第18回 「スポーツで持続可能な街づくり」
●スポーツと地域を共に盛り上げる
3月に開催された「2023ワールドベースボールクラシック」は、日本チームの活躍もあり、大変な盛り上がりを見せました。日本の野球を盛り上げるために、世界大会で勝つ――栗山英樹監督はそう語っていましたが、ついに14年ぶりに世界一になりました。
もちろん、野球への関心を高めるには選手の活躍が欠かせませんが、競技場が地域と一体となり“ボールパーク”化することでスポーツ人気を高めながら、地域も活性化させようという取り組みがあります。
一般的に「球場」というと、野球を観戦するためのスタジアムを指しますが、1992年、アメリカのボルチモアに一つのボールパークが誕生しました。それが、築90年の倉庫を球場の一部として残し、倉庫内に球団オフィスやギフトショップ、カフェ、スポーツバーなどを設けて、試合がない日も一般に開放することで観光スポット化させた「オリオール・パーク・アット・カムデン・ヤーズ」です。これにより、観客数は前年比プラス100万人を達成し、この成功を受けて米プロ野球リーグ(MLB)では次々とボールパークが誕生します。
●持続可能な街づくりをめざして
日本初のボールパークは、2009年に広島に生まれた「マツダスタジアム」です。子どもから高齢者まで楽しめるように、バーベキューをしながら観戦できるテラス席や寝そべって見ることのできるシートもあります。また、物産展や新車発表会なども開催し、市民のコミュニティの拠点となりました。
2023年3月には、北海道北広島市に「北海道ボールパークFビレッジ」が誕生しました。そのコンセプトは、野球の試合を観戦するためだけの施設ではなく、ファンやパートナー、地域と一緒に地域社会の活性化や社会への貢献につながる“共同創造空間”をめざす、としています。また、このプロジェクトに賛同する企業などとの様々なパートナーシップによる持続可能な街づくりをめざしています。持続可能な開発目標(SDGs)にも賛同し、多様性を尊重した雇用の創出、柔軟な働き方の実践、効率的なエネルギーの活用など、様々な取り組みを模索しています。
●スポーツと企業とESG
アメリカには、マイクロソフト共同創設者のポール・アレン氏が2010年に設立した非営利団体「Green Sports Alliance」があり、MLBだけでなく、米アメリカンフットボールリーグ(NFL)、米プロバスケットボールリーグ(NBA)といったメジャースポーツリーグを含む15団体以上のスポーツリーグ、関連企業、官公庁などがメンバーとなっており、スポーツを起点としたサステナビリティへの取り組みを推進しています。
また、欧州サッカー連盟(UEFA)は、サッカーにおける社会的責任を「Football & Social Responsibility(FSR)」として提示しています。さらに、ラグビーユニオンの国際競技連盟「World Rugby」では、「サステナビリティアクション」として、倫理性のある、持続可能な製造を実現しているサプライヤーと契約することなどを掲げていますし、スイスのジュネーブに本拠地がある「Sport and Sustainability International」という団体は、2030年までにスポーツ分野でカーボンニュートラルを実現し、廃棄物をゼロにすることなどを宣言しています。
これらのスポーツに関わる団体では、環境問題にとどまらず、人々の健康や人種差別、人道的活動なども含む幅広い分野について議論が行われています。それは、試合や大会を開催するコミュニティや観戦者とともに、社会のサステナビリティにコミットしていく姿勢を示しているのです。ですから、そこにビジネスとして積極的に関わる企業は、まさしくESGの「S(社会との関わり)」を競争力に結びつけている、と当社では評価しています。
情報提供:株式会社グッドバンカー
(2023年3月22日 記/次回は4月29日配信予定)
株探ニュース
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