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Thursday, November 24, 2022

膿疱性乾癬の急性症状に対する新規抗体製剤 - 日経メディカル

 2022年11月16日、膿疱性乾癬(GPP)治療薬のスペソリマブ(遺伝子組換え)(商品名スペビゴ点滴静注450mg)が薬価収載と同時に発売された。同薬は9月26日に製造販売が承認されていた。適応は「膿疱性乾癬における急性症状の改善」であり、用法用量は「成人に1回900mgを点滴静注する。なお、急性症状が持続する場合には、初回投与の1週間後に900mgを追加投与できる」となっている。

 乾癬は、青年期から中年期に好発する厚い銀白色の鱗屑を伴った紅斑を臨床的な特徴とする難治性の慢性再発性炎症疾患であり、世界の人口の約3%(約1億2500万人)、日本では人口の約0.3%(約43万人)が罹患しているとされる。乾癬患者の大半が皮膚以外に症状を伴わない尋常性乾癬であるが、罹患患者は少ないものの乾癬の諸症状の他に、全身の関節に炎症、こわばり、変形などが生じる関節症性乾癬、全身性の無菌性膿疱および発熱などの全身症状を伴うGPP、全身性の皮疹、びまん性の潮紅および落屑を伴う乾癬性紅皮症などもある。

 このうち、GPPは、広範囲にわたる無菌性膿疱を特徴とする好中球性の炎症性皮膚疾患で、尋常性乾癬が先行する例と先行しない例が報告されている。GPPの急性症状は、外来刺激(感染、ステロイドの使用や中断、ストレス、妊娠等)によって誘発され、急速に広がる痛みを伴う突発性の皮膚症状(無菌性膿疱を含む)であり、高熱、極度の倦怠感などの全身症状を伴い、呼吸不全や循環不全を合併する場合もある。このことから、GPPの急性症状に対する治療は、効果が速やかに発現し、膿疱や全身症状の改善が高くかつ忍容性が良好な薬剤が必要とされている。

 国内のガイドラインでは、GPPの急性症状に対する治療として、呼吸不全や循環不全の一次治療でステロイドの全身投与と共に、シクロスポリン(サンディミュンネオーラル他)の内服、レチノイド製剤のエトレチナート(チガソン)、メトトレキサート(リウマトレックス他)、抗TNFα製剤などの遺伝子組換え生物学的製剤および顆粒球単球吸着除去療法による全身療法が推奨されている。

 近年の研究から、家族性のGPP患者ではIL-36受容体(IL-36R)の内因性アンタゴニストIL-36Raをコードする遺伝子(IL-36RN)の機能欠失型変異が認められ、病変部ではIL-36のシグナル伝達が亢進していること、尋常性乾癬の皮膚病変と比較してGPPの皮膚病変ではIL-17よりIL-36が高発現していることが報告されている。

 スペソリマブは、GPPに関与するIL-36Rを標的としたヒト化抗ヒトIL-36Rモノクローナル抗体であり、IL-36Rに結合することで、内因性リガンドによるIL-36Rの活性化と下流の炎症シグナル伝達経路を阻害し、治療効果を発揮すると考えられている。GPPにおける急性症状の改善を目的とした、日本初となる治療薬である。

 GPPに対する医師による全般的評価(GPPGA)における中等度~重度の急性症状が認められる成人患者を対象とした国際共同第II相試験(Effisayil1試験)において、同薬の単回投与による有効性および安全性が確認されている。海外では2022年11月時点、米国で承認されている。

 副作用として、主なものは疲労(5%以上)、上気道感染、掻痒症(各1~5%未満)などであり、重大なものは重篤な過敏症(5.7%)が報告され、重篤な感染症の可能性もあるので十分注意する必要がある。

 なお、薬剤使用に際しては、下記の事項についても留意しておかなければならない。

●急性症状が持続する場合には初回投与から1週間後に追加投与できるが、初回投与から2週間以内に治療反応が得られない場合には、治療計画を慎重に再考すること

●感染症のリスクを増大させる可能性があり、また結核の既往歴を有する患者では結核を活動化させる可能性がある。また、同薬との関連性は明らかではないが、悪性腫瘍の発現が報告されている。治療開始に先立ち、同薬が疾病を完治させる薬剤でないことも含め、同薬の有効性および危険性を患者に十分説明し、患者が理解したことを確認した上で治療を開始すること

●ウイルス、細菌および真菌等による重篤な感染症が報告されているため、十分な観察を行うなど感染症の発症に注意し、同薬投与後に感染の徴候または症状が表れた場合には、直ちに担当医に連絡するよう患者を指導すること

●医薬品リスク管理計画書(RMP)では、重要な潜在的リスクとして「悪性腫瘍」「末梢性ニューロパチー」「免疫原性」が挙げられている

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