鹿児島・奄美大島の瀬戸内町で、チョコレートの原料であるカカオの栽培に取り組む男性がいる。カカオは多くが外国で栽培されているが、地元産カカオで作ったチョコレートを特産品にしようと奮闘中だ。
四季がある日本ではカカオ栽培難しく
瀬戸内町の古志集落にある農業用ハウスでは、特産のパッションフルーツが栽培されていて、その片隅にカカオの木がある。
この記事の画像(14枚)木の枝や幹にぶら下がる、黄色く熟したカカオの実を収穫していく。熟した実は、大きいもので長さ20cm、直径13cmにもなる。
チョコレートの原料になるのは、実の中にある種子「カカオ豆」だ。1回の収穫で5kg~10kgくらい採れる。
栽培を手がける清水健太郎さん(47)は神奈川県出身で、2013年に夫婦で古志集落に移住した。
友人の勧めで、5年前に関東の熱帯植物専門店で、カカオの苗木を購入し育て始めた。しかし、栽培方法が分からず、身近に聞ける人もいなかったため、ネットで調べたという。清水さんは「英語の論文とか、向こう(生産地)の動画とか、日本での情報はほとんどないので手探りでした」と当時を振り返った。
カカオは、アフリカのコートジボワールやガーナ、インドネシアなど、高温多湿の地域で多く栽培されている一方、四季のある日本では栽培が難しいとされる。購入した約20本の苗木も、多くは成長しなかったが、2022年に2メートルほどに育った木を鉢から土に移植したところ、2023年には初めて小さな実をつけた。現在は5本を育てている。
清水さんは「うれしかったですね。最初に1cmくらいの実がついた時は『ウオー!』と思いました」と当時の喜びを語った。
2024年には収穫できるまで実が大きく育ち、熟した順に1月から3回に分けて、約50個を収穫した。
カカオの実からチョコレート作り
カカオの実を使ってチョコレートを作ってみようと考えていた清水さんに、カカオ70%のチョコレートを作ってもらった。チョコレート作りに欠かせない工程もネットで調べ、試作を重ねてきた。
簡単に説明すると、発酵させたカカオ豆を焙煎(ばいせん)して乾燥させ、フードプロセッサーで攪拌(かくはん)していく。
作り始めて30分、柔らかいチョコレートができあがり、型に流し込み冷蔵庫で固める。
取材した日は、清水さんのカカオ栽培に注目している瀬戸内町農林課の泊広明さんが訪れ、チョコレートを試食。「以前よりも酸味とかが感じられなくなり、食べやすくなっています」と話す。
ちなみに、取材した記者は「カカオの苦みもあり甘さもあって、しっかりとチョコレートの味がします」と自家製チョコレートを堪能していた。
「風味があって特徴がでている」
チョコレート作りを模索する清水さんは、同じ奄美大島の龍郷町で、外国産カカオ豆でオリジナルのチョコレートの製造、販売を行っている専門店を訪ね、アドバイスを求めた。
清水さん試作のチョコレートを試食した店主の越間崇喜さんは、「風味もあって特徴が出ていて、すごくおいしいですね」と高く評価した。
その上で、越間さんは「焙煎や発酵のデータをしっかり取って、良い品質のカカオ豆を作って、そうしていいチョコレートになると思うので、今後、活躍していただきたいと思う」と、アドバイスとエールを送った。
清水さんも「見たことがない機械や工房を見せてもらい、テンションが上がりますよね。『こうやるんだ』というところが結構あって勉強になる」と、ますます意欲が出た様子。
今後さらに木を増やす計画だが、カカオの実を安定して一定量、確保できるかが課題だ。
奄美大島・瀬戸内町産のカカオ豆を使ったチョコレートの製品化を目指し、清水さんの試行錯誤の日々が続く。
(鹿児島テレビ)
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