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Friday, January 27, 2023

持続可能の実現に本業生かす 課題解決、個から共創へ3|日経BizGate - 日経BizGate

日本経済新聞社と日経BPは昨年12月5、6両日、リアルとオンラインのハイブリッドで「日経SDGsフォーラムシンポジウム」を開催した。長引く新型コロナウイルス禍やロシアによるウクライナ侵攻、深刻化する気候変動など困難な状況が続く中、国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)達成へ向け、いまできることは何か。企業経営者を中心に産官学の識者が登壇し、本業を通じて社会課題解決を目指す先進事例を紹介するとともに、共創の重要性を訴えた。

日本経済新聞社と日経BPは2022年12月5日〜10日、様々な立場の人々や企業とともに、経営、投資、環境、ジェンダーなど多様なテーマについてSDGsの実現を議論する国内最大級のイベント「日経SDGsフェス」を開催しました。

このうち、12月5、6日に開催したトラック「日経SDGsフォーラムシンポジウム」のプログラムから、企業講演をダイジェスト版でご紹介します。

【企業講演】地域一体で豊かさ追求

三井不動産 代表取締役社長 菰田 正信 氏

我々の開発は地球と地域と共にある。地域との共生・歴史の継承、生物多様性の確保、緑の環境づくり、水環境の保全、省資源・廃棄物削減の5テーマで課題に取り組んでいる。具体的には住宅や公園と一体となった都市の緑化、リゾート地での生態系保全などを行ってきた。例えば東京ミッドタウンは旧防衛庁時代と比較して現在の緑化面積は2.7倍だ。日本橋の福徳神社の再建などにも取り組んできた。

脱炭素社会の実現に向け、温暖化ガス排出量削減目標を定めて国際的な認定機関「SBTイニシアチブ」の認定を取得した。2050年度までにグループ全体の排出量をネットゼロにする。グループ全体で見るとスコープ1は12%で、88%はスコープ3のサプライチェーンだ。テナントや住宅の購入者など他者利用時の排出を抑えるため建物の省エネ性能の向上、物件共用部の電力グリーン化などを計画。当社グループのグリーン電力供給は21年4月から開始している。

再生可能エネルギー調達強化のため全国でメガソーラー事業を拡大した。30年度までに3.8億キロワット時を目指す。建築時の二酸化炭素(CO2)の削減に向け、設計会社とゼネコンや資材メーカーの協力を仰いでルールづくりに取り組んでいる。

当社の目指す社会的価値創出とは、街づくりを通して持続可能な社会をつくること、暮らしを豊かにし、人々に感動を与えることだ。これはSDGsにかなった取り組みであり、今後もしっかり強化していきたい。

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【企業講演】個人と会社、対等の関係に

リコー 代表取締役 社長執行役員・CEO 山下 良則 氏

企業のESG(環境・社会・企業統治)推進には、従業員が自分の役割と社会課題をひもづけモチベーションを高めることが重要だ。SDGs17の目標の中からリコーの事業が関係する項目を選び、KPI(評価指標)を設定し財務とは別にESG目標として位置づけた。同時に社員のための働きがい改革を始めた。

社員との距離を近づけるために社長室を廃止。動画や座談会、SNS(交流サイト)も使い、社員に直接語りかけている。経営会議もコールセンターや工場など現場で行うようにした。

コロナ禍でペーパーレスが一気に進み20年からデジタルサービスの会社への転換を宣言。OAメーカー時代は指示された仕事を着実にこなすことが評価されたが、デジタルサービスの会社では自律的に課題解決できる人材を増やしていかねばならない。上司は管理でなく支援しパフォーマンスをしっかり測る。10日以上の男性の育児休業取得率が21年に83%まで上がり、単身赴任解除も増えるなど、コロナ禍によって本質的な働き方を追求する風土になってきた。

働き方の選択肢を増やし人材を可視化するには一人ひとりがどういう人生を送りたいか、どんな仕事をしたいか明らかでなければならない。業務・人材の可視化、密なコミュニケーションによるオープンな風土が整ったため、22年4月にリコー式ジョブ型人事制度をスタートさせた。個人と会社が対等の関係となることが目標だ。働きがいと経済成長が両立する持続可能な社会の実現を目指していきたい。

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【企業講演】「3R」バリューチェーン全体で

アサヒグループホールディングス 代表取締役社長 兼 CEO 勝木 敦志 氏

アサヒグループは長期目標「環境ビジョン2050」を掲げ、「ニュートラル&プラス」の発想で自然の恵みを次世代につなぐという考えのもと、環境負荷低減や独自技術を生かした環境価値の創出を目指している。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のフレームワークによるシナリオ分析を行い、炭素税導入による生産コストの増加などに対応策を講じなかった場合のリスクの影響額を可視化。その対応策として、CO2排出量削減、容器包装資材の3R(リデュース・リユース・リサイクル)の推進などにバリューチェーン全体で取り組んでいる。また、50年までにCO2排出量実質ゼロを目指す。

プラスチック問題は、18年5月からケース販売専用のラベルレス商品の販売を開始し、ラベルに利用される樹脂量の90%を削減。21年11月からはペットボトルの表面にレーザーで微細な点状の模様をつける技術を活用して、完全ラベルレスを実現した。水平リサイクルの取り組みも推進・拡大していく。

海外におけるステークホルダーとの共創による取り組みも強化し、廃棄プラスチックを大幅に削減した循環型社会の実現、持続可能な原料調達の実現など、地域社会の課題解決に取り組む。

不適切な飲酒の撲滅も重要なテーマだ。当グループでは「スマートドリンキング」を提唱し、ノンアルコール、低アルコール飲料の販売構成比の拡大を国内およびグローバルで進めるなど、次世代に向けた飲酒文化の創造につなげたい。

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【企業講演】循環型経済 グループ挙げ探る

セブン&アイ・ホールディングス 代表取締役社長 井阪 隆一 氏

グループの重点戦略推進の基盤となるのは、サステナブル経営である。今年度に重点課題の改定を行い、新たに課題を特定し、具体的な活動に落とし込んでいる。例えばセブン︱イレブンのデリバリーサービス「7NOW」は、スマートフォンで近くの店舗のリアルタイムの在庫を見ることができ、ほしい商品をクリック、送信すると約30分後に商品が自宅に届く。お買い物への不便を解消し、住みやすい社会を実現する一助になるサービスとして、実施エリアを拡大していく予定だ。

19年には環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」を発表。CO2排出量削減、プラスチック対策、食品ロス・食品リサイクル対策、持続可能な調達の4カテゴリーで定量的なゴールを設定し、事業会社横断的に取り組みを行うイノベーションチームをつくり推進している。CO2削減対策では省エネ、創エネ、再生可能エネルギーの調達という3手法により、50年までにCO2排出量実質ゼロを目指す。

サーキュラーエコノミー(循環型経済)の取り組みとして、グループ各社の店頭に約2千台のペットボトル回収機を設置。容器を単一の素材で作る「モノマテリアル」も推進している。21年10月にはグループとしての人権方針を策定・公表し、人権推進プロジェクトの発足と人権デューデリジェンスの実施に着手した。グローバルリテーラー、プレーヤーとしての責任はより重くなる。全てのステークホルダーと一緒にしっかりと、確実に歩んでいきたい。

【企業講演】共生社会 保険の力で

MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス取締役社長 グループCEO 原 典之 氏

当社は、「リスクソリューションのプラットフォーマー」として、気候変動をはじめとした様々な社会課題の解決に貢献し、社会とともに成長することを目指している。経営戦略を下支えする基盤と位置付けるサステナビリティーの推進においては、「プラネタリーヘルス」「レジリエンス」「ウェルビーング」の3つを重点課題として取り組んでいる。

こうした取り組みを浸透させるために、当社では18年からグループ横断で「サステナビリティコンテスト」を開催。このコンテストは日々の業務でサステナビリティーやCSV(共通価値の創造)につなげる取り組みを世界中で募集し、優れたものを表彰してノウハウを共有するものだ。今年の最優秀賞はインドでの取り組みだった。

インドの地方農村部では、低所得層や貧困層に損害保険が普及していないこと、女性の社会進出の遅れが社会課題だ。そこで少額の無担保融資を提供する金融機関と提携し、低価格の「マイクロ家財保険」を販売。保険普及と同時にローンの借り手はマイクロビジネスを営む女性が多く、保険を通じた事業継続リスク低減は女性の社会進出支援にもつながる。

また、災害を最小限のダメージにとどめる環境づくりは保険会社の大事な役割なので、気候変動対策として脱炭素社会への移行や緩和を支援する商品・サービスを提供している。途上国の「損失と被害」への取り組みも大きな社会課題の一つとなっており、当社は保険・金融サービスを通じ、官民連携で解決に取り組んでいる。

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【企業講演】洋上風力など積極支援

三菱UFJ銀行 取締役頭取執行役員 半沢 淳一 氏

当行を含むMUFGでは、グループ全体のパーパス(存在意義)「世界が進むチカラになる。」を起点に、21年4月に中期経営計画を策定した。この3本柱の一つ、企業変革の重点テーマとして環境・社会課題解決への貢献に取り組んでいる。

その優先課題の一つ、気候変動対応・環境保全では50年までに投融資ポートフォリオの温暖化ガス排出量実質ゼロを目指す。本業であるファイナンスを通じたものでは、洋上風力などの再生可能エネルギープロジェクトを積極的に支援。グローバルでは様々な国際イニシアチブへ参画している。アジアでは現実的かつ段階的なエネルギートランジションの実現に必要な共通原則や基準策定に向けた議論を主導し、活動レポートとガイドラインを公表。またCOP27では「責任あるトランジション支援と信頼できるカーボンニュートラルへの道筋」をテーマにセミナーも開催した。

社会課題解決に向けて、高齢者がアクセスしやすい店舗づくり、イノベーションを促進するためのベンチャー企業の支援、金融サービスへの平等なアクセス確保に取り組んでいる。

人的資本に関する取り組みでは、グループ内公募制度で社員のキャリア形成を後押しする他、デジタルスキル教育にも投資している。多様性確保のために女性マネジメント比率向上に向けた役員によるメンター制度を導入。これらの取り組みが評価され第4回日経SDGs経営大賞では金融機関として初の大賞を受賞。すべてのステークホルダーと対話を重ね一歩ずつ前進していきたい。

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【企業講演】「省・小・精」で価値創造

セイコーエプソン 代表取締役社長 CEO 小川 恭範 氏

当社は1942年、諏訪湖畔で時計工場として創業した。「絶対に諏訪湖を汚さない」「地域に受け入れられる工場になる」という創業者の強い思いを引き継ぎ、地域との共生や環境との調和が社風として定着している。

22年9月には、パーパス「『省・小・精』から生み出す価値で人と地球を豊かに彩る」を制定した。省・小・精の技術をベースにイノベーションを起こし、社会課題を解決する価値を創造し提供することで、持続可能で心豊かな社会の実現を目指す。

当社が取り組むべき社会課題は環境負荷の低減、労働環境の改善、分散型社会をつなげる、インフラ・教育・サービスにおける質の向上、ライフスタイルの多様化の5つ。中でも環境負荷の低減は、創業以来の思いともつながっており、21年3月発表の「環境ビジョン2050」では、カーボンマイナスと地下資源消費ゼロという具体的な目標を掲げた。プリンターやデジタル捺染(なっせん)機、プロジェクターやロボット、センシングといった商品、サービス、サプライチェーンでも環境負荷を低減。環境技術の開発などオープンで独創的なイノベーションの推進で、循環型経済のけん引と産業構造の革新、および生活の質向上の実現を図る。社会とともに成長することが企業価値向上につながる。

社会的責任の遂行活動では、人権尊重とダイバーシティーの推進、ガバナンスの強化、ステークホルダーエンゲージメントの向上、責任あるサプライチェーンの実現、地球環境の保全なども推進している。

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【企業講演】アンモニア輸送事業を展開

商船三井 代表取締役 副社長執行役員 田中 利明 氏

当社は全世界で800隻の船舶を運航する世界最大規模の海運会社だ。1884年の創業以来、世界経済の発展に輸送を通じたサービスの提供で貢献してきた。グループビジョンに「海運業を中心に様々な社会インフラ事業を展開し、環境保全をはじめとした変化する社会のニーズに、技術とサービスの進化で挑む」を掲げ、様々な社会課題解決に取り組んでいる。

「環境ビジョン2.1」では、気候変動対策、海洋環境保全、生物多様性保護、大気汚染防止を重要な環境課題として取り組んでいる。気候変動対策では、50年までのグループ全体でのネットゼロ・エミッション達成を目標に掲げ、アンモニアや水素などのクリーン代替燃料の導入、さらなる省エネ技術の導入、効率運航の深度化、ネットゼロを可能にするビジネスモデル構築、低・脱炭素事業の拡大という5つの戦略を立てた。

低・脱炭素事業の拡大に関する事業の一つにアンモニア輸送事業がある。アンモニアを燃料としてサプライチェーンを構築するには積み替え基地が必要になるが、その積み替えを船上で行っている。また「ウィンドハンタープロジェクト」を展開。これは海洋風で発電し、発電した電気で水素を生産・貯留して活用するプロジェクトだ。

気候変動対策以外では、海洋マイクロプラスチックの回収も行っている。水不足解決への貢献では、海水の淡水化装置を搭載した船をノルウェーの企業と共同開発している。モーリシャスでは2つの基金をつくり、マングローブ再生やサンゴ礁の回復に活用している。

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※日経チャンネルでアーカイブをご覧いただけます。こちらからお入りください。

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