Pages

Friday, October 14, 2022

トム・クルーズ、ヒトラー暗殺を企てるドイツ軍人を熱演 ワルキューレ【坂本朋彦のシネフィル・コラム】 - nhk.or.jp

今回ご紹介するのは、トム・クルーズがドイツ軍人を演じる、ヒトラー暗殺計画の実話をもとにした緊迫のドラマです。

第二次大戦末期、アフリカ戦線で重傷を負ったドイツのシュタウフェンベルク大佐は、敗戦が色濃くなるなかヒトラー暗殺を決意。さらに“ワルキューレ作戦”を発動しクーデターを起こそうとします。周到に計画を進め、1944年7月20日、シュタウフェンベルク大佐は、ヒトラーのいる会議室に爆弾をしかけますが…。

クルーズ演じるシュタウフェンベルク大佐は、貴族出身で、ヒトラーやナチスに疑問を感じ、祖国を愛する思いから暗殺とクーデターを企てた人物。当時40代半ばだったクルーズは、得意の体を張ったアクションではなく、軍人としての誇りや苦悩、家族への愛、主人公の複雑な心理をじっくりと表現し、新たな一面をみせています。

ドイツ軍人を演じるのはケネス・ブラナー、ビル・ナイ、テレンス・スタンプといったイギリスの名優たち。重厚な演技も光ります。

クルーズはこの作品で重要なスタッフと出会います。綿密なリサーチと取材で本作の脚本を執筆し、製作も務めたクリストファー・マッカリーです。本作以降、マッカリーはクルーズの主演作「アウトロー」(2012)、ミッション:インポッシブル シリーズの「ローグ・ネイション」(2015)、「フォールアウト」(2018)、現在製作中のシリーズ7および8作目で監督と脚本を、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(2014)、「トップガン マーヴェリック」(2022)では脚本を担当、クルーズ作品に欠かせない存在となっています。

1968年生まれのマッカリーは、監督のブライアン・シンガーと高校時代からの友人で、マッカリーのオリジナル脚本、シンガー監督の犯罪映画「ユージュアル・サスペクツ」(1995)で一躍注目されます。二転三転する先の読めない見事な展開が評価され、アカデミー脚本賞を受賞。その後もシンガー監督作を次々てがけました。アクションはもちろん、ウィットに富んだセリフを書き、撮影現場での変更にも柔軟なマッカリーのすぐれた能力が、クルーズ作品の高いクオリティーとなり、絶大な信頼を得ているのだと思います。

映画のなかで、歴史を改変するわけにはいかず、シュタウフェンベルク大佐たちの計画は未遂に終わります。結末がわかっていても緊張感が持続するのは、マッカリーの精緻な脚本、シンガーの演出、クルーズや名優たちの迫真の演技があるからこそです。
見ごたえたっぷりの戦争映画、じっくりご覧ください。

プレミアムシネマ「ワルキューレ」

10月19日(水)[BSプレミアム]後1:00〜3:00

坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( トム・クルーズ、ヒトラー暗殺を企てるドイツ軍人を熱演 ワルキューレ【坂本朋彦のシネフィル・コラム】 - nhk.or.jp )
https://ift.tt/6ZzWJTm

No comments:

Post a Comment