岡山大病院の大塚文男副院長は「まだ謎が多いのは事実だが、不安を抱える患者さんに『これは良くなりますよ』『今後これに注意してください』と伝えられることが増えてきた。先が見えないトンネルではなくなりつつある」と話す。
新型コロナ後遺症の男性を診察する岡山大病院の大塚文男副院長=岡山市(同病院提供)
▽違い
岡山大病院は昨年2月に「コロナ・アフターケア外来」を開設。今年3月末までに受診した254人を分析すると、変異株による後遺症の違いが見えてきた。全体の3割が感染当初に入院治療を受け、残りは自宅やホテルで療養。女性の方が男性より多い。倦怠感や集中力の低下を訴える人が目立つ。感染から3カ月以上たって受診した人が半数近くを占める。
調べたのは従来株とデルタ株、オミクロン株の3種類。それぞれの変異株で症状の割合を比べると、デルタ株で12~13%だった嗅覚・味覚障害は、オミクロン株では5~6%に低下していた。脱毛も9%だったのが3%になった。
一方でデルタ株で6%だった頭痛は、オミクロン株では9%に上昇。呼吸困難も4%から8%に、せきは2%から8%に比率が高まった。
▽重い例も
「オミクロン株は後遺症も全体として軽い印象」と大塚さん。ただ若いのに寝たきりで動けず、車いすで来院する人も相変わらずいる。「一概に軽くなったと言っていいのかは疑問だ」と語る。
後遺症で深刻なのが、強い倦怠感で日常生活が困難になる「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」の病状に近づく場合。国内の感染者は5月に入って800万人を超え、多くの後遺症患者が出る懸念がある。大塚さんは「全国規模で診療体制を整備する必要がある」と訴える。
コロナ感染時に重症で、酸素やステロイド投与などの入院治療を受けた人ほど、多くの後遺症に長く悩まされる傾向があることも分かった。ワクチン接種は重い後遺症を防ぐのにも有効らしい。
▽発見
思わぬ発見もあった。後遺症の男性39人の血液を調べたところ、19人で男性ホルモンの値が基準より低かった。男性ホルモンは年齢とともに低下するが、14人は50歳未満の若い世代。男性更年期障害とも呼ばれる「LOH症候群」に該当する人も含まれていた。
男性更年期障害はストレス社会で起きる現代病の一つ。認知力低下や疲労感、抑うつ、睡眠障害などの症状を伴うことがある。
「コロナ後遺症と少し似ている」と大塚さん。入院や隔離で心や体にストレスがかかり、男性ホルモンをつくる性腺がダメージを受けた可能性がある。「後遺症の背景にはさまざまな要因がある。性腺ホルモンの測定が診断に役立ちそうだ」と話す。
デルタ株では感染後に脱毛が起きる人が増えた。気になる症状だが、数カ月で再び発毛する例が多いことも分かった。一方で嗅覚障害はなかなか治りにくく、症状が長引く傾向が強い。
大塚さんは「しばらくたって抑うつや集中力低下などの『後発症状』が突然起きることもある。過度に不安にならずに心と体の変化を自分でチェックし、気になる症状が続く場合は地域の医療機関や後遺症窓口に相談してほしい」と語る。(共同=吉村敬介)
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