避妊に用いる経口避妊薬(OC)や月経困難症の治療薬である低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)は、産婦人科診療に欠かせない薬剤です。
ただし、思春期から性成熟期の女性の中には、OC・LEPに対する様々な思い込みのため、使用が望ましい方も服用を躊躇してしまうケースがあります。
今回は、先日開催された「女性医療フォーラム」での講演内容や「OC・LEPガイドライン2020年度版」などを参考に、低用量ピルに関する「都市伝説」について説明します。
低用量ピルは太るのでは?
よくある誤解の一つに「ピルは太る」というものがあります。
しかし、世界的な多くの研究では、「OC・LEPで太ることはない」ことが認められています。少なくとも、OC・LEPには“脂肪太り”する成分は入っていません。
確かに、食欲が増して食べ過ぎてしまうケースや、薬剤の種類によっては多少むくんでしまい、一時的に体重が増加するケースはあります。
ただし、「運動・食事」といった生活習慣の改善で十分に対応が可能です。
低用量ピルの服用の有無にかかわらず、健康維持・増進のため、適切な生活習慣を心掛けましょう。
将来妊娠しづらくならない?
「OC・LEPガイドライン」によると、低用量ピルの服用には将来の妊娠に与える影響はありません。服用を中止すると、ほとんどの方が3か月以内に排卵が戻り、妊娠が可能になります。
ただし、反対に子宮内膜症の方が低用量ピルを服用したからといって、必ずしも妊娠しやすくなるとのデータもありません。
それでも、月経困難症の方の中には、初期の子宮内膜症が潜んでいる可能性があり、LEPを服用することで子宮内膜症の進行を防ぎ、将来の妊娠について有利に働くことは期待できます。
少なくとも、「低用量ピルの服用で、将来妊娠しづらくなることはない」とご理解下さい。
生理を止めちゃってもいいの?
月経困難症の治療として、LEPを77日間、あるいは120日間連続投与することで、月経を止める方法があります。
月経とは、「せっかく妊娠するために準備したのに、妊娠しなかったために無駄になった子宮内膜を剥がして排出する作業」であり、決して“デトックス”ではありません。
さらに、経血は卵管を通って腹腔内に逆流することで、腹膜や卵巣に子宮内膜組織が根付く可能性があります。これが子宮内膜症の原因ともいわれているため、できるだけ経血が逆流しないように月経の回数自体を減らした方がいい、と考えられています。
当院では、原則として連続投与をお勧めしており、月に一回月経を起こさせる周期投与については、ご本人のご希望がある場合や、連続投与で不正出血が長期間持続する場合などに行っています。
女性のQOL向上のため、OC・LEPは非常に有用です。
ただし、血栓症などの重篤な副作用には注意が必要です。
OC・LEPの服用を始める時や継続する時は、メリット・デメリットをご理解頂いた上で、主治医とよく相談して治療方針を決定するようにしましょう。
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