ロイズが9.3億円を投じた「新駅」が話題になっている。そのルーツを探っていくと……?
撮影:田中真紀子(左)、西山里緒(右)
チョコレートで有名な北海道の菓子メーカー、ロイズコンフェクト(以下ロイズ)。そのロイズが自治体とともに要望したことで2022年3月に北海道・当別町に誕生することになった新駅「ロイズタウン駅」が、にわかにTwitter上で話題になっている。
駅新設に9.3億円「そうかこんな投資手段が」
発端となったのはこんなツイートだ。
北海道土産ロイズ、約9億円投じ請願駅を新設。大きなお買い物と思えますが、そうかこんな投資手段があったのか!という驚き。
耐用年数30年と仮定し、年3000万円の投資。アクセス良くなったため下記が見込めます。
・駅名による宣伝効果
・工場見学者&購入者増加
・従業員の通勤手段確保&採用促進
請願駅とは、「自治体や地元住民・周辺企業などの要望により開設された鉄道駅」のことを指す。ロイズタウン駅は、地元・当別町とロイズの連名での請願により、JR札沼線(学園都市線)の新駅として2022年3月、オープンした。
札幌圏内も含めて全路線が赤字のJR北海道としては、20年ぶりの新駅として話題になった。
ロイズといえばあの甘じょっぱい「ポテトチップチョコレート」が有名だ。
撮影:西山里緒
駅舎などの建設費にかかる約9億3000万円はロイズが負担し、駅前広場などの整備にかかる約6億4000万円は当別町が負担。年間の維持管理費はJR北海道が負担するといい、自治体・企業・鉄道会社がそれぞれ協力し合う座組みだ。
このツイートに対して「発想が秀逸過ぎる」「ゴリゴリに売れてるからゴリゴリに地域社会に貢献してる」「すんごい正しく、面白い投資の仕方」などの反響が相次ぎ、8月10日時点で同ツイートは1万以上の「いいね」、5000以上のリツイートがされている。
ロイズ広報に反響について尋ねると「これをきっかけに多くの方にロイズについて知っていただければ嬉しい」とコメントした。
ロイズ社長「(米最大手チョコメーカー)ハーシーのように……」
駅の構内には、ロイズの広告が掲げられている。
駅のある当別町は、札幌市の北東に位置する人口が1万5000人ほどの小さな町だ。ロイズタウン駅は、札幌駅から電車で30分ほどの距離にある。
その当別町・太美(ふとみ)にロイズがチョコレート工場を作ったのは、1999年。現在、ロイズ商品の「ほぼすべて」がこのふと美工場で生産されているという。
そんな長いつながりを持つ当別町とロイズが協働で街づくりを推進していくために包括的連携協定を結んだのが2019年。両者は2020年1月、駅を新設する要望書を連名でJR北海道に提出した。
北海道リアルエコノミーの報道によると、3月10日の開業セレモニーには、ロイズコンフェクトの山崎泰博社長が登壇。
「ロイズタウン駅」構想は実は15年前からあり、そのモデルが、アメリカ・ペンシルバニア州の、大手チョコレートメーカー「ハーシー・カンパニー」が位置することで知られる町「ハーシー」にあることを明かした。
「キスチョコ」などで知られるハーシーは、本社のあるハーシー市にチョコレートをテーマにした複合施設「ハーシーズチョコレートワールド」などを置いている。
Shutterstock / George Sheldon
「(ハーシーは)130年前に、ペンシルバニアのハリスバーグの一角、全くの山林原野、何もないところを切り開き、ホテルやコンベンションホールなど色々な施設ができてきて、今は世界中から観光客が訪れるようになりました。(中略)何かやはり共感を覚えまして、我々もこの地に、ハーシーのような街づくりができればいいなと、その頃から思っておりました」(山崎社長)
では、話題のロイズタウンとはどのような場所なのだろうか?実際に現地の様子を見てみよう。
深い青のタイルが印象的な駅舎。ロイズのイメージカラーに合わせたデザインだという。
撮影:田中真紀子
ロイズタウン駅は無人駅。JR北海道によると、請願の際には「1日に400人〜500人程度の乗車人数」が見込めるとの計画だったが、オープンしてから実際のところは未調査だという。
撮影:田中真紀子
駅が想定している利用者は、工場の見学者(観光客)、工場従業員、そして付近の住人だという。駅からは、ロイズふと美工場直売店への無料のシャトルバスが出ていた。工場見学エリアは2022年冬オープン予定。
撮影:田中真紀子
駅から700メートルほどの場所には、工場に隣接したロイズの直営店。建物には「ROYCE' CACAO&CHOCOLATE TOWN」の文字が輝く。
撮影:田中真紀子
シャクっと甘じょっぱくてクセになる「あの商品」はもちろん、限定商品も購入できる。
撮影:西山里緒
壮大な「ロイズタウン」構想だが、今はまだまだ建設途上。駅前広場の建設工事が進んでおり、ショベルカーの先に遠くロイズの工場が見えた。
撮影:田中真紀子
駅のホームから見渡すと、北海道ののどかな風景が広がっていた。いずれ「ハーシー」のように、ロイズタウンも発展していくのだろうか。
撮影:田中真紀子
(文・西山里緒、取材協力・田中真紀子)
からの記事と詳細 ( 【現地レポ】チョコレートのロイズが9.3億円投じた「自社の最寄り駅」が話題…きっかけはあの超有名メーカーだった - Business Insider Japan )
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