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Saturday, February 12, 2022

あすはバレンタイン! 「ビーン・トゥ・バー」に魅せられた男 お薦めのチョコレートとは(Sデジオリジナル記事) - 山陰中央新報

チョコレートコンシェルジュのちょこれいじさん=出雲市斐川町坂田、ラ・ショコラトリ・ナナイロ

チョコレートコンシェルジュのちょこれいじさん=出雲市斐川町坂田、ラ・ショコラトリ・ナナイロ

 「チョコレートコンシェルジュ」としてチョコレートの情報発信をする、ちょこれいじ(本名・野口麗次)さん(29)=佐賀県出身=。全国のチョコレート専門店を巡る旅をし、今年1月には出雲市斐川町坂田の専門店「ラ・ショコラトリ・ナナイロ」を訪れた。バレンタインデーに合わせて、チョコレートの魅力や「チョコ旅」の思い出を聞いた。(Sデジ編集部・宍道香穂)

▷「ビーン・トゥ・バー」の認知度向上へ
 野口さんはチョコレートの中でも特に、カカオ豆から板チョコレートになるまで、職人が豆の選定や加工を一貫して手掛ける「ビーン・トゥ・バー」の認知度向上に情熱を注いでいる。

 一般的に流通している大手メーカーのチョコレートは、カカオ豆をチョコレートにした「クーベルチュール」を仕入れ、加工するものが多い。対してビーン・トゥ・バーは、職人がカカオ豆の選別や加工も手掛ける。

 ビーン・トゥ・バーはクーベルチュールを使用する製品と比べて、チョコレートを作り上げるまでのコストや労力が大きい。生産者と適正な価格で取引するフェアトレードに情熱を注ぐ職人も多く、販売価格は高くなりやすい。野口さんは「適正な販売価格だが、1枚1,000円のチョコレートを見て、なぜそんなに高い価格なのか分からない人も多い。中には詐欺だと思う人もいて、とてももったいないと感じた」と話した。職人のこだわりや思いがこもったビーン・トゥ・バーの価値をより多くの人に知ってもらいたいと、SNSやブログ、動画配信を通して発信する。

(写真説明)現在滞在している大阪市から、オンライン取材に応じてくれた野口さん

 カカオ豆をチョコレートにするには、どのような工程が必要なのか。野口さんに教えてもらった。
 まず、カカオの実から豆を取り出し、発酵・乾燥させた後、豆を選別する。選んだ豆を焙煎して、出てきた殻を取り除き、焙煎した豆を練って液状にする。口溶けを滑らかにするために液状のチョコレートを伸ばし広げる「テンパリング」と呼ばれる作業を経て、ようやくチョコレートが完成する。
 豆を選別し、発酵させたり焙煎したりといった作業もあるとは、知らなかった。

 カカオ豆の選定や焙煎には、職人それぞれのこだわりがある。カカオ豆はコーヒーのように、産地や生育状況によって味が異なるため、ビーン・トゥ・バーを手掛ける職人は、作りたいチョコレートの味に合うカカオ豆を選別している。

(写真説明)野口さんはビーン・トゥ・バー専門店を巡りながら、その店ならではのこだわりや製法を学んでいる。(以下全て、野口さん提供)

 一般的に流通しているチョコレートの多くは、さまざまなカカオ豆を混ぜて強めに焙煎することで、均一な味のものを大量に生産している。ビーン・トゥ・バーのチョコレートはそれぞれの豆に適した焙煎をすることで、豆本来の風味を生かした味わいや香りを引き出すことができる。例えば、一口にフルーティーな味わいといっても、柑橘系やベリー系など、豆によって味の種類はさまざま。カカオ豆それぞれの風味の違いを感じられるのが、ビーン・トゥ・バーの大きな魅力だ。

▷魅力発信に向けて始めた「チョコ旅」
 「魅力を発信するためには、まず自分自身がビーン・トゥ・バーを詳しく知る必要がある」と感じた野口さん。2021年1月、勤めていた食品会社を退職し、7月末から日本全国のビーン・トゥ・バー専門店を巡る旅を始めた。地元・佐賀県からスタートして九州、沖縄を巡り、中国地方へ。40以上の専門店を訪れ、職人のこだわりや個性が詰まったチョコレートに出会った。

(写真説明)出雲市斐川町坂田の「ラ・ショコラトリ・ナナイロ」を訪れた野口さん(右)=2022年1月

 今年1月、出雲市斐川町坂田のビーン・トゥ・バー専門店「ラ・ショコラトリ・ナナイロ」を訪れ、現在は大阪市の百貨店のバレンタインイベントに出店するオーナーに同行している。

 野口さんは「職人の方と直接会って話をすることで、人柄や価値観、信念を感じることができる。職人さんの人となりやチョコ作りに携わる背景を知ることで、味や香り、口溶けの違いをより深く楽しむことができる」と、旅で学んだストーリーを熱く話した。

 DJからチョコレート職人に転身した人や、健康食品の研究に携わっていた人、バルーンアーティストなど、元々はチョコレートとは全く関係のない分野に携わっていた職人が多いのも面白さの一つという。野口さんは「風味にも職人さんにも多様性を感じられるのが、ビーン・トゥ・バーの大きな魅力」とする。

 「ラ・ショコラトリ・ナナイロ」のチョコレートについては「とにかくきれいで繊細、美しいという印象を受けた」と野口さん。「味の出方がきれいで、雑味を一切感じない」とのことで、丁寧に作られたと伝わる味わいが魅力という。

(写真説明)「ラ・ショコラトリ・ナナイロ」のビーン・トゥ・バー

 野口さんはナナイロのチョコレートの味を「じわじわと甘みやコクが広がったかと思えば、フルーティーな味わいも感じられ、まるでオーケストラが奏でる音楽を聴いているよう」と表現する。少しでも指紋がついたチョコレートは販売しないという細かな気配りや、食器の一つ一つを丁寧に洗う姿など、あらゆる物事に丁寧に取り組む姿勢にも感銘を受けたという。

▷お薦めビーン・トゥ・バーを紹介
 明日はバレンタインデー。野口さんは「チョコレートを食べる時は、どんな人がどんな場所で作ったのか、背景にも思いをはせてもらえたら」と、チョコレートをより深く楽しむポイントを話した。これまでに国内のビーン・トゥ・バー専門店40店以上を巡った野口さんは、特にお薦めする専門店が四つあるという。一つずつ紹介してもらった。

① Chocolumbus(チョコロンブス)(福岡県北九州市)

(写真説明)チョコロンブス(福岡県北九州市)のビーン・トゥ・バー

 バルーンアーティストでもあるオーナーが、チョコレートを「体験するもの」として捉え、「カカオ豆の産地によって味が大きく違う」というワクワク感を提供している。チョコレートを食べるだけではなく、作られる過程を体験してもらおうと、チョコレートを作るワークショップも開いている。

② ANALOG CRAFT CHOCOLATE(アナログ クラフト チョコレート)(福岡県糸島市)

(写真説明)アナログ クラフト チョコレート(福岡県糸島市)のビーン・トゥ・バー

 カカオ豆の生産者と直接取引し、フェアトレードに力を入れている。野口さんは「優男(やさお)(=優しい男性)が作るチョコです」と紹介。「でも、チョコレートの味は刺激的です」とのこと。オーナーの優しい人柄とチョコレートのワイルドな味わいとのギャップを楽しめそう。

③ OKINAWA CACAO(オキナワ カカオ)(沖縄県大宜味村)

(写真説明)オキナワ カカオ(沖縄県大宜味村)のビーン・トゥ・バー

 地域を元気にすることを目標に、シークァーサーなど地元・沖縄の食材を使用することにこだわったチョコレートを販売する。オーナー自らが沖縄県で生産したカカオを用いてチョコレートを作っている。5年がかりでカカオ豆の生産を実現したといい、野口さんは「オキナワカカオ」のチョコレートを「熱血チョコ」と呼ぶ。
 
④ Bean to bar chocolate NAGANO(ビーン・トゥ・バー チョコレート ナガノ)(兵庫県神戸市)

(写真説明)ビーン・トゥ・バー チョコレート ナガノ(兵庫県神戸市)のビーン・トゥ・バー

 研究者、株式トレーダー、コーチング業などさまざまな職を経たオーナーが「型にはまらず、個性的に生きる人を増やしたい」との思いを込めて手掛けるチョコレート。カカオ豆が持つ風味や香りの個性を引き出したチョコレートを楽しめる。

 野口さんお薦めの4店のチョコレートは、各店のオンラインショップで購入できるほか、野口さんのホームページからも購入することができる。

▷大学院ではチョコレートを研究
 野口さんは幼少期からチョコレートが好きで「スーパーの駄菓子コーナーや駄菓子屋では必ずチョコを選んでいたし、ケーキもチョコケーキばかり食べていた」と振り返る。大学進学後、同じ大学内にチョコレートの研究をする研究室があると知り「そんな面白そうな研究室、入らないわけにはいかない」と、大学院への進学を決意。結晶化学をベースに、チョコレートの口溶けの研究に携わった。

 野口さんが初めてビーン・トゥ・バーを口にしたのは大学院生時代。近隣のチョコレート専門店のオーナーが研究室に持ってきたビーン・トゥ・バーだった。野口さんは「原材料がカカオ豆と砂糖だけなのに、香りが鮮烈で驚いた。それまでに食べていたチョコレートとは風味や香りが全く違い、衝撃的だった」と、口にした時の驚きを話した。

(写真説明)チョコレート色に塗装した「チョコカー」で、日本各地のビーン・トゥ・バー専門店を巡っている

 野口さんは優しい語り口で、「チョコんにちは」「出身は、サガーナです」「ありがチョコです」「おチョコれ様でした」と、楽しい「チョコ語」を自在に操る。「チョコレートの魅力を知り、発信しながら、こういう自由な生き方でもやっていけるのだという例を、チョコっとでも作ることができたら」と、今後の目標を話した。ユーモアあふれる人柄の中に、ビーン・トゥ・バーへの大きな愛と信念を感じた。

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