2021年12月13日、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のアブロシチニブ(商品名サイバインコ錠50mg、同錠100mg、同錠200mg)が発売された。本薬は、9月27日に製造販売が承認され、11月25日に薬価収載されていた。適応は「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」、用法用量は「成人及び12歳以上の小児には1日1回100mg経口投与する。なお、患者の状態に応じて1日1回200mgを投与」となっている。
アトピー性皮膚炎(AD)は、増悪・寛解を繰り返す、そう痒のある湿疹を主病変とする慢性炎症性疾患であり、患者の多くはアトピー性素因を有している。特に、中等度から重症のADは、広範囲な発疹を特徴として、持続する難治性の痒み、皮膚の乾燥、亀裂、紅斑、痂皮と毛細血管出血を伴うことがある。患者にとっては、痒みが最も大きな負担となり、体力を消耗させることもある。
ADの治療目標は、症状が認められない、あるいは症状があっても軽微であり、かつ日常生活に支障がない寛解状態への導入およびその長期維持である。そして、ADの治療法は病態に応じて、(1)薬物療法、(2)皮膚の生理学的異常に対する外用療法・スキンケア、(3)悪化因子の検索と対策――の3点が基本となっており、これらを個々の患者ごとに症状の程度や背景などを勘案して適切に組み合わせる。
現時点でのADの薬物療法としては、抗炎症作用を持つ外用ステロイドおよびタクロリムス水和物(プロトピック他)が中心的治療薬に位置付けられており、有効性と安全性について多くの臨床研究で検討されている。外用ステロイドは皮膚萎縮、毛細血管拡張などの局所副作用により、適応部位(顔など)や長期連用に関する問題があるが、非ステロイド外用薬として2020年6月に経口JAK阻害薬であるデルゴシチニブ(コレクチム)が発売され、2021年9月にホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬のジファミラスト(モイゼルト)が承認されるなど、近年、治療選択肢が増えている。
さらに、既存の上記外用薬を使用しても効果不十分な場合には、ヒト型抗ヒトIL-4/IL-13受容体モノクローナル抗体の皮下注製剤デュピルマブ(遺伝子組換え)(デュピクセント)、さらにJAK阻害薬の経口薬バリシチニブ(オルミエント)、ウパダシチニブ水和物(リンヴォック)が臨床使用されている。
アブロシチニブは、ADの適応としてバリシチニブ、ウパダシチニブに次ぐ3番目の経口のJAK阻害薬であり、12歳以上の小児への適応を有するのは、ウパダシチニブに続く2番目の薬剤でもある。細胞内の免疫活性化シグナル伝達に重要な役割を果たすJAKファミリーに対する阻害作用を示し、免疫反応の過剰な活性化を抑制することでADを改善する。
既存の抗炎症外用薬で効果不十分、あるいは疾患コントロールのために全身療法が必要な中等度から重度の患者(日本人を含む)を対象とした幾つかの国際共同第III相試験において、成人および青少年AD患者に対する本薬の有効性と安全性が確認された。海外では、2021年9月現在、英国で承認されている。
副作用としては、悪心(11.0%)、頭痛(4.4%)、ざ瘡(3.6%)、腹痛、嘔吐、下痢、上咽頭炎、上気道感染、毛包炎、浮動性めまい、血中CK増加(各1%以上)などであり、重大なものは単純ヘルペス(3.2%)、帯状疱疹(1.6%)などの感染症、肺塞栓症(0.1%未満)および深部静脈塞栓症(0.1%未満)を含む静脈血栓塞栓症、血小板減少(1.4%)、ヘモグロビン減少(0.9%)、リンパ球減少(0.7%)、好中球減少(0.4%)、間質性肺炎(0.1%)、ALT上昇(0.8%)やAST上昇(0.6%)などの肝機能障害が報告され、消化管穿孔の可能性もあるので十分注意する必要がある。
また、アブロチシニブに関しては、既存の経口JAK阻害薬と同様、厚生労働省の「最適使用推進ガイドライン」の対象周知徹底が全国の医療機関・薬局に対して図られている。本ガイドラインには、臨床試験データに加え、本薬の取り扱い施設や医師への要件、投与対象患者の選択、投与に際しての考え方や副作用への対応などの留意事項などが記載されており、使用に際しては十分確認しておく必要がある。
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