年計画で構想された。事業展開イメージは図の通り。課題の掘り起こしから始まり、交流人口の創出による持続的なまちづくりを目指す。

 地域の担い手が課題に気付き、主体的ににぎわいを生み出す過程に主眼を置く。県は以前からの事業も含め、段階に応じて地域を後押しできるようなメニューを用意する。

 19年度に始めた「商店街ネクストリーダー創出事業」では、若手商業者のグループなどの事例を補助したり、先進地を視察するセミナーを行ったりする。栗原市の六日町合同会社を含め、21年度までに延べ25団体を採択した。

 21年度の「商店街グローアップ支援事業」では商店街組織やまちづくり会社を対象に、新型コロナウイルス収束後を見据えた取り組みやイベント開催を22件補助した。活性化を主導する民間の企業団体を支援した事業もあり、22年度以降も続ける。

 「蛻変」というネーミングを提案した千葉隆政経済商工観光部長は、ある経営者が社会ニーズの変化に順応する「蛻変経営」を掲げたことにヒントを得たという。「地域には若手事業者や移住者など、問題意識を持って地域を変えたいと願う人が必ずいる。『補助金の切れ目が縁の切れ目』とならないように長い目でバックアップし、地域外の人も巻き込むうねりを大きくしたい」と狙いを語る。

蔵王で地域活性化に取り組む経営者の話を聞いた「鳴子未来会議」=2月15日、大崎市鳴子温泉の旅館すがわら

鳴子温泉街の再生へ一丸 経営者ら「心強い」

 宮城県が蛻変プロジェクトで特に力を注ぐのが、街の衰退が続く鳴子温泉(大崎市)の再生だ。

 全国的な知名度がある鳴子温泉も団体旅行のピークアウトで観光客が年々減り、近年は新型コロナウイルス禍が追い打ちを掛ける。県の観光統計によると、2020年の宿泊観光客数は前年比35・1%減の34万4200人で、10年前の半分以下。空き家も増え、地価の下落が止まらない。

 県は20年度、旅館の若手事業者や市の担当者を交えた意見交換を重ね、課題を共有するとともに打開策やその運営体制、街の将来像を議論した。

 21年度には「観光地空き家利活用推進モデル事業」を始動。行政と連携した地方創生に取り組むマコトウィル(仙台市)に業務を委託し、街の空き家調査を通して新事業の実現を探ってきた。

 同時並行する形で21年12月以降、勉強会「鳴子未来会議」を開催。2月中旬の会議には、温泉街にぴったりの品々をそろえる「温泉コーデショップ」を蔵王町などで展開する経営者を招き、県や市の職員、旅館関係者ら約20人が鳴子活性化のアイデアを出し合った。

 鳴子温泉では18年、若手経営者らが「NARU-Go!再生プロジェクト」を発足させた。鳴子峡ライトアップなど成果も上げてきたが、中心メンバーで旅館「東多賀の湯」専務の遊佐翔さん(31)は「活動に限界があった」と明かす。

 「旅館の業務は多忙。自分たちでまちづくりを主導したり、空き物件の大家と交渉して管理したりするには人手が足りなかった」。当初20人いたメンバーは半減。遊佐さんは「市の立場では鳴子だけ力を注ぐのが難しい面もある。県が積極的に関わってくれるのは心強い」と感謝する。

 県とマコトウィルは地域内外の人が集う拠点として、空き家を活用した店舗付きのコワーキングスペースを整備する考え。店舗は地元住民も観光客も利用できるパン店などを検討中で、4月中旬に地域で説明の場を設ける予定だ。マコトウィルの島征史さん(30)は「それぞれの宿の努力とは別のアプローチで地域を盛り上げたい」と話す。

 鳴子温泉を担当する県観光政策課主事の佐々木友莉さん(29)は、意見交換や勉強会に毎回通う。「鳴子をよくするために何かできるか日々考えるようになった。県職員が数年で交代しても、思いが引き継がれるような地元との関係を築きたい」と力を込める。

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