変化する海洋環境に、水産業はどう対応するか。ウニが海藻を食べ尽くす磯焼け対策として、ウニの「蓄養」を研究する宮城大の片山亜優准教授(36)に、陸上養殖の展望を聞いた。
■クローバーなどエサ
痩せたウニを陸上の水槽に移し、クローバーなどをエサとして与える蓄養の研究をしている。磯焼けの海で育ったウニは身入りが悪い。仙台市の実験棟で、駆除されたウニの身入りを改善し、有効活用する方法を探っている。
三陸の海では、東日本大震災以降、変化が起きている。海の生物のエサとなる海藻は津波で流されたり、土砂が積もって成長できなかったりして、急激に減少した。親潮の力が弱く、東北沖に栄養が入ってこない状況も続く。このままでは、海藻も植物プランクトンも育ちにくく、従来の海での養殖スタイルは難しい。
例えばウニを海で養殖する場合、夏場の表層では海水温が25度を超える。天然のウニは、冷たい海水を求めて深くに潜る。しかし、養殖かごの中でウニは移動できず、高温に耐えられず死んでしまう。
陸上養殖では温度をコントロールできる。ウニに適した温度調節はもちろん、冬場に水温を上げることも可能だ。ウニはたくさんエサを食べるようになり、短期間で身入りが良くなる。
出荷時期を調整して通年出荷できれば、漁業者にとって安定した収入源になるだろう。夏は海へ漁に出て、冬は陸上養殖でプラスの収入を得る。陸地で行うため、漁業権を持たない別業種の事業者も参入できる。
もちろん、コストは課題の一つ。ウニに必要な栄養素をまかなえる安価なクローバーをエサに使用している。水槽や海水ポンプなど、最低限の設備を用意すれば、簡単に蓄養できる仕組み作りを目指している。
■環境変化への対応策
陸上養殖への期待は高まっているが、やはり限界はある。海に比べて陸地は狭い。回転
理想は、海と陸が補完し合う関係だ。天然の海の資源を守りながら、陸上養殖で自然環境に対応できない種の漁獲を補う。増えすぎたウニを陸上で蓄養すれば、海藻を含めて他の海の資源が増えるだろう。このまま海水温が上昇すれば、ウニ自体が生きられない環境になるかもしれない。
陸上養殖は、変化する海洋環境への対応策として効果的だ。今こそ、持続可能な水産業を改めて考える必要がある。
(おわり。この連載は、後藤陵平、長谷川三四郎、榎戸さくらが担当しました)
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