バイク用エンジンオイル性能を規定するJASO規格とヤマハ純正オイル
金属パーツ同士が摺動、回転、往復するエンジン内部で、パーツ同士の潤滑に欠かせないのがエンジンオイルである。ひと言で潤滑と言っても、その内訳は油膜保持性、せん断安定性、エンジン清浄性、低蒸発性、触媒保護性など必要な性能は多岐にわたる。
バイク用エンジンオイルにはオイル専業メーカーが開発販売するものとバイクメーカーが純正指定して販売するものがあり、どちらも日本自動車技術会が定めたJASO規格に定められた試験や性能分類にパスすることで性能が担保されている。
ヤマハはバイクメーカーの中でいち早く純正オイルの重要性に着目し、1960年代半ばに2サイクル用オートルーブオイルを、1972年に4サイクル用オイルの販売を開始。半世紀以上にわたって車両開発とエンジンオイル開発を一体で行ってきた。
JASO規格を上回る独自のヤマハ基準で開発されているヤマルーブオイル
ピストンやカムシャフトやミッションなどのパーツをいかに高性能化しても、エンジンはオイルがなければ機能しない。またオイル自体の性能によってエンジン性能が左右される。さらにエンジン開発時に使用するオイルと交換用のオイルの粘度や性能が大きく異なれば、メーカーが想定する本来のパフォーマンスが100%発揮できないこともある。
4サイクルエンジンオイルは走行距離に応じて定期的に交換が必要な消耗品だが、クランクシャフトやバルブなどと同じでエンジンを構成する重要な要素であり、ヤマハではエンジンパーツのひとつ、液体パーツと称して先記の通り半世紀にわたり車両開発と並行してオイルの開発を行っている。
空冷主体だった1970年代、水冷化と高回転高出力化が進んだ1980年代、インジェクションと触媒が組み合わされた近年と、エンジン開発のトレンドに合わせてエンジンオイルも進化を遂げ、現在ヤマハ純正のヤマルーブオイルには6種類の4サイクル用エンジンオイルが存在する。
そのすべてがJASO規格よりも厳しく設定された独自のヤマハ基準をクリアしており、エンジン開発時の基準油として使用され、新車製造時に充填されて出荷されている。そしてアフターマーケットで販売されているヤマルーブも、新車充填オイルと同じ品質と性能を保証されている。
ヤマルーブオイルのフラッグシップRS4GP 8年ぶりのモデルチェンジのカギを握るのは最新粘度指数向上剤
ベースオイルとする基油が鉱物油か部分合成油か100%化学合成油か、バイクのカテゴリーがギヤミッションかスクーターかによって6種類に分類されるヤマルーブオイルの中で、最高峰に位置するのがRS4GPである。
2015年から発売開始されたRS4GPはMotoGPテクノロジーをフィードバックした「モアパワー」をコンセプトに、サーキット走行のような過酷な高回転、高負荷走行時の高性能化と安定性、耐久性を確保。YZF-R1やYZF-R6といったスーパースポーツモデルに安心して使えるメーカー純正オイルとして高く評価されてきた。
そんなRS4GPを8年ぶりにリニューアルするにあたりヤマルーブオイルを企画するワイズギアは、スタンダードオイルをピークパワーで上回る「モアパワー」コンセプトを踏襲しながら、フラッグシップオイルとしてのキャラクターを先鋭化させるため「より体感できる性能向上」という新たなテーマを設定。
ここで掲げた体感できる性能とは、主にシフトフィーリング向上、エンジンレスポンス向上、クラッチフィーリング向上の3点で、さらに向上したフィーリングが長期間持続することも重要な目標とされた。
しかしオイルにとって、レスポンスやシフトフィーリングに寄与する低粘度化と高回転時の潤滑性を確保する強い油膜は相反する条件であり両立は簡単ではない。常用温度で粘度が低いオイルは高温でも柔らかく、高温で粘度が高いオイルは常用温度域でも硬いというのがオイルの一般常識だからである。そして常用温度の粘度を下げながら高温でしっかり粘度を確保するには、オイル性能を決める項目の中でも粘度指数を向上させることが必須となる。
粘度指数とは常用温度域の粘度と高温時の粘度の差(グラフ上の傾き)を示すもので、温度変化による粘度変化が小さいほど粘度指数は高くなる。裏を返せば、オイルの粘度指数が高ければ高温時の粘度を維持したまま常用温度域での低粘度化が可能となり、攪拌損失の低減によるエンジンレスポンス向上、クラッチやシフトフィーリング向上が期待できる。
殆どのエンジンオイルは製品化に際して基油と呼ばれるベースオイルに各種の添加剤を混合しており、100%化学合成油をベースオイルとするRS4GPにも各種の性能を確保するための添加剤が含まれている。
粘度指数を向上させる粘度指数向上剤は鉱物油でも100%化学合成油でも不可欠な添加剤で、今回のRS4GPではオイル開発を担当したENEOSが採用した最新の粘度指数向上剤によって常用温度域の低粘度化と高温時の油膜保持性向上を両立することに成功。
粘度指数には単位がなく純粋な数字として示されるものだが、新しいRS4GPは粘度指数200を大きく超える数値を記録。指数がどれだけあれば充分かは一概にはいえないものの、200を超える粘度指数はトップクラスであるといって間違いはない。
ただしこの粘度指数向上剤の耐久性が低ければ、高温で油膜保持性を確保しつつ常用温度域で柔らかいという理想は画に描いた餅でしかない。粘度指数向上により高温時の粘度を上昇させている場合、短期的には好フィーリングであっても、分子量の大きなポリマーを使用した添加剤はミッションの歯車など高圧のせん断力が加わる部分で破断されると性能が低下してしまう。良好なフィーリングが長持ちするためには、粘度指数向上剤自体の耐久性が高いことも重要なのだ。
この点で、ヤマルーブは粘度持続性能の基準でもJASO規格より厳しい社内基準を設定しており、新型RS4GPもオイル交換時期まで粘度の変化を抑え安定した性能を持続することを可能にしている。
「純正」の安心感と「体感性能向上」を両立 次のオイル交換で使ってみたいRS4GP
RS4GPのSAE規格上の粘度グレードは10W-40だが、常用温度域の粘度は他社製の一部の5W-30より柔らかく設定されている。5Wより柔らかい10Wという点に矛盾を覚えるかも知れないが、表示上の粘度と実際の粘度には一定の幅があり、10Wに近い5Wや5Wに近い10Wが存在するため、こうした逆転現象が起こる場合もある。そして5Wに匹敵する常用温度域粘度の低さによって、エンジンレスポンスやクラッチの切れの良さが際立つというわけだ。
従来のRS4GPが掲げる「モアパワー」に加えて、新たに「体感できる性能向上」という難題をクリアしてリニューアルされた新RS4GP。
ヤマハ車であればYZF-R1やYZF-R6といったスーパースポーツモデルに適しているのはもちろんだが、高回転高負荷となるサーキット走行や高速道路を使ったツーリングを楽しむライダーにとっても、排気量や機種を問わずRS4GPが持つ特性がマッチするはず。
街乗りであっても、油温が充分に上昇していない温度帯の攪拌抵抗の小ささは、始動直後からクラッチの切れの良さやシフトフィーリング向上をもたらし、好印象につながるはず。
RS4GPはバイクの開発と製造を行うヤマハと、用品メーカーのワイズギアががっちりタッグを組んで開発したヤマルーブの最高峰モデルである。
信頼性の塊のような「純正」という品質の上に「モアパワー&体感性能向上」というチューニング要素が上積みされたオイルに興味を持たないライダーはいないはず。走行距離に応じて定期交換するだけでなく、特徴や特性にこだわったオイル選びをしたいと考えたとき、RS4GPはきっとその期待に応えてくれるはずだ。
からの記事と詳細 ( MotoGPテクノロジーをフィードバック 最新添加剤で「体感できる性能向上」を実現したヤマルーブオイルのフラッグシップ RS4GP - Webike Plus )
https://ift.tt/REKZWh4
No comments:
Post a Comment