「キットカット」は唯一無二のブランド力を持つ
我々がよく知る「キットカット」は、1935年にイギリスのヨークにある菓子会社「ロントリー社」(後のロントリー・マッキントッシュ社)によって生み出され、1973年に同社が不二家と提携したことにより、日本に上陸。
その後、1988年にロントリー・マッキントッシュ社が「ネスレ」に吸収されたことにより、翌1989年にはネスレがキットカットの販売を主導することに。現在は兵庫県神戸市に本社を置く「ネスレ日本」が販売を担っている。
日本のチョコレート菓子市場において確固たる地位を築いている「キットカット」だが、やはり1日あたりに製造されるボリュームも凄まじいものだそうだ。
「全世界で1日あたり約3500万枚もの“キットカット”が販売されています。日本国内での売上は、チョコレートブランドの中でもトップクラスで、世界屈指の“キットカット大国”です。日本では、全国各地の小売店様に、お客様がいつでもどこでも購入できるように店頭に取り揃えていただくようにご協力いただいています。店頭で、多くのお客様とブランドコミュニケーションを図るチャンスが得られているので、商品としての価値をより多くの方々に認知していただけていると考えます」(村岡氏、以下同)
言われてみれば、たいていのスーパーやコンビニのお菓子コーナーに「キットカット」は置かれている。気軽に手にできるというイメージは、たしかに「キットカット」のイメージづくりに一役買っているだろう。
また素材や製法にこだわった「プレミアム キットカット」を届ける「キットカット ショコラトリー」など、幅広い業態を展開していることも同商品のブランド力を支える要因だという。
だが、それ以上に「キットカット」という商品の特殊性に人気の秘密があると村岡氏は話す。
「実は日本市場において、“キットカット”と類似した商品ってあまりないんです。チョコの商品、ウエハースの商品、というように個別のジャンルに分けると、それぞれ思いつく商品はあるでしょうが、“チョコとウエハース”の商品として考えた場合、“キットカット”は日本市場において独自のポジションをキープしています。
“キットカット”のユニークなポイントは、ずばりチョコとウエハースの絶妙なバランス。全く同じフォルム、コンセプト、味を提供するお菓子は、市場内で見ても例が少なく、結果として“キットカット”が今日まで愛されている理由になっているのだと思います」
美味しさだけではなく、感情面でポジティブに
「キットカット」は、シンプルな美味しさ、手にしやすさというブランドイメージ以外にも、購買意欲を向上させるブランド戦略に取り組んできた。代表的なのが2003年から開始した受験生応援キャンペーンだ。
「実は2001年当時、1958年から世界共通で使用しているスローガン『Have a break, have a KitKat.』の定義を日本国内で見直す動きがありました。そんなとき、九州のあるスーパーで、1月になると“キットカット”がたくさん売れているという話が入りました。もともとは九州の『きっと勝っとお』という方言がきっかけでして、九州地方では願掛けとして“キットカット”を購入してくれた方々が多かったようです。
ちょうどその頃、ネスレ内では『よいブレイクとは、ストレスからの解放なのではないか』と話をしていた最中だったので、“キットカット”と受験の組み合わせに可能性があるのではないかという考えに至りました。そして、受験生とその家族をサポートしたいという想いで、受験生応援キャンペーンを開始しました。“キットカット”を食べたり、持っていたりしているだけでポジティブになれる、そんな願いを込めて、受験シーズンの応援をさせていただいています。
このように“キットカット”では、商品を食べて得られる機能的な価値以外にも、感情的に心が動かされる“エモーショナルベネフィット”という価値を重視しているんです」
毎年受験シーズンになると、「キット、サクラサクよ。」というメッセージとともに、受験生に対するエールを送る広告を見かける。一息ついたときのお供として、もうひと踏ん張りしたときのブレイクとして「キットカット」を手にしてほしいとのことだ。
受験生とその家族の心を掴み、「キットカット」はブランドイメージを向上させるなど大きな成功をおさめることとなった。
また「キットカット」は、これまで400種類を超えるフレーバーを販売し、わさび味、抹茶味といった、いわゆるご当地商品も販売中だ。全世界を見ても、これほど多くのフレーバーが販売されているのは、日本だけだという。
「日本には食の多様性があり、ご当地の名産品とコラボして商品化しております。観光地に行ってお土産を選ぶときに、お土産を渡したい相手を考えながら、一生懸命選ぶ瞬間は大事なひとときだと考えています。私たちとしても“キットカット”を通じてお土産選びをサポートしたい気持ちでご当地商品の開発を進めさせていただいているんです」
一息つきたいときのお供として食べてほしい
「キットカット」が目指すものは、目先の利益にとらわれないものだと村岡氏は語る。
「“キットカット”は、お客様に長く愛し続けてもらうためにも、長期的で持続可能な成長を目指しており、持続的にお客様とブランドを通したコミュニケーションを行っています。いわば常にいいものを更新し、提供していくという姿勢が“キットカット”にとって一番の強みになっていると言えますね」
それは、自分たちのみならず、チョコレート市場のメーカーも同じだという。
「チョコレートを販売する会社は国内にも多いですが、ネスレ日本はチョコレート市場全体を盛り上げていきたいと思う一心で活動を続けています。“キットカット”は、幸運にも業界トップクラスのシェアを誇っていますが、自分たちだけよければという考えで活動しているとチョコレート市場は一気に下火になってしまうでしょう。むしろチョコレートを手にする人が増えれば、さまざまなチョコレート商品が市場で販売されますし、“キットカット”を手にする人も比例して増えていくと信じています。ネスレとしてはお客様にチョコレートを楽しんでいただける環境が理想だと考えています」
日本上陸50周年を迎え、さらなる発展を見せてくれるであろう「キットカット」。日本に根付く独特な文化とともに、「キットカット」はどこへ向かうのか。
「コロナ禍が緩和されてきましたが、まだまだ人々は何かに躊躇してしまうことがあるかと思います。前向きな一歩を踏み出していただく後押しのようなサポートを、“キットカット”を通して行っていきたいですね。
“キットカット”のスローガンに『Have a break, have a KitKat.』という言葉があります。欧米には会議の途中にブレイクタイムと称してお菓子を食べる習慣がありますが、日本ではこうした習慣はあまり根付いていません。でもだからこそ、一息つきたいとき、リフレッシュしたいときに“キットカット”を食べて、前向きになってもらえれば幸いです」
取材・文/文月/A4studio
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