Research Press Release
Nature Communications
2023年9月13日
豚肉、牛肉、鶏肉と牛乳の消費量の50%を植物由来食品に置き換えると、2050年には、地球全体の農業と土地利用による温室効果ガス排出量が2020年比で31%減少する可能性のあることを示したモデル化研究について報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。今回の研究ではさらに、地球上の森林と自然地の減少が実質でほぼ完全に止まる可能性のあることも示唆された。
動物性食品は、世界の食物エネルギー供給量の20%に満たないにもかかわらず、世界の食料システムの中で、土地利用、水利用、生物多様性、および温室効果ガス排出に及ぼす悪影響が最も大きい。動物性食品の消費を植物由来食品に置き換えることは、我々の食事が環境に及ぼす影響を軽減する上で役立つと考えられる。
今回、Marta Kozickaらは、土地利用を分析するための世界経済モデルを用いて、将来シナリオにおいて、動物性食品の一部を植物由来食品で代替した食事が環境に及ぼす影響を予測した。Kozickaらは、主要な動物性食品(豚肉、牛肉、鶏肉、牛乳)に注目し、同程度の栄養価を持つ代替食品による置き換えをどのように進められるかという観点で研究を行った。その結果、代替牛肉が最も大きな利点をもたらすことが判明した。生物多様性の減少が最も大きく抑えられたのは、サハラ以南のアフリカ、中国、東南アジアだった。また、このモデルによる予測では、サハラ以南のアフリカ、ブラジル、その他の南米諸国で炭素隔離量の改善が最も大きくなることが分かった。動物性食品の50%を代替食品と置き換えることができれば、農地が森林に戻って気候変動緩和の恩恵が倍増し、以前に推定された陸地領域での気候変動緩和の可能性の92%が実現され得ると予測された。さらに、2050年までの生態系の完全性低下を半分以下に抑えられると予測された。
Kozickaらは、我々が普段の食事で消費している動物性食品の50%を新しい代替食品に置き換えることは、気候変動と自然生態系に対して全般的にプラスの影響を与える可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41467-023-40899-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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