2023年8月22日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
NEDOは、カーボンニュートラル実現に向けた重要技術を俯瞰(ふかん)・評価した「持続可能な社会の実現に向けた技術開発総合指針2023(NEDO総合指針)」を策定し、本日公表しました。
深刻化する気候変動問題を解決し、持続可能な社会を実現するためには、三つの社会システム(サーキュラーエコノミー、バイオエコノミー、持続可能なエネルギー)の一体的な推進と、それを支える基盤としてデジタルトランスフォーメーション(DX)の存在は欠かせません。
そこでNEDO総合指針では、最新の社会・技術動向に基づき、重要性の増した「三つの社会システムとそれを支えるDX」に関連する技術を俯瞰・評価しました。さらに、代表的な革新技術の二酸化炭素(CO2)削減ポテンシャルとコストの具体的な試算根拠・方法・結果を整理しながら定量的に評価・提示しています。
NEDOは、これを契機として、産業界・アカデミアなどでカーボンニュートラルの達成に向けて取り組むべきである技術開発・実証に関わる議論が広く喚起されることを期待します。また、NEDO総合指針を活動基軸としてプロジェクトの企画・立案を行うことにより、世界の気候変動問題の解決、持続可能な社会の実現を目指し、さらなる課題の解決に貢献します。
1.概要
世界的に気候変動問題が深刻化する中、国内外で2050年カーボンニュートラル実現を基調とする温室効果ガス(GHG)削減目標が設定される一方で、ロシアによるウクライナ侵略によって原料供給リスクが顕在化するなど、脱炭素化を取り巻く環境が大きく変化しています。
日本は2020年10月に、2050年までにGHGの排出を全体としてゼロにすることを目指す「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。本年2月には、エネルギーの安定供給を大前提として、GHGの排出削減と経済成長・産業競争力強化を共に実現することを目指す「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されました。この基本方針では、今後10年でグリーントランスフォーメーション(GX)※1の実現に必要となる150兆円を超える官民の関連投資を達成するために、GX経済移行債を活用した国による20兆円規模の大胆な先行投資支援などの「成長志向型カーボンプライシング構想※2」を実現・実行するとされており、気候変動問題の根本的な解決に向けて、カーボンニュートラルを実現する技術開発や社会実装をより一層推進することが求められています。
このような背景の下、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、深刻化する気候変動問題を解決し、持続可能な社会を実現するためには、三つの社会システム、具体的には、サーキュラーエコノミー、バイオエコノミー、持続可能なエネルギーの一体的な推進と、それを支えるDX※3が欠かせないと考えています(下図参照)。そこで今般、この三つの社会システムとDXを軸として、技術開発のあり方や目指すべきである方向性などの指針として「持続可能な社会の実現に向けた技術開発総合指針2023(NEDO総合指針)」を策定し、本日公表しました。
NEDO総合指針では、最新の社会・技術動向に基づき、重要性の増した「三つの社会システムとそれを支えるDX」に関連する技術を俯瞰し、評価するとともに、代表的な革新技術のCO2削減ポテンシャルと削減コストの具体的な試算根拠・方法・結果を整理しながら定量的に評価・提示しています。
NEDOは、今回策定したNEDO総合指針を契機として、産業界・アカデミアなどでのカーボンニュートラルの達成に向けて取り組むべきである技術開発・実証に関わる議論が広く喚起されることを期待します。また、NEDO総合指針を活動基軸として、技術戦略を策定し、プロジェクトの企画・立案を行うことにより、世界の気候変動問題の解決、持続可能な社会の実現を目指し、さらなる課題の解決に貢献します。
2.「NEDO総合指針」のキーメッセージ
- 経済合理性をもってカーボンニュートラルを達成するためには、従来技術の延長だけでは不十分であり、非連続な技術革新とその社会実装によるイノベーションが欠かせません。NEDO総合指針では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書※4で例示された21世紀中頃までにカーボンニュートラルを達成するシナリオを分析し、「使用するエネルギーの脱炭素化」、「最終エネルギー消費の削減」、「ネガティブエミッション技術※5の導入」、「非エネルギー起源のGHG削減」への取り組みが、いずれのシナリオにおいても重要であることを示しました。これらの「重要な取り組み」を持続的に発展させるためには、三つの社会システム(サーキュラーエコノミー、バイオエコノミー、持続可能なエネルギー)の一体的な推進と、それを支えるDXは欠かせないと考えます。
- 「三つの社会システムとそれを支えるDX」に関連する技術を俯瞰し、カーボンニュートラルへの貢献が期待される技術について、CO2削減ポテンシャルとコストを技術ごとに試算根拠・方法・結果に分けて整理しながら定量的に評価・提示しました。NEDO総合指針では、次世代太陽光発電(車載用PV※6)、水素発電、水素還元製鉄など、さまざまな技術を取り上げています。試算に用いたデータはすべて出典を明記し、試算方法も公表しています。今後、これらのレファレンス情報や試算方法が革新技術によるCO2削減の議論を進める際にベースとして活用されることを期待します。
- NEDO総合指針は、NEDOの「活動基軸」として、CO2排出量削減に効果のある技術を総合的かつ客観的に評価したものです。今後の技術開発・実証に取り組むべきである革新技術の評価に活用します。
【注釈】
- ※1 グリーントランスフォーメーション(GX)
- これまでの化石エネルギー(石炭や石油など)中心の産業構造・社会構造から、CO2を排出しないクリーンエネルギー中心に転換することを意味します。
- ※2 成長志向型カーボンプライシング構想
- カーボンプライシングとは、炭素排出に値付けをすることにより、GX関連製品・事業の付加価値を向上させるものです。成長志向型カーボンプライシング構想とは、GXのための投資を官民協調で実現するための構想で、その実現のためにGX経済移行債などを活用した大胆な先行投資支援(規制・支援一体型投資促進策など)、カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ、新たな金融手法の活用、の三つの措置を講じるものです。
- ※3 デジタルトランスフォーメーション(DX)
- 人工知能(AI)やあらゆるモノがインターネットでつながるIoTなどのデジタル技術の活用を通じて、デジタル化が進む高度な将来市場においても新たな付加価値を生み出せるよう従来のビジネスや組織を変革することです。
- ※4 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書
- IPCC評価報告書は、政府の推薦などで選ばれた専門家が、5~6年ごとにその間の気候変動に関する科学研究から得られた最新の知見を評価し、まとめて公表するものです。評価報告書には、科学的な分析のほか、社会経済への影響、気候変動を抑える対策なども盛り込まれます。第6次評価報告書は、2021年から2023年にかけて公表されました。
(参照:全国地球温暖化防止活動推進センター ホームページ) - ※5 ネガティブエミッション技術
- 大気中のCO2を回収・吸収し、貯留・固定化することで大気中のCO2除去に資する技術のことです。
- ※6 PV
- Photovoltaicsの略で、太陽光発電のことです。
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 技術戦略研究センター 担当:仁木、岡田(満) TEL:044-520-5150
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:瀧川、坂本(信)、黒川、根本
TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp
E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。
- 新聞、TVなどで弊機構の名称をご紹介いただく際は、“NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)”または“NEDO”のご使用をお願いいたします。
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