[東京 2日 ロイター] - 日銀の内田真一副総裁は2日、先月の金融政策決定会合で決めたイールドカーブ・コントロール(YCC)の運用柔軟化について、物価の上振れなど経済・物価情勢が変化した場合に「それでも混乱なく緩和を続けていくための備えとしての工夫だ」と説明した。出口を意識したものではないと強調し、2%物価目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況には至っていないため、今は粘り強く金融緩和を続けていくことが重要だと語った。
千葉県金融経済懇談会でのあいさつで述べた。内田副総裁が金融経済懇談会に出席するのは、3月の副総裁就任後初めて。
日銀は7月の決定会合で予想物価上昇率の判断を引き上げ、「再び上昇の動きがみられている」とした。内田副総裁は、今後も上振れ方向の動きが続く場合、10年金利を0.5%で厳格に抑えようとすると債券市場で歪みが生じたり「為替市場を含めて、他の市場の変動に影響を与えたりといった問題が生じる恐れがある」と指摘した。
10年金利0.5%で実施してきた連続指し値オペがもたらす副作用は「緩和効果とのバランスで見ても大きすぎる」とし、今後生じ得る副作用を和らげる措置を取ったと述べた。
見直しのタイミングが7月会合になったことについては「ぎりぎりまで粘るほど緩和効果を引き出せる一方で、問題が生じてから事態を収束させる方が難しい」と説明。その判断は状況次第だとしつつ、昨年12月の変動幅拡大の経験が日銀、債券市場双方にある中で「問題が生じれば日本銀行はいずれ対応するだろう」と予見されていることも踏まえたと語った。
また、YCCという枠組みの性質上、「緩和を継続する上で、どうしても調整しながらやっていくしかない」とも述べた。
<マイナス金利解除には「大きな距離」>
内田副総裁は金融政策運営の基本は、上下双方向のリスクとそれが起きた場合のコストを比較衡量しながら政策運営に当たることだと説明。現状では、金融引き締めが遅れて2%を超えるインフレ率が持続するリスクよりも、拙速な緩和修正によって2%目標の実現機会を逃してしまうリスクの方が大きいとした。
その上で、YCCの枠組みは、決定会合後の声明文で「物価目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで」継続すると約束していると指摘。2%目標の実現を見通せる状況には至っていないため、YCCの枠組みを継続していくと表明した。
マイナス金利については、マイナス金利を解除してゼロ%にすることは短期金利の0.1%分の引き上げを意味すると述べた。現在の経済・物価情勢を踏まえれば、引き締めが遅れて2%を超えるインフレが続くリスクの方をより心配する状況からは「まだ大きな距離がある」とした。
内田副総裁は、賃金・物価を巡る企業の姿勢に「変化の兆し」があると強調した。こうした変化の兆しは物価見通しの上振れ要因だが、多少上振れたとしても、米欧のように賃金の大幅な上昇がさらなる物価上昇を招き、「2%を超える状態が続いてしまう可能性は大きくない」とし、「来年もしっかり賃上げが行われるように、粘り強く金融緩和を続け、経済を支えていくことが必要な局面だ」と語った。
(和田崇彦 編集:田中志保)
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