「今の苦境から抜け出すためには棘(とげ)のある枝でも掴むしかない」
ブルキナファソの外相がテレビのインタビュー(NHKクローズアップ現代『ロシアが友好国を拡大?』9月28日放映)で語っていた言葉が、今も強く印象に残っている。
この国はフランスの植民地だったが、独立後はロシアを含む複数の国々の影響下にある。アフリカ大陸には、リビア、ボツワナ、ルワンダなど、経済成長率の高い国がある一方で、貧困、経済格差に苦しみ悩む国も多い。つい先日、世界食糧計画(WFP)が、エチオピア、ソマリア、ケニアでの干ばつで1300万を超える人々が飢餓に喘(あえ)いでいるという発表をしたとの報道にも接した。
この大陸に、このところ急速に経済、軍事など多面的な援助の手を差し伸べてきたのが、ロシアと中国の両国である。「棘」を意識されながらも、頼られる国の動きを追い、今展開する国際政治の裏面を考えてみたい。
南進体質の“地金”を持つロシア
考えて見れば、ロシアは、「ベルリンの壁崩壊」(1989年)とソ連の自滅による「冷戦終結」(1991年)で、ひとたびは社会主義国家から新たに装いを替えて出来た国家である。その経済力は1998年に国家デフォルトを起こしたように、2000年代に入っても苦境が続いた。
しかし、冷戦の終わりと共に世界を覆うことになったグローバル化の好影響を呼び込むことに成功し、2010年頃には、石油、天然ガスといった資源保有国の力量を存分に発揮出来るまでに回復していった。
そうした経済力を背景に、本来この国が持つ南進体質の“地金”をあらためて露わにしたのが、「第一次ウクライナ戦争」ともいえる2014年の「クリミア併合」である。2015年にはシリア内戦、2018年には中央アフリカ内戦に干渉し、今や本格的な「ウクライナ戦争」が泥沼化するに至っている。
見逃せない「ワグネル」という傭兵の存在
その一方で、2019年には、すべてのアフリカ諸国を集めて、「ロシア・アフリカ経済フォーラム」を開催するに至っている。これには、「クリミア併合」がもたらす国際社会での悪評価やそこから派生する孤立化懸念を防ぐ狙いもあったに違いない。
ロシアのアフリカ進出は、先に挙げたテレビ放映において抉(えぐ)られていたように、「ワグネル」と呼ばれる傭兵(ようへい)の存在が見逃せない。
これは、今回の「ウクライナ戦争」でも暗躍が取り沙汰されている。戦闘的プロ集団であり、ロシア政府の手で作られた準軍隊的様相が濃いものの、正体不明の部分も多い。
アフリカ各国にあって、統治の基盤が弱いケースに起こる反政府的抗争に、この集団の出番が生じる。だが、市民が巻き添えにあい犠牲になっても、その責任の所在が不明朗なことから、不都合が多発しているとのリポートも提起されていた。
ただ、「ワグネル」の存在が確実視される国が6カ国、ロシアと軍事協力関係を持つ国が34カ国にも及ぶという実情は、その浸透ぶりを証明してあまりある。色々あっても、ロシアに面倒を見て貰うことの利点を感じているからに違いない。
からの記事と詳細 ( 専制国家と民主国家の主戦場となるアフリカ~「棘」のある中ロになぜ頼るのか - 論座 )
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