西アフリカのカカオ農家が苦しんできた「格差のつけ」や、それと似た構造にある「物流の2024年問題」について、『マネーの代理人たち』の著者で、経済ジャーナリストの小出・フィッシャー・美奈氏が、解説する。
春の台所を直撃した食品値上げラッシュ
新年度から家計を直撃している値上げラッシュ。この4月にはマヨネーズからハム、トマトジュースまで食品で2800品目以上、ティッシュやトイレットペーパー、宅配便も値上げされた。
おまけに野菜まで白菜一株1000円とか、キャベツ一玉400円などという異常価格。暖冬で生育が早まったために「冬野菜」は安くなったのだが、その代わり早くも収穫がピークアウトして「春野菜」が値上がりしているのだ。
消費者にとってはもういい加減にしてほしいというところだが、電気代も政府の再エネ賦課金値上げ(5月)と補助終了(延長があるかもしれないが、なければ6月)で、さらに値上がりする見通しだ。赤道付近の海面水温が平年より2度も高い「スーパー・エルニーニョ現象」の影響でこの夏は昨年よりひどい猛暑になりそうだ(NASAなどの研究機関)というのに、エアコンも気楽に使えない。
その「エルニーニョ」の異常気象で、世界的にトウモロコシ、コーヒー豆やカカオ豆、オリーブなどの収穫が打撃を受けている。中でも極端なのが、チョコレートの原料となるカカオ豆だ。カカオ豆の先物価格は、この1年半で5倍(トンあたり2,000ドル台から1万ドルを突破)に爆騰している。
何が起きているのかー。
カカオの木は、とてもデリケート。高温多湿で安定した気候、直射日光から守られた日陰、水はけがよい土壌などを必要とし、この条件を満たすのは赤道近くの特定地域に限られる。これまで、西アフリカのコートジボワールとガーナで世界のカカオ豆生産の6割を占めてきた。その両国のカカオ農園が、異常気象による水不足や洪水、ココアの木を枯死させる病気(カカオ膨梢ウィルス)の蔓延などに襲われたのだ。
ガーナではピークに100万トンを誇った収穫量が今季は半減する、という見通しも伝えられる。
カカオ豆の価格決定は生産農家が主導権を持つのではなく、アルゴリズムによる超高速コンピューター取引が主流となったロンドンやニューヨークの先物市場で決まる。カカオ豆価格がパニックのように跳ね上がった背景には、「クオンツファンド」と呼ばれるヘッジファンドの、買いが買いを呼ぶ「モメンタム投資」(株価上昇の勢いが強い市場シグナルがあるときに買いを入れる戦略)の影響もある。
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