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Friday, April 12, 2024

楠木建氏 非効率を内包するアイリスオーヤマの「ほぼ完璧な競争戦略」 - 日経ビジネスオンライン

 第3の、最も重要なポイントは「仕組み」です。

 考えてみれば、ある企業の競争優位が長期にわたって持続するというのは不思議なことです。儲けるよりも、儲け続ける方が何倍も難しい。なぜならば、競争があるからです。

 ある企業が高いパフォーマンスを達成していれば、ごく自然に他社の関心を集めます。好業績の背後にどのような戦略があるのか、誰しも興味を持って注目します。利益ポテンシャルに富んだ市場セグメントや好業績をもたらす戦略ポジションは、すぐに世の中に知れ渡るところとなります。コンサルティング会社はさまざまな企業の成功要因を分析し、ありとあらゆる知識を提供してくれます。

 一時的に成功したとしても、その戦略はいずれ模倣されてしまい、その結果、競争優位を長期的に持続するのはますます困難になるはずです。

『いかなる時代環境でも利益を出す仕組み』(日経BP)

『いかなる時代環境でも利益を出す仕組み』(日経BP)

 しかし、現実はそうなっていません。競争優位を長期的に持続する企業が確かにある。その最たるものがアイリスです。四方八方から戦略を注視され、模倣の脅威にさらされながらも、長期にわたって競争優位を維持し、「いかなる時代環境でも利益を出」し続けています。

 これはなぜか ―― 僕はこの問題についてずっと強い関心をもち、持続的な競争優位の正体について思考を巡らせてきました。そのうちに、従来見過ごされていた論理があるのではないかと考えるようになりました。それが「ストーリーとしての競争戦略」―― 個別の打ち手ではなく、それらが一貫した因果論理でつながっているストーリーの総体にこそ競争優位の源泉がある―という視点です。

 アイリスは、ストーリーとしての競争戦略のほとんど完璧な事例を提供しています。

ほぼ完璧な「ストーリーとしての競争戦略」

 戦略ストーリーは業務や取引の体系ではありません。論理の体系です。先述したように、アイリスの戦略ストーリーの最上位には、ユーザーインというコンセプトがあります。ユーザーインである以上、ベンダー機能を自社に持つ。メーカーベンダーだからこそユーザーインが実現できる。この論理がアイリスの戦略ストーリーの主軸になっています。

 本書(編集注:『いかなる時代環境でも利益を出す仕組み』)で紹介されているさまざまな「仕組み」は、すべてこの基幹となる論理から派生しています。裏を返せば、個別の仕組みに注目しているだけではアイリスの強みの正体は分かりません。仕組みをばらばらに取り入れても、アイリスの競争力は手に入りません。

 例えば、毎週月曜日のプレゼン会議。2万5000点に上るアイリスの商品を生み出す原動力であるこの仕組みはよく知られています。同じような会議を取り入れる会社も少なくありません。それでも、アイリスのような成功にはつながっていません。

 なぜでしょうか。

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