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Friday, February 24, 2023

【鉄路と生きる(31)】第3部 磐越東線 持続的な活用策必要 専門 ... - 福島民報

 国鉄改革に伴う磐越東線の廃線危機は沿線の自治体や住民らの意識を変え、利活用促進に向けたさまざまな活動につながった。だが、時間の経過と共に意識が薄れてしまった側面は否めず、40年の時を経て、鉄路の在り方が再び問われる状況となった。

 人口減少や高齢化が進み、日本全体の経済が上向いていた1980年代の当時とは社会構造が大きく変化している。地元が求める路線の存続には時代に合った持続的な取り組みが不可欠となる。

 JR磐越東線2区間の1キロ当たりの1日平均乗客数は【グラフ】の通り。JR東日本発足の1987(昭和62)年度と直近の2021(令和3)年度を比べると、いわき-小野新町(小野町)駅間は約8割減、小野新町-郡山駅間は約5割減と大きく落ち込んでいる。

 田村青年会議所(JC)理事長として国鉄時代に路線存続に向けて活動した宗像哲夫さん(74)=三春町=は「5、6年は本気で頑張っていたんだが、徐々に路線利用への意識が薄れてしまった」と実情を打ち明ける。

 現理事長の勝山修二さん(39)=田村市船引町=は昨年7月のJR東による収支公表後に船引駅(田村市船引町)から、いわき駅方面への磐越東線に約20年ぶりに乗車した。「路線を次世代につなげるためにも地域が一体となり、一人でも多くの人が利用する運動を展開しなければいけない」と自戒を込めながら話す。

 勝山さんは駅に降りた人への特別企画など鉄道と連動した地域活性化策を思い描く。宗像さんも「新しい発想が求められる。県内路線同士のネットワークも大切ではないか」と提起する。

 JR東の公表対象となったいわき-小野新町駅間の年間収支、収支率の推移は【表】の通り。赤字額は若干改善しているものの、収支率は5%以下と厳しい状況だ。

 小野町商工会長の村上勝徳さん(68)は「民間企業として赤字路線を残すのは容易ではないだろう」とJRの経営状況に一定の理解を示す。路線の維持には、観光につながる沿線のPRに加え、地元住民による日常利用の促進が重要とみる。「JRにメリットを感じてもらえる方策を地域が示す必要がある」と長期的な視点での構想を練る。

 交通政策に詳しい福島大経済経営学類の吉田樹准教授(43)は「JR路線の利活用は企業側に任せてきてしまった側面がある」と指摘する。国鉄改革で第三セクター鉄道に移管した路線は株主の沿線自治体が運営に関わることで柔軟な運行形態を実現した一方、JRの地方路線は運行本数の見直しなどが少なく、周辺道路の整備も進み、三セク鉄道以上に鉄路の強みが失われてしまったという。

 吉田准教授は地域の主体性に加え、JR側の姿勢にも注目する。「乗客数や収支などの数字の意味、背景などを突き詰めれば、コミュニケーションの材料に十分なり得る」とし、積極的な情報開示の重要性を訴える。

 地方路線の議論が進もうとしている中、県内では磐越東線を巡る協議会設立の動きが出ている。

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