28日の日銀の金融政策決定会合では長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を賛成8反対1で、資産買入れ方針を全員一致で決定した。
現在の日銀の金融政策の操作対象は短期金利と長期金利となっている。短期金利は日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用。長期金利は10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行うとしている。
そして、日銀は2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続 するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の 実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続するとしている。
すでに量的・質的緩和を2013年4月に決定してから8年もの年月が経過している。その間、異次元緩和と呼ばれたものを拡大するなりしてきたが、いっこうに物価目標は達成できていない。
ここにきて企業物価は前年比6.3%もの上昇となっているが消費者物価指数は前年比0.1%の上昇でしかない。これは日本の消費者物価指数は金融政策で動かすことが困難であったというよりも、グローバルスタンダードとされた2%という数字そのものにも問題があったことも考えられる。
その2%の物価目標に縛られるあまり、現在の日銀は身動きが取りづらくなっている。特にここにきて世界的な物価の上昇を受け、各国の中央銀行が正常化に向けた動きを取り始めている。そんななかにあって、日銀は身動きが取れない。そのため円安が進行しやすくなるなどの弊害も出始めている。
日銀の金融政策にとって必要なのは、2%の物価目標や政府の共同文書などに縛られることなく柔軟な対応となる。現時点ではすぐに柔軟性を取り戻すのは難しいかもしれないが、それが必要になりつつある。
首相が岸田氏に変わったことで、これまでのしがらみから脱するチャンスともいえる。ただし、日銀総裁が変わらないと難しい面もあり、次の日銀総裁はそれを探ることになろう。
金融政策は物価を操作するのではなく、それを金融市場を通じて環境を作ることが本来の目的である。しかも、経済・物価の情勢変化に応じて柔軟な対応が求められる。そのためには物価目標に縛られることなく、さらには非常時対応のマイナス金利政策そのものを平時の大胆な緩和環を形成するゼロ金利政策に戻す必要がある。
さらに本来は市場で形成される長期金利に対するコントロールも柔軟にする必要がある。経済や物価などファンダメンタルズに即し、国債需給や海外金利などにも反応するなど市場での金利形成メカニズムを元に戻さなければ、債券市場そのものが機能不全になりかねない。市場参加者の市場の値動きに対する経験不足によって、大きな変動に耐えられなくなる恐れもある。
これらが今後の日銀の課題となる。欧米を主体に世界的に金融政策の正常化が進むなか、トルコのように金融引き締めは悪のような対応をとり続けてしまうと、本来の金融政策に求められる機能そのものが失われてしまうことにもなりかねない。
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