物語の端々に巧みに織り込まれている謎解きのハラハラ感と、唯(白山乃愛)が“仲間”と表現した、クセの強めな6人の医療スタッフとの家族のようなほっこりとしたやりとりが魅力の『Dr.チョコレート』(日本テレビ系)。チームのリーダーともいえる唯が最も信頼を寄せており、彼女の両親が殺された事件の真相を解き明かす上で最重要のキーマンとなっているのが、坂口健太郎演じるTeacherこと野田哲也だ。
物語の中で様々な表情を見せるTeacherには、大きく分けて3つの顔があるように思う。
【交渉人・Teacher】
Teacherの口癖は「ギブアンドテイク」。これは主に“Dr.チョコレート”である唯が手術の依頼を受けた際、「現金1億円の前払い」、「秘密保持契約書へのサイン」、そして「チョコレートの用意」というこちら側の条件を提示した後、言われる言葉だ。決めセリフのようになっているが、実はTeacherの行動原理でもある。今や、唯にも「なんかしっくり来ちゃってない?」と言われるほど相棒感の強くなった記者・奥泉(西野七瀬)には、最初、「“Dr.チョコレート”の正体を教える」という“ギブ”を与えて近づいている。Teacherが相手に求める“テイク”は大抵はなにかの情報で、とても堅実である。しかもこちら側が与えられる“ギブ”を絶妙な具合で小出しにして、交渉不成立感を出さずに、次の交渉条件を提示している。高度な交渉術だ。
ただし、得られた情報の精査は少し苦手なようで、唯の両親殺害に関わっていると思われた北澤(眞島秀和)は事件に直接の関係はなかった。疑うターゲットを間違えていたために、事件の黒幕と予想される“め組”のメンバーと会っていたらしいTeacherの研修医時代の同期・堤(佐野弘樹)を取り逃している。
【保護者・Teacher】
Teacherが唯とともにシンガポールに渡ったのは、彼女が8歳の時。そこから唯はそれまで「哲也くん」と呼んでいたのをやめ、野田のことをTeacherと呼ぶようになった。ドラマの中ではあまり描かれないが、シンガポールではTeacherは文字通り彼女の“先生”となり、医学の知識を授け、手術はたくさんシミュレーションして、実地訓練もしてきたのだろう。それが闇の世界で世界中から噂になるほどの唯の腕前に繋がっているのだ。本当にTeacherは良い“先生”だったのだろう。
だが、日本に帰ってきてからは唯の“保護者”として振る舞わなければならないことが多くなった。唯は、Teacher以外の人間と交流し始めたからなのか、感情で動くことが増えた。それが無茶に繋がることもあり、その度にTeacherは感情をむき出しにして唯を守ろうとしている。また、人を助けたいと思う唯の気持ちと面倒を起こしたくないTeacherは度々ぶつかり合っている。“親子”としてのふたりはまだまだ関係性を構築している最中のようだ。
からの記事と詳細 ( 坂口健太郎の巧みな演じ分けが『Dr.チョコレート』の魅力に Teacherには3つの顔がある - Real Sound )
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