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Tuesday, March 14, 2023

【解説】甘いチョコレートの裏に過酷な労働…チョコレートメーカーが対応急ぐワケ - ニッポンドットコム

疲れた時に甘いチョコレートを食べて一休みしたり、おいしいチョコレートをご褒美に買ったり贈ったり…私たちの生活でチョコレートは魅力的でキラキラしたものに映ることが多い。

しかし、チョコレートの原料のカカオの生産国では、小さな子供が学校にも行かず収穫など労働を強いられている。その現状を変えるための、日本のチョコレートメーカーの取り組みが今、加速している。

カカオ大国の西アフリカ…2カ国で児童労働者数は156万人

国際カカオ機関によると、2021年10月から2022年9月までの1年間に世界で最も多くカカオ豆を生産した国はアフリカのコートジボワールで212.1万トン、第2位はガーナで68.9万トンだ。アフリカ全体で見ると、359.4万トンと世界全体の生産量の74.5%を占めている。

一方、NORCの報告書によれば、コートジボワールとガーナだけでも、危険な労働を余儀なくされている児童労働者は156万人に上るとされ、このうちの77万人はガーナの労働者だ。現在、日本が輸入するカカオの約8割はガーナ産であることなどから、特にガーナの児童労働の問題は私たちに無関係とは言えないのだ。

コートジボワールとガーナだけでも、危険な労働を余儀なくされている児童労働者は156万人に上る©ACE
コートジボワールとガーナだけでも、危険な労働を余儀なくされている児童労働者は156万人に上る©ACE

チョコレートメーカーは、長年こうした児童労働をなくすため、現地農家に農業支援などを行い、その労働環境の改善に努めてきた。現地では児童労働が悪いものであるという認識も未だに薄く、その意識改善なども行ってきたという。

サプライチェーン上の児童労働リスクをより「見える化」

ロッテは児童労働撤廃に向け、これまでもNPO団体などと協力し児童労働の監視や就学支援を行う地域を優遇し、費用が上乗せされた割高な豆を仕入れてきた。しかし、流通経路が複雑である上、現場では紙での管理が主であるために電子化も進まず、仕入れた豆が本当に児童労働に関係していないか確認しきれなかったという。

そこで、今回、サプライチェーン上の児童労働リスクの可視化を可能にする実証実験をガーナで開始し始めたのだ。


集荷された豆の情報と、現地のNPOが提供する生産農家の児童労働リスクの情報を、ブロックチェーンのシステム上で結びつけて管理。どんな農家が生産した豆なのかを「見える化」し、メーカー側も把握できるようにしている。

ブロックチェーンを用いることでサプライチェーン上の作業負担を最小限にとどめながら、嘘の入力もしづらくしている。

将来的には板チョコなどの商品にもQRコードを貼り付けることで、スマホなどをかざすと、商品に使用しているカカオ豆の生産農家情報が画面上に表示され、消費者も自分の購入した商品の現地情報を瞬時に把握できるようなシステムの構想を抱いている。

消費者にも生産地への理解を促したい考えだ。

商品のQRコードを読み取ると、商品の情報を瞬時に把握できるようなシステムを構想しているという
商品のQRコードを読み取ると、商品の情報を瞬時に把握できるようなシステムを構想しているという

ロッテの担当者は、「今回、実証実験で行われる取り組みが成功すれば、他のチョコレートメーカーなどとも一緒にシステムを活用できるようになったらいいと思う」と話している。

チョコレートメーカーが対応を急ぐワケ

手間もコストもかかるこうした取り組みを行うことには、2つの理由がある。
「SDGsを意識する消費者への対応」と「リスクマネジメント」だ。

ロッテによると、この2、3年でSDGsに関するメールなどでの問い合わせは圧倒的に増えている。例えば、2021年3月から2023年2月までの2年間で問い合わせは141件にのぼったが、これは2019年からの2年間と比べると6倍以上の数だ。客が環境配慮・児童労働などに敏感になっている中で、今までと同じやり方をしていては商品が選ばれなくなるという危機感があるという。

さらに、原材料のカカオが将来にわたってきちんと調達できることがチョコレート事業を続けるために必要不可欠である、この2つの大きな理由が背景となっている。

明治も「サステナブルカカオ豆」の調達比率2026年度までに100%にする目標を掲げている
明治も「サステナブルカカオ豆」の調達比率2026年度までに100%にする目標を掲げている

持続可能な原材料の調達については、ライバル企業の明治でも同様の声がきかれた。

明治も児童労働などの問題に向き合い、2006年から独自でカカオ農家へのサポートを進めてきた。農家支援を実施した地域で生産された「サステナブルカカオ豆」の調達比率を2026年度までに100%にするとの目標を掲げる中、22年度は約63%までの到達見込みとなっている。

日本メーカーが営農指導を行うことで、農家が高い品質の豆を安定的に生産できるようになり、求める品質の豆をメーカーが購入し続けることで、農家の安定的な収入にもつながる。明治の担当者は、産地への支援、産地が抱える社会課題を一緒に解決することが、持続可能なカカオ調達につながり、ひいてはカカオ産業全体の持続可能性につながると考えると話す。

明治はサステナブルなカカオ豆を使ったチョコレートケーキをコメダ珈琲店で販売
明治はサステナブルなカカオ豆を使ったチョコレートケーキをコメダ珈琲店で販売

明治では、さらに2月15日からはコメダ珈琲店とコラボして、こうしたサポートを通して得られたサステナブルなカカオ豆を使ったチョコレートケーキ商品をコメダ珈琲の店舗で販売した。

企業単独の取り組みには規模の面で限りがあり、様々なパートナーとコラボや協業することが取り組み拡大につながると考えたという。

児童労働を撤廃し持続可能な生産を行うため、メーカーはサプライチェーンの実態把握の精度向上や他社とのコラボによるサステナブルな豆の消費拡大など、あの手この手で対応を急いでいる。私たちがこうしたカカオの生産状況を知り、どんな消費行動を今後とっていくのか?児童労働問題の解決と、心を豊かにしてくれるチョコレートを食べ続けられるのか否かは、私たちの選択にかかっている。

(フジテレビ経済部 外食・食品担当 麻生小百合)

(FNNプライムオンライン3月14日掲載。元記事はこちら

https://www.fnn.jp/

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