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Saturday, December 17, 2022

プリン?ケーキ?チョコ! 「映え」も味も駄作なし 丹生堂本舗 - 毎日新聞

本物のスイーツそっくりにつくられた丹生堂本舗の駄菓子=大阪市北区で2022年12月15日、山田尚弘撮影
本物のスイーツそっくりにつくられた丹生堂本舗の駄菓子=大阪市北区で2022年12月15日、山田尚弘撮影

 スイーツや動物、人気キャラクターなどをかたどったお菓子は、子どもたちの定番人気。丹生堂(たんせいどう)本舗(大阪市生野区)のチョコレートは本物そっくりな見た目で、SNS(ネット交流サービス)でも話題だ。10~数十円なのに「映える」お菓子、どうやって作っているんですか?

「ハローキティ」「仮面ライダー」も

丹生堂本舗のプリンのチョコレート(手前)。通常のプリン(奥)とかたちがそっくりだ=大阪市北区で2022年12月13日、望月亮一撮影
丹生堂本舗のプリンのチョコレート(手前)。通常のプリン(奥)とかたちがそっくりだ=大阪市北区で2022年12月13日、望月亮一撮影

 商品開発・広報担当の西葉菜好(はなこ)さん(29)が対応してくれた。通していただいた部屋は壁一面にお菓子がいっぱい。「ハローキティ」「仮面ライダー」など、おなじみのキャラクターの商品もある。「60種類以上製造しているんです」と西さん。まるでおもちゃ箱のようで、ワクワクが止まらない。

 丹生堂本舗は1953年、西さんの祖父の潤一郎さんが創業した。最初は岩おこしなどを製造していたが、56年にチョコレートの製造技術を習得。当たり付きの「サッカーボールチョコ」がヒットし、全国販売を始めた。その後、ラムネやグミの製造も開始。製品のラインアップは「コーラボトルグミ」や「ミニプリンちゃんチョコ」など、形や見た目がかわいいお菓子が中心だ。

 バリエーションの豊富さとともに目を見張るのは、形の完成度の高さ。プリンのチョコレートは本物と並べてみると、色も形もそっくり。鼻を近付けるとプリンの香りがし、味もカスタード風味だ。容器が透明で、そのまま飾ってもいいかも。グー・チョキ・パーの形のグミや、容器も中身も10円玉そっくりのチョコレートもある。

 人気キャラクターの商品を販売しているのも珍しい。駄菓子屋さんでは時々、「他人のそら似」のキャラクターを見かけるが、丹生堂本舗は「本家」と契約。ハローキティや初代仮面ライダーは数色のチョコレートを用いて再現し、子どもはもちろん、大人にも人気がある。「リラックマ」のチョコレートやグミは足を組んだり寝そべったりしたポーズもあって、楽しい。西さんは「味と形、両方で勝負できることが強みなんです」と話す。

自社で容器が製造できる強み

丹生堂本舗の駄菓子=大阪市北区で2022年12月15日、山田尚弘撮影
丹生堂本舗の駄菓子=大阪市北区で2022年12月15日、山田尚弘撮影

 それにしても、従業員40人程度の小さな会社で、どうしてこんなにいろんな種類を作れるんですか? 「金型から容器まで自社製作しているからなんですよ」。容器……? ちょっと首をかしげていると、西さんは「自社で作った容器を型にしてお菓子を作っているんです。簡単に言えば、お菓子メーカーであり、容器メーカーでもある、という感じでしょうか」と説明してくれた。

 作りたい形を決めて金型を作るところから自社で行い、お菓子の型にもなるプラスチック容器を成型。この容器にチョコレートやグミの材料を流し込み、フィルムを貼って封をすれば出来上がり、というわけだ。他にはない形を生み出せることはもちろん、自社製造で包装代などを抑えられるため、質の良い材料を使いながら低価格を維持できている。

 チョコレートの場合は、形に合わせた色分けも。「いちごショートチョコ」は、イチゴの部分はピンク、クリームは白、スポンジにあたる真ん中には通常のチョコレートを使用。再現度の高さが重要なキャラクターものを扱うことができるのは、そんなこだわりと技術があってこそだ。

 こうした安価でかわいいお菓子は海外からも引き合いがあり、2011年から台湾や中国などに輸出している。実は西さん、以前は食品を扱う貿易関係の会社に勤めていた。父の西勝弘社長を助け、輸出分野を担当するつもりで丹生堂本舗に転職。しかし、その直後に新型コロナウイルスの流行が始まり、海外との取引が停滞してしまう。

コロナ禍で「駄菓子屋さんごっこ」開発

丹生堂本舗の「駄菓子屋さんごっこ」=丹生堂本舗提供
丹生堂本舗の「駄菓子屋さんごっこ」=丹生堂本舗提供

 そこで足踏みせず、新商品を開発した。箱形の容器を「お店」に見立ててさまざまなお菓子を詰め、自宅で駄菓子屋さんのように買い物やくじ引きが楽しめる「駄菓子屋さんごっこ」セットを開発。開けてすぐに遊べるよう、陳列した状態で配送できる仕切りも自社で製造した。

 自社サイトで限定販売しているが、インスタグラムでバズり(話題になり)、販売日には開始5分で完売。11月に大阪市の書店で開いた限定ショップでも完売するなど、人気を集めている。

 お菓子のバリエーションや技術を生かした新商品だが、視野はもっと広い。「駄菓子屋さん文化そのものを応援していきたいと思っているんです」と西さんは、この商品に込めた願いを語る。セットで遊んだ子どもたちが、駄菓子屋さんに足を運ぶきっかけになれば、と。

 同社が目指しているのは「駄作(ダサく)ない駄菓子」。数種類のロングセラーに頼らず、幅広い種類の商品を送り出し続けるのは、子どもたちの選ぶ楽しみを後押ししたいから。西さんは「駄菓子は『ただの安いお菓子』ではなく、コミュニケーションやさまざまな体験、楽しみにつながるものであってほしいんです」と真っすぐな目で語った。お菓子だけでなく、ハートもしっかり「映え」ている。【水津聡子】

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