ESG(環境・社会・企業統治)やジェンダー問題など各分野の専門家らが、学生が持続可能な企業を就職先に選ぶための9の基準を提案し、ホームページ(HP)「本気でサステナブルカンパニー」で公開した。専門家らは学生からも意見を聞き、企業の“本気度”を見抜くポイントもまとめた。環境や社会の課題解決に取り組む企業は、将来の経営を担う人材獲得のチャンスとなる。
基準をつくった主なメンバーは大崎麻子氏(ジェンダーアクションプラットフォーム理事)、薗田綾子氏(サステナビリティ日本フォーラム事務局長)、吉高まり氏(バーチュデザイン代表理事)。3人は国の審議会などの委員として政策提言にもかかわる。
9の基準のうち、ジェンダー平等(性別による差別解消)関連が四つ、気候変動関連が三つを占めた。企業は情報を公開しているが、大崎氏は「ジェンダーと気候変動は日本の取り組みが遅いと指摘されている。企業から本質的な情報発信はまだ少ないと思う」と、基準に選んだ理由を説明する。
本質を見抜くポイントは、開設したHP「本気でサステナブルカンパニー」で紹介している。例えば、経営者がジェンダー平等を「女性活躍」としか捉えていないと本質的とはいえない。女性だけが家事と仕事を両立するといった性別による分業意識を問題視し、改善する意思の発信を確認するように助言する。ジェンダー平等のメリットを理解できている経営者は、自らの言葉で語っているという。
女性のキャリアアップも9の基準の一つ。大崎氏は「執行役員の女性比率は外せない」と強調する。社外取締役への女性起用は多いが、生え抜きの女性取締役は少ない。女性執行役員は内部昇格があり、女性もキャリアアップできる会社を知る指標となる。
ジェンダー平等を推進する企業は多角的な視点から経営判断ができ、新しいアイデアも生まれやすいとされる。また、多様な働き方を認める制度が整っていて男性にも働きやすく、人材定着率が向上するため、持続可能な企業となる。
気候変動対策も企業の将来性を知る手がかりだ。脱炭素は大きな社会変革であり、市場の変化への対応を検討している企業は将来も存続し、成長機会を得られるからだ。
9の基準の1番目でも、経営者による長期視点のメッセージを重視する。「企業のあり方、ビジネスのやり方が変わろうとしている。学生にとっては『これまでどうだった』よりも『これからどうしていくのか』が大切だ」(大崎氏)。
企業は自社の歴史をアピールしやすいが、輝かしい業績があっても将来も安定という保証はない。変化に危機意識を持ち、対策を語れる企業でないと学生からは持続可能な企業として見てもらえない。
9の基準の最後に若者との対話を入れた。薗田氏は「経営者が若者の意見を聞く場を持っていることが重要」と語る。経営者の周囲には同世代が多いが、違う立場の意見は経営のヒントになる。また、多様な意見に耳を傾ける企業ほど、価値観の違いを認める風通しの良さがある。
9の基準は就職活動での活用はもちろん、「学生への教育」(大崎氏)も目的だ。これまで人気ランキングや年収などが企業選びの基準だったが、社会から必要とされる企業価値も考えてほしいと語る。
多くの企業が持続可能な開発目標(SDGs)に賛同し、ジェンダー平等や気候変動対策に取り組んでいる。自社の活動を「本質的」と胸を張って言える企業は投資家や取引先からの評価に加え、人材獲得でもメリットを得られる。
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