聞き手/斎藤 正一(日経ESG経営フォーラム事務局長)
水産資源の調達力と食品加工技術力という強みを生かすため、グループ内の連携を強化した。海洋環境や水産業の課題解決に取り組み、持続可能な漁業による価値提供を目指す。
2027年に向けた新長期経営ビジョンについて説明してください。
池見 賢(いけみ・まさる)
マルハニチロ 代表取締役社長
1957年兵庫県生まれ。81年大洋漁業(現マルハニチロ)入社、2017年取締役、19年取締役専務執行役員、20年4月より現職(写真:大槻 純一)
池見 賢 氏(以下、敬称略) 22年度から中期経営計画を開始するに当たり、企業価値向上と持続的成長の実現に向けて長期経営ビジョンを再定義しました。「経済」「社会」「環境」の3つを融合した価値創造に取り組み、持続可能な地域・社会づくりに貢献します。
水産物に限らず総合食品企業として、グローバルに「マルハニチロブランド」の提供価値を高めていきます。当社の強みである水産資源の調達力と食品加工技術力に基づく持続可能なバリューチェーンを強化して、企業価値の最大化を目指します。
今後は、どの分野に注力しますか。
池見 当社の強みは水産資源の調達と食品への加工ですが、これまで事業としては別々の機能で、横の連携ができていませんでした。
社内の資産を最大限活用するために、22年度から「水産資源」「加工食品」「食材流通」という3つの事業セグメントに分け、グループ内連携を強化しました。量販店や外食、食品卸など顧客を起点にした販売活動を、価値の最大化につなげます。
コロナ禍や環境問題など課題が山積して先行きが不透明な事業環境の中で、ステークホルダーに対して持続的に価値提供をしていくには、自らの強みと弱みを把握して事業を推進する必要があります。投下資本利益率(ROIC)を重視して、限られた資本をどの事業分野に投下するかを検討し、ポートフォリオの分析・評価を進めます。
水産資源の確保に注力
気候変動による漁獲量の減少が顕在化しています。経営戦略にサステナビリティをどう位置付けますか。
池見 水産資源の調達において、最優先すべきは持続可能な水産資源を確保することです。日本の漁業・養殖業の生産量は1984年の1282万tをピークに年々減少し、3分の1程度にまで縮小しました。
一方、グローバルでは先進国での健康志向の高まりを背景に「魚食ブーム」が広がっています。新興国では経済発展による所得向上や社会インフラの充実により、高級食材だった魚介類の消費が急速に増加し、水産資源の需要は70年代の約2倍に拡大しています。
増え続ける人口を支えるたんぱく源として、水産資源は世界的に需要が拡大すると見られ、市場では価格高騰と資源の争奪戦が繰り広げられています。天然資源は減少が続き、世界の水産資源の半分以上は養殖で供給されています。当社も多くを輸入していますが、円安傾向もあり、日本の購買力は弱くなる一方です。
水産資源の持続性確保に向けて漁獲規制の動きが強まる中、当社は安定供給の使命を果たすべく「資源アクセスの強化」を成長戦略に掲げています。持続可能性が担保された水産資源を確保しながら、海外でのサプライチェーン拡大を進めています。すり身や切り身の原料になる米ベーリング海産のスケソウダラは、漁獲枠の27%を確保しています。
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