バレンタインに贈るチョコレートといえば、華やかなイメージ。しかし今年目立つのは、廃棄される可能性のあったフルーツなどを活用し、環境に配慮したものだ。食品ロス削減に貢献するだけでなく、素材の持ち味を生かし、チョコレートに新たな味わいを加えている。
有名パティシエが考案
「小さな傷などによって規格外になった食材にも、味の良いものがあると伝えたいと考えました」
そう話すのは有名パティシエの鎧塚俊彦さん(58)。今年のバレンタイン商品の一つに手掛けたのが、傷や見た目が理由で廃棄寸前だったフルーツから作ったピューレを使った、「ソフティショコラSDGs」(2401円)。
使用したピューレは、白桃、シャインマスカット、ブラッドオレンジ、ラ・フランス(洋ナシ)の4種類。これらを生チョコレートと組み合わせた。「とても味が強いチョコレートと組み合わせるのは非常に難しい。味のバランスを整えながら作り上げた」(鎧塚さん)という。
オレンジなどのかんきつ類より酸味が弱い白桃のピューレを使ったゼリー菓子に合わせたのは、酸味もあるルビーチョコレート。容器からスプーンですくい口に含むと、ほどよい甘さとさわやかな酸味が広がった。
この廃棄ロス寸前のフルーツから作ったピューレを使ったチョコレートは、高島屋の限定商品。今年は「トシ・ヨロイヅカ」を含む5ブランドがピューレを活用した。こうした取り組みは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に掲げられた「つくる責任つかう責任」などの達成を後押しすることにもつながる。
高島屋食料品部のバイヤー、森下由佳子さんは、「全社的にサステナブル(持続可能)をテーマにした企画に取り組んでおり、それをバレンタインにも取り入れた。続けることに意義がある」と話す。
8割超「サステナブル」に関心
サステナブルな消費は、今年のバレンタインの潮流でもある。
松屋銀座(東京)が昨年12月に行ったウェブ調査では、回答した459人のうち85%が「チョコレートに関するサステナブルな取り組みに関心がある」と答えた。
消費者の関心の高まりを受け、松屋銀座もサステナブルをうたう商品を複数扱う。例えば「チョコレートジャングル」というブランドの「カカオパルプホワイトチョコレート」(1620円)は、砂糖の代わりに、カカオの果肉「カカオパルプ」をパウダー状にしたものを使う。
カカオパルプは糖分と水分が豊富で、フルーティーな風味があるという。しかしこれまではカカオ豆の発酵過程に活用された後、捨てられることが多かった。
同ブランドを扱う立花商店(大阪)の峰松功至さん(48)は「海外ではカカオパルプが注目され、日本でもいろいろなメーカーが材料として扱うようになってきている」と語る。
使用する紙も削減
商品に使う紙の削減に取り組んだものもある。フランスのブランド「ジャン=ミッシェル・モルトロー」は昨年1月から、粒チョコレートの数や大きさを変えず、詰め合わせの箱を従来より一回り小さくした。輸入販売元の「ORGANIC HOUSE」の企画担当者は「環境に配慮して箱のサイズを変更し、紙の使用量を少なくしたら、高騰する物流コストを抑えることもできた」。サステナブルな取り組みがコスト面でもプラスに働いたようだ。
(竹中文)
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