大幅な賃上げとなった今年の春闘をどうみるか。労働市場の分析に定評があるニッセイ基礎研究所のエコノミスト斎藤太郎氏に聞いた。
企業の賃上げ表明が相次いだ(写真・Ystudio/PIXTA)
大幅な賃上げとなった今年の春闘。これを反映した4月の毎月勤労統計では現金給与総額が前年比1.0%となったが、消費者物価上昇率には追いつかず、実質賃金はマイナスが続く。
ニッセイ基礎研究所経済調査部長の斎藤太郎氏の話は賃金から広がり、「必要なのは『政府が余計なことをしない』こと」「2%物価目標はすでに達成されている」と通説の逆をゆくセリフが飛び出した。
――3.66%(6月段階の連合集計)という今年の春闘賃上げをどう評価しますか。
ここまで上がるとは思っていなかった。本来落ち着くべき賃金水準はもっと上だと思うが、そこまで段階的にしか上がらないと想定していたからだ。企業にとって固定費であるという賃金の性質上、一気に上げるのは躊躇するだろう、と考えた。
過去の春闘賃上げ率を見ても、オイルショック後の1980年代以降、前年よりも1%以上改善したことはなかった。
横並びが損なう持続性
――官製春闘だったのでしょうか。
私はそう見ていない。2013年に安倍晋三首相が就任した頃から、政府は賃上げをずっと唱えている。その延長線上で言えば今年も官製春闘だが、政府が唱えた効果で賃金が上がったわけではない。世論の力だ。物価高による実質賃金の目減りが誰の目にも明らかとなり、賃上げをしないと批判されるという雰囲気になったことが圧倒的に大きい。
ただ、企業の収益にばらつきがある中で、横並びの賃上げとなったのは気がかりだ。業績が厳しい会社も無理して上げている。
――春闘は本来、労働組合が集団で賃上げ圧力をかけるものでは。
その性質はあるが、具体的な賃上げ交渉は企業ごとで行う。横並びで上げる必然性はない。
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