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Sunday, October 29, 2023

米第3四半期GDP成長率、個人消費に数字ほどの強さなく、先行きは ... - ジェトロ(日本貿易振興機構)

米商務省が10月26日に発表した2023年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率は前期比年率4.9%と、高い伸びを示した(2023年10月27日記事参照)。

しかし、今回の伸びを牽引した個人消費(前期比年率4.0%増、寄与度2.7ポイント)は、示された数字ほどの強さはなく、この水準が持続することはないと考えられる。その理由の1つは、季節性需要の高い項目が財の伸びを支えており、その効果が一時的なものと推測されるからだ。もう1つの重要な理由は、足元で所得者層ごとに消費がばらついていることだ。低所得者層では、新型コロナウイルス(以下新型コロナ)禍で積み上がった余剰貯蓄は枯渇したとされ(2023年9月8日記事参照)、それを裏付けるかのように、クレジットカードローンの90日以上延滞率も新型コロナ禍前の水準に戻っている。中所得者層についても、教育ローンの返済再開(2023年10月6日記事参照)や、各種金利の上昇、実質可処分所得の伸び悩み(添付資料図1参照)もあり、消費環境が良好とは言い難い。これらを背景として、中・低所得者層の消費に比較的影響を受けやすい小売売上高は、年間成長率の伸びが前年より鈍化するとの見通しも示されている(2023年10月12日記事参照)。他方で、金融資産の価格上昇や、個人所得での利息・配当の伸びなどを背景として、高所得者層の消費環境は比較的良好といえる。自動車ローン金利の上昇にもかかわらず、高価格帯の新車需要が強いことや、ラグジュアリー関連の旅行需要が堅調なこと(2023年10月20日記事参照)などを踏まえると、この層のペントアップ需要(注)が現在の消費の中心となっている可能性が高いと考えられる。このため、高所得者層の消費は堅調に推移する一方、中・低所得者層の消費は第4四半期(10~12月)以降、大きく減速していくと推測できる。

個人消費以外の項目については、住宅投資で新築住宅市場の需要が強く、建設着工と許可件数は回復傾向にあるが、今後の伸びを占う上では、住宅ローン金利の動向のほか、建設部門の労働力を確保できるかが重要になってくるだろう。

設備投資では、今期の成長率はわずかにマイナスとなったものの、次の理由から、基調と見通しは必ずしも悪くないといえる。まず、設備投資の先行指標となる航空機を除く非国防資本財(コア資本財)受注はプラス成長となっている(添付資料図2参照)。また、設備投資の内訳を見ると、知的財産分野や、製造業を中心とした構築物もプラス成長を維持している。さらに、バイデン政権によるインフラ投資雇用法、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)、インフレ削減法(IRA)などに基づく支援の審査・公表が本格化し始めており、こうした支援が順調に進めば、今回マイナス成長となった機器などの需要も回復する可能性が高いとみられる。この意味で、11月17日が期限となっているつなぎ予算に関して、政府閉鎖に至ることなく円滑に審議が進むか、その後の本予算で大幅な削減を要求している共和党保守派から投資関連予算を守り切れるかといった政治的な動向が従来よりも大きな意味を持つこととなろう。

(注)景気後退期に購買行動を控えていた消費者の需要が景気回復期に回復すること。

(加藤翔一)

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