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Sunday, July 23, 2023

倒産率が低いアフリカのフィンテック企業に学ぶ成長戦略 資金調達 ... - DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

倒産率が低いアフリカのフィンテック企業に学ぶ成長戦略

Illustration by Andrei Cojocaru

サマリー:成功するスタートアップと失敗するスタートアップの違いは何か。本稿では、アフリカの新興フィンテック企業が、限られた資金でも創造性を保ち、環境変化に敏感に対応している実例を紹介する。アフリカのスタートアッ... もっと見るプと欧米のスタートアップを比較し、資金調達への過度の依存や、短期的な利益の重視が失敗の原因となっている現状を分析する。 閉じる

成功する企業と失敗する企業の違い

 新興企業は、伝統的に失敗する可能性が高い。HBR誌の記事が引用した2022年の米労働統計局のデータによると、創業から10年以内に倒産する企業は約65%に上り、15年以上存続する企業は25%しかなかった。この数字からはある疑問が浮かぶ。「生き残って成功する企業と失敗する企業の違いはどこにあるのか」だ。

 中小企業が生き延びるために取る最もオーソドックスな戦略の一つは、投資の確保だ。欧米、とりわけシリコンバレーのテクノロジー系スタートアップではこの手法が人気だが、それはスタートアップの生き残り問題を改善するものではない。むしろ状況を悪化させているようだ。世界を見渡すと、米国を拠点とする企業は最も多くの資金を調達しているのに、最も寿命が短い。これに対して、アフリカを拠点とする企業は、集まる資金は最も少ないが、存続期間は最も長い

 筆者らの研究は、その理由になるかもしれないものを突き止めた。2022~2023年、アフリカで急成長する産業の一つであるフィンテック企業の上級管理職200人以上を調査したところ、重要なのは投資家への対応力ではなく、変革への対応力かもしれないことがわかった。すなわち「優位性を生み出し、リスクを最小化し、業績が持続するように、変革を起こして対応し続ける能力」だ。

 アフリカのフィンテック企業は、金融サービスを十分受けることができない人たちが、金融システムに参加できるようにし、金融サービスへのアクセスを拡大することにより、環境変化を起こす驚異的な能力を示してきた。

3つの間違った優先順位

 筆者らの研究では、欧米の起業家たちは、優先順位を決める時、3つの間違いを犯すことにより、みずからの改革への対応力と、長期的な存続にダメージを与えていることが判明した。そこでアフリカ発のフィンテック企業3社、すなわちペイヒッポ(Payhippo)、シカモア(Sycamore)、バンクリー(Bankly)を例に、アフリカの手法を紹介したい。

市場ではなく投資家に注目している

 欧米のほとんどのスタートアップにとって、何より重要な存在は、ベンチャーキャピタルだ。たしかに表面的には、資金が入ってきさえすれば、誕生まもないスタートアップは初期段階を乗り切れるように見える。このため、起業家たちは会社を立ち上げてから6~9カ月にもわたり、資金調達に奔走する傾向がある。

 IDEOによると、どのような起業家も4種類のストーリーテリングの準備をしておく必要がある。まず、エレベーターピッチ(ビジネスのアイデアを15秒程度で魅力的に説明すること)、オリジンストーリー(起業のきっかけ)、ピッチデッキ(説得力のある本格的なプレゼン)、そしてインターナルストーリー(仲間をやる気にさせるパーパスや展望)だ。これは欧米諸国では常識だ。だが、資金調達に躍起になるあまり、欧米の多くのスタートアップは、「市場に受け入れられること」というさらに重要な努力を怠ってしまう。

 アフリカの起業家たちは、スライドの資料やエレベーターピッチに磨きをかけるよりも、提案書やDM、ホームページなどの販促資料を作成することにずっと力を入れている。

 たとえば、シカモアは無駄を削ぎ落とした市場参入を図るとともに、商品開発に力を入れた。立ち上げ当初から自力で事業を展開する方針を取ることにより、さらに顧客の視点を重視した販促資料をつくることができた。ピッチやチラシやオンライン広告は、投資家だけでなく、ターゲット顧客(つまり中小企業)にアピールするように作成された。こうしたアプローチを取ることにより、シカモアは創業1年目のほとんどを、会社の持ち分を分与することによる資金調達ではなく、顧客からの売上げと有機的なキャッシュフローに基づき経営することができた。

 バンクリーは、自社の金融商品が、安心、信頼、信用という顧客の主要ニーズを満たせるというストーリーテリングに重点を置く戦略を取った。

 ペイヒッポの場合、最初の2年間は常に顧客との直接的なコミュニケーションに重点を置き、ダイレクトセールスの手法を活用した。3年目になると、オンラインとオフライン両方の広告を通じて、自社のブランドストーリーを伝える時期が来たと判断した。動画中心のコンテンツや、イベントの後援、「マーケットストーム」と呼ばれる販売施策など、常に顧客との直接的な関係を構築することに力を入れた。

 たとえば、ホームページなどに掲載する「お客様の声」は、顧客の共感を得る最高の方法の一つである。そこでペイヒッポは自社の歩みとともに、自分たちがいかに顧客の助けになってきたかを中心的に描く動画コンテンツをつくった。サクセスストーリーは誰もが好むものであり、この動画コンテンツは、潜在顧客がペイヒッポと契約すると何を得られるかを理解する役に立った。動画は、新規ユーザーに商品を売り込む役割も果たした。ペイヒッポの場合、顧客との対話を重視したことが、商品を改善し、収益を増やし、ビジネスを成長させることにつながった。

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