Pages

Saturday, September 9, 2023

<書評>『仙台あらえみし日和 杜(もり)の都で本と暮らす』土方 ... - 東京新聞

◆雑記風に綴る東北の粋
[評]長岡義幸(出版ジャーナリスト)

 出版を本業とし、副業的に古書店をはじめた仙台の出版社の代表が地元紙に毎週、本と本を取り巻く出来事を綴(つづ)ったエッセイ200編の集成。身辺雑記風ではあるが、話題は縦横に広がり、独立系出版社の真価の一端に触れることができた。

 出版物そのものを題材にした項では、自社本、他社本を問わず、本の背景や面白みを語り、文末では「ぜひ(読んでほしい)」という言葉を何度も繰り返す。まるで本の伝道師かのような語り口だ。

 全編を読み通すと、東日本大震災をめぐる諸々を考え続けてきた著者の軌跡を追体験することにもなった。仙台短編文学賞を立ち上げたり、『震災学』(東北学院大学)の編集や発売元を引き受けたり、災害にかかわる著者の活動に「持続する意思」の表れかのような感慨を覚えた。

 同伴するのは、エッセイを載せた地元新聞社や、推薦文を寄せた書店員で芥川賞作家の佐藤厚志氏、単行本に編んだ発行元のプレスアートなど地元の人々らである。本書によって、仙台出版界の粋(すい)を堪能してみてはいかがだろうか。

(プレスアート・2750円)

編集者・作家。2019年、仙台市に「古本あらえみし」開業。

◆もう一冊

『増補新版 東北の古本屋』折付桂子著(文学通信)

関連キーワード



おすすめ情報

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( <書評>『仙台あらえみし日和 杜(もり)の都で本と暮らす』土方 ... - 東京新聞 )
https://ift.tt/R3QVFfx

No comments:

Post a Comment