ドイツ西部で稼働する風力発電タービン群(写真=AFP/アフロ)
ドイツでは環境保護への関心が日本以上に強く、地球温暖化の抑制などに力を入れることは、企業にとって基本中の基本になっている。同国は環境保護に多大な費用をかけながらも、賃金水準を日本以上に引き上げることに成功している。
筆者がドイツに住み始めて、今年で33年目になる。日本とドイツの最も大きな違いの一つは、環境意識だと思っている。ドイツの町を歩くと駅、商店、スーパーマーケットやデパートなど至る所で「持続可能性がある」「エコ」「ビオ」「環境にやさしい」というキャッチフレーズが目に飛び込んでくる。
持続可能性は企業の必須科目
特に「持続可能性がある(英語でサステナブル=ドイツ語でナハハルティヒ)」という言葉は流行語のようになっている。この言葉は、生態系が多様性を維持しつつ、自らの種を再生産するプロセスを、際限なく続けられることを意味する。つまり人間が作った製品や人間の活動が、生態系や自然環境に及ぼす悪影響が少ないという意味だ。
「持続可能性」は、家電製品や食べ物などの商品、一戸建ての民家、暖房、電力や金融サービス、とありとあらゆるものに使われている。インターネット上でも、この言葉を使わない広告はほとんどない。「持続可能性」はドイツ人の暮らしに完全に浸透している。持続可能性を考慮しない経済活動や消費活動は、この国ではもはや考えることができない。
ある大手デパートは「環境にやさしい洗剤コーナー」を設け、環境への悪影響が少ないと判断した製品だけを売り場に置いた。一つひとつの洗剤について、環境にかかる負荷を環境保護団体の協力を得てチェック。「環境への悪影響が大きい」と判断した商品を売り場から締め出した。
その理由を「短期的に見ると売上高は減った。しかし消費者は環境保護に貢献したいと強く望んでいる。長い目で見れば、環境にやさしい製品だけを売ることは、消費者への重要なサービスだ」と説明した。
ミュンヘン中央駅のプラットホームに、日本の新幹線に相当する長距離高速列車ICEが止まっている。先頭車両の側面に描かれるストライプの色が、2018年から緑色に変更になった。緑色は持続可能性を示す色だ。それまでは赤だった。ドイツ鉄道会社(DB)によると、ICEを初めとする長距離列車は、100%再エネ電力を使っている。
DBは「自動車や飛行機に乗らず、列車を使うことで二酸化炭素(CO2)排出量の削減に貢献しよう」と盛んに宣伝している。同社は38年には、全ての列車を再生可能エネルギーで運行し、40年にカーボンニュートラルを達成する方針だ。
「持続可能性」と並んでよく見かける「エコ」という言葉は「生態系への悪影響が少ない」、ビオは「生物環境への負荷が少ない」もしくは「化学肥料や農薬を使うことなく、有機農法で作られた」という意味だ。
スーパーが販売する野菜や果物には2つの種類がある。「レーベ」というスーパーは、「ビオ」のマークを付けた有機栽培による野菜・果物とそうでない野菜を別の場所に置き、区別して売っている。
「ビオ」のマークが付いた野菜・果物の値段は、そうでない物より高いことが多い。それでも、ビオ野菜・果物の人気は高まる一方だ。アレンスバッハ人口動態研究所が毎年実施しているアンケートによると、「過去2週間以内にビオ野菜・果物を買った」と答えた市民の数は、17年の約1950万人から21年の約2269万人へと約16%増えた。
からの記事と詳細 ( なぜドイツは経済成長と環境保護を両立できるのか? - 日経ビジネスオンライン )
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