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Wednesday, June 28, 2023

耳石が剥がれて起きる内耳原因の回転性めまい - 時事メディカル

 内耳が原因の「回転性めまい」は大きく分けて三つあります。その中で最も多いのは、内耳の耳石(砂粒のようなカルシウム結石)が関係している「良性発作性頭位めまい症」です。長い病名ですが、「良性」とはがんのような悪性の病気ではないということです。最近は患者さんの方から「耳石が剝がれたのですが、戻してもらえますか?」という話をされることがよくあります。

 これは、頭を左右や上下に動かしたり、寝返りを打ったりした際など、発作的に急に起きるめまいのことです。内耳にある耳石の一部が剝がれ、三半規管に入り込むことで起こります。どの半規管に入り込むかで症状は少し違います。年齢別で見ると、50~60代が最も多く、男女では女性の方が多いとされています。じっとして動かなければ、数秒から数分で必ず治まります。まず嘔吐(おうと)することはありません。耳鳴り、難聴も起こりません。ただその後も、同じような頭の位置や状態になると、再びめまいに襲われることがあります。回転性めまいが激しい場合もありますが、慌てないでください。

回転性めまいの種類や要因

回転性めまいの種類や要因

 診断では、ある一定の頭位で目が動く「眼振」という所見でほとんど分かります。心配するめまいではありませんが、一部になかなか治らない場合もあります。治療は、自宅でできるめまい予防の体操や医療機関で行う耳石置換法になります。

 ◇医療機関も混乱、メニエール病

 この他に、有名な「メニエール病」によるめまいがあります。私のドイツ留学時代、教授との最初の面接で「1カ月のめまい外来で、メニエール病と診断するのは何%くらいだ?」と尋ねられました。私が「10%以下です」と答えたところ、「よし、分かった」と昼食に誘われました。後で同僚に聞いた話ですが、「30%以上」と答えた留学生は誘わないそうです。つまり、本来のメニエール病は実はかなり少ないということです。メニエール病は一般の人にも知られており、よく耳にする病気ですが、実は医療機関でも混乱が多く、正しい理解が必要です。

 この病気は突然の回転性めまいに加え、片側の耳鳴りや難聴がほぼ同時に起きて数時間持続し、嘔吐に至ることも多い上に、反復します。難治性の場合、徐々に聴力が低下してしまうこともあります。難聴や耳鳴り、耳が詰まった感じなど耳に関する症状を伴いながらめまいの発作を繰り返す傾向があるため、日常生活に大きな影響を与えてしまいます。患者さんは「めまい発作がまた起きるのでは」と、かなり不安な状態を余儀なくされます。家庭内や職場の環境などのストレスなどが発作のきっかけになることが多いとされています。

 ◇「内耳の水膨れ」

 メニエール病は徐々に症状がなくなる場合もありますが、悪化することも多く、日々の生活習慣の見直しや内服の調整など根気よく治療することが肝要です。病態は「内耳の水膨れ(水腫)」と言われています。よく発症するのは中年以降で、40代以降の女性にやや多い傾向があります。気圧の影響を受けやすく、季節の変わり目や低気圧で起こりやすくなります。また、ストレスや低血圧、アレルギー体質、胃腸虚弱、不眠などがある場合は、そのコントロールが重要です。さらに「前庭型メニエール(不完全型メニエール)」と言い、耳鳴りや難聴を伴わないタイプもあるとされています。こうなると、回転性めまいがあれば、ほとんどメニエール病となってしまいます。しかし、本当にそうでしょうか? 今後、詳しく解説したいと思います。

 ◇少なくない緊急搬送

 最後の回転性めまいは、激しい嘔吐と回転性めまいが数日間持続する「前庭神経炎」という病気です。このめまいは3日から7日の間持続しますが、耳鳴りや難聴は起こりません。突然発症し、しばしば嘔吐して頭重感も強く、病院に緊急搬送されることも少なくありません。回転性めまいが持続するので、食事はもとより、飲水が困難になることもあるからです。目の動き(眼振)を見てすぐに診断が可能です。予後は良好で、ほとんどの症例で再発はありません。

 しかし、まれに症状が長引くこともあります。また、CTやMRIで異常はなかったのに、実は血栓などが関係した脳血管障害であることもあります。このような場合はさらなる精密検査が重要です。

 ◇脳が関係する場合も

 内耳が原因の三つの回転性めまい以外では、脳が関係している場合があります。椎骨脳底動脈循環不全や脳出血脳梗塞(脳幹や小脳梗塞)などの脳血管障害です。回転性めまいについて、CTやMRIなどによる1回の画像診断で異常がないからといって、すべてが耳に関係したものとは限らないと考えてください。回転性めまいが一度でも起きた場合は、必ず脳外科と耳鼻科の専門医の診察を受けてください。

 前回紹介した回転性めまいの患者さんは、実は耳が原因ではなく、脳血管障害(小脳梗塞)だったのです。現在「フワフワめまい」が持続していますが、生活習慣改善、内服治療、リハビリテーションなどを行って元気に過ごされています。

 次回は、脳が原因の回転性めまいについて解説します。(了)

 坂田英明(さかた・ひであき)
 川越耳科学クリニック院長、埼玉医科大客員教授。元目白大学教授。日本耳鼻咽喉学会専門医、日本聴覚医学会代議員。日本小児耳鼻咽喉学会評議員。
 1988年埼玉医科大卒、91年帝京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科助手、2005年目白大教授、15年より現職。小児難聴や耳鳴りなどの治療に積極的に取り組み、著書多数。近著に「フワフワするめまい食事でよくなる」(マキノ出版)。

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