健康な毛髪は表面がキューティクルで覆われていますが、ダメージによってキューティクルの剥がれ(ダメージ毛)や消失(重度ダメージ毛)が起こります。今まで主流だった髪全体へのカラーリングでは、毛先に向かうほどダメージが大きい傾向でしたが、昨今インナーカラーなどが流行し、そのような髪では重度ダメージ毛が内側や顔周りにも発生し、髪全体にダメージレベルの異なる毛髪が混在することがわかりました(図1)。
また、既存のトリートメントに使用されているケア成分の多くはキューティクルに作用するため、キューティクルが消失した重度ダメージ毛への効果は限定的です。そのため、重度ダメージ毛にも効果があり、かつ、毛先だけでなく髪全体に対して使える新たなケア技術が必要と考えました。
どこを触ってもなめらかに!毛髪表面を均一に覆う新しいアプローチの技術を開発
重度ダメージ毛も健康な毛髪と同じように手触りを良くするため、潤滑性の膜(ヴェール)でキューティクルのように毛髪の表面を覆う新しい技術を考案しました。
様々な状態の毛髪の表面でも吸着できる新しいケア成分を選定。次に、その成分の分散状態をコントロールする技術を確立しました。一般的なケア成分(シリコーンなどの潤滑成分)は大きな分子なので、均一に吸着することができません。そのため、今回は小さい分子を分散した状態で髪に吸着するようにコントロールし、毛髪上では分子同士がネットワークを形成することで膜に変化する技術を確立しました(図2)。この技術によって、膜が髪全体を均一に覆うように吸着するため、擦れや水などにも強く、長時間なめらかさを持続することが可能となります。
重度ダメージ毛でさえも、健康的な髪と同じレベルの指どおり
健康な毛髪は指どおりがよい一方、ダメージがある毛髪は表面の摩擦抵抗が大きいため絡まりが発生し、指やクシのとおりが悪くなります。髪の指どおり・クシどおりの良さを示すコーミングフォース測定※2を行なった結果、新しい技術で処理した毛髪はダメージ程度によらず摩擦が低下し、健康な毛髪と同程度となりました(図3)。これは、健康な毛髪と同じくらい指どおりが良いことを表しており、さまざまなダメージの毛髪が混在していたとしても、髪全体の指どおり・毛流れを改善できたと言えます。
ダメージを気にせず楽しんでほしい!
髪型や髪色は、個性を楽しみ、自分を表現する重要な手段の一つです。しかし、毛髪のダメージによって好きな髪型にできなかったり、お手入れにストレスを感じたりする人もいます。髪の悩みから解放されて毎日の生活をより楽しむことができるよう、今後はこの技術を活かして、頭髪全体のキメを整え、美しい髪を1日中実感できる製品を開発していきます。
本研究の詳細は、「第88回SCCJ(日本化粧品技術者会)研究討論会(2022年7月22日、オンライン開催)」にて発表しました。
※1 「髪のキメ」が整った状態とは、髪の表面・内側ともに、髪1本1本の毛流れがそろった状態のこと。
※2 健康な毛髪・ダメージ毛・重度ダメージ毛のダメージレベルが異なる3つの毛束を用意し、クシで毛束をとかした時にかかる力(荷重)を測定。より絡まりが発生しやすい濡れた状態において、各毛束、10回ずつ測定を行ない、それぞれ最大値の平均をコーミングフォース値として使用した。
からの記事と詳細 ( <髪のキメ研究>毛髪表面を均一な膜(ヴェール)で覆うことで、なめらかな指どおりを持続させる新しい技術を開発 - PR TIMES )
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