九十五歳の今も新聞歌壇で選者を務める歌人の馬場あき子を追ったドキュメンタリー映画「幾春(いくはる)かけて老いゆかん 歌人馬場あき子の日々」(田代裕監督)。自作の新作能上演にも精力的だった九十三歳からの一年を収めているが、「国は文化を大切にせず軍備に一生懸命。自分の国をいったい何だと思っているのか」と取材時も衰えない情熱で文化行政に苦言を呈した。 (上田融)
投稿作品の優劣を瞬時に見極める選歌は、カメラを通しても迫力満点。一方、弟子たちとの食事は終始にこやかで、能楽堂では演者と笑顔で語り、舞台上で座談も。背筋が伸び、よどみない話しぶりは年齢を感じさせない。「歌や能をしつこく続けてきた。そういう持続する力を見てほしい」と自らPRする。
馬場は言う。「私はね、生きることばかり考えて生きている。文学者の間では『死を考えない人は浅い』という考えがあるけど、九十歳を超えると『死とは何か』と『生きるとは何か』はトントン(の深さ)よ」
生きることを考え続けるこつは「絶えずやりたいことを考える。目標があると死ねないわよ」。理想の死は「(虫が)羽を震わせながらコロッと落っこちて上を向いて。あれがいい」と話し、「虫の顔はいいですよ。バッタなんてすごいまじめな顔」とほほ笑む。
日々読む新聞の子どもが夢を語るコーナーに勇気づけられるという。「この時代に夢を語るんですよ。あの子たちのためにいい世の中にしないと。元気をもらい、歌を作ってます」
二十七日から東京・新宿のK‘s cinemaで上映。
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