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Friday, November 24, 2023

クローズアップ県政<持続可能な地域づくり> 佐賀県政特集2023 - 佐賀新聞

 持続可能な地域づくりには、地元で働き続けることのできる環境の整備が欠かせない。県は、林業分野で木材生産と防災機能を併せ持つ森林と林業を守る「さがの林業再生プロジェクト」を展開し、産業分野では世界的な企業の進出を実現するなど戦略的な企業誘致を進めている。

林業のサイクル持続後押し

 人工林の割合が全国一の佐賀県。その多くが収穫時期を迎えているが、担い手不足などで伐採が進んでいない現状がある。林業を再興し、県土保全や防災といった森林の多面的機能を守ろうと、県は「さがの林業再生プロジェクト」に取り組んでいる。

さが林業アカデミーの林業講習会で実践研修する1期生=2月、嬉野市内の県有林

 戦後、県内に植林された木は、7割が木材利用に適した樹齢約50年以上となり、収穫期を迎えているが、輸入材による価格低迷や林業従事者の減少などで伐採が進んでいなかった。しかし、2021年のウッドショックで世界的に木材価格が高騰し、品薄になったことで国産材活用の機運が高まった。

 これを好機ととらえ、始まったのが「さがの林業再生プロジェクト」だ。伐採や搬出を効率化する機械の導入支援、森林の集約化支援、人材を育てるアカデミー開講の3つの施策を展開。県林業課は、県が開発したサガンスギを活用しながら「伐採して木材を使い、植林し、森を育て、再び伐採するサイクルを持続させたい」と好循環を目指す。

さが林業アカデミーの林業講習会で、チェーンソーを使って研修する1期生=2月、嬉野市内の県有林

 第1弾は、現場の声を受け、国の補助対象とならないショベルカーや木材搬出用のクレーン付きトラックといった機械の導入を支援し、作業負担を軽減。第2弾は、小規模で分散しているため作業がコスト高になる森林の集約を進めようと、森林組合など事業体の取り組みに助成している。

 昨年度からは第3弾として「さが林業アカデミー」を開講。県内の森林と林業を知る就業セミナー、林業の現場や機械操作の体験会、就業にあたって必要となる資格の取得と演習を行う講習会と、林業への就業を目指す人が段階を踏んで無理なく就業できる環境を整えた。

 1年目は、移住者を含む修了生全6人が就業。同課は「講習会ではチェーンソー操作など業務で必要となる資格も事前に取得するので、就業先にも喜ばれている」と成果を話す。

優位な立地、大型進出相次ぐ

 半導体製造に必要不可欠なシリコンウェーハ製造の大手(株)SUMCOが、吉野ヶ里町に県内4カ所目となる新工場候補地の取得を発表するなど、近年県内で世界的な企業の大規模投資が相次いでいる。交通アクセスの良さや自然災害の少なさなどを生かした県の誘致活動が実を結んでいる。

九州道(右)が近い立地を生かして開発が進められる「佐賀県・鳥栖市サザン鳥栖連携プロジェクト」の産業団地の予定地(中央付近)

 その理由の一つに、BCP(事業継続計画)での優位性がある。佐賀県は歴史的に見ても大きな地震の記録がほぼなく、南海トラフ巨大地震による津波高も、九州で唯一想定がされていない。加えて、高速道路や鉄道が交差する交通の要衝となっていることも強みとなっている。九州各地とつながり、アジア諸国と交流するうえでも、佐賀県は非常に良い場所に位置していると言える。

 進出した企業からは、脈々と続く佐賀県のものづくり・人づくりの伝統や、実直で勤勉な県民性を高く評価する声も聞かれる。また、「誘致企業永続支援員(パーマネントスタッフ)」制度として、進出企業の希望に応じて同じ担当者がその企業を永続的に担当する独自の取り組みも行っており、企業との信頼関係の強化につながっている。

 こうした強みや優位性を生かした誘致活動の展開によって、大型の進出が相次いでおり、県東部を中心にさらなる産業用地の確保が求められている。

 県では、鳥栖市と連携して新たなスマートインターチェンジの誘致や周辺アクセス道路の整備など「佐賀県・鳥栖市サザン鳥栖連携プロジェクト」に取り組んできた。プロジェクトの産業団地開発については、県内初の官民連携型で行うこととしており、地域経済のさらなる発展につなげていく。

 今後も、若者や子育て世代をはじめとする多くの方が、地元で働き活躍できる環境の整備を図っていく。

トピックス

「サガンスギ」の強さ解明

レイクサイド北山のフォレストラボで体験できる強度比較の木材キット。従来品種(手前)は重さでたわみ、サガンスギ(奥)の強さが分かる

 県が開発した次世代スギ「サガンスギ」は、従来品種と比べて成長が早いうえ、強度が高く花粉が少ないのが特徴。県林業試験場での物理的な試験で従来品種の約1.5倍の強度があることが分かっていたが、県産業振興機構九州シンクロトロン光研究センターとの共同研究で科学的にも強度が高いことが裏付けられた。

 木材は、細胞壁を作り上げているセルロース繊維「ミクロフィブリル」の傾斜角が小さいほど強度が高いとされているが、サガンスギは従来品種より小さいことが判明した。県林業試験場は、「サガンスギは、従来品種に比べて強度が高いため、住宅より大きい建築物の構造材としても用途の広がりを期待したい」と話す。

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