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Friday, April 29, 2022

海岸防災林の整備 持続的管理、次世代と連携を 社説(4/29) - 河北新報オンライン

 東日本大震災の津波被害を受けた東北沿岸部で海岸防災林の再生が図られつつある。クロマツなどを植栽する復旧事業は青森、岩手、宮城の3県で2021年度までに終了。東京電力福島第1原発事故の影響が色濃い福島県の進捗(しんちょく)率は21年度末で約7割に上る。津波からの多重防御を目指すためにも管理の担い手や財源の確保といった難題を乗り越え、成果につなげたい。

 林野庁や東北4県によると、県と市町村などが所有する海岸防災林で津波による流出や倒木といった被害面積は計990ヘクタールに及んだ。仙台藩祖伊達政宗の時代に造られた仙台湾南部の防災林や、350年以上前から育まれた岩手県の「高田松原」も含まれる。

 復旧事業の対象は盛り土の造成や塩害への対応を含めて計1534ヘクタールに拡大した。事業費は計1277億円で主に震災復興特別会計を充てた。

 政府が11年7月に定めた復興基本方針は津波防災まちづくりの推進を掲げ、沿岸部復興に「防災林も活用する」と記した。津波の破壊力を弱めるといった効果が指摘されるが、苗木を育てて十分な機能を持たせるには、長期にわたる管理が欠かせない。

 復旧面積が4県で最大の753ヘクタールに上った宮城県。マツの根が下に伸びるように地下水位から2、3メートル盛り土して地盤を整備。被災自治体や民間団体と連携し、1ヘクタール当たり5000本程度の苗木を植えた。20年度には県と官民の約40団体で協議会を設立。保育管理の情報共有に取り組む。

 塩害で枯れるなどした区域が復旧事業全体の約9割(122ヘクタール)に上った青森県は原形復旧を基本に低地などで盛り土を進めた。自主保全活動に当たる連絡組織を設ける方針だ。岩手県は松くい虫被害に強いクロマツの種子を他県から供給され、地元の山林種苗協同組合と苗木を育成。定植後の21年度は下刈り費用約1200万円を確保し、22年度もほぼ同額を予算化した。

 福島県では復旧事業を計画する沿岸部の延長39・7キロのうち約27キロが21年度までに終わったが、原発事故の影響で完成時期は見通せない。浪江町の予定地に環境省の仮設焼却炉があり、撤去後に着手する予定となっている。

 管理には携わる人材の高齢化やボランティアの減少、資金不足といった課題が多い。向き合う上で重視したいのは、次代を担う世代とを結ぶ持続的な取り組みだ。

 宮城県は21年度に若年層の参加を促すプロジェクトに乗り出し、海岸防災林のボランティアと観光を組み合わせたツアーを展開。永続的な維持管理体制の確立へ活動基金の創設も考えるという。

 海岸防災林は居住地や農地を守るだけでなく、美しい景観を形成し、環境教育やレクリエーションの場として根付いた歴史がある。次代に継承する重要性を忘れず、備えを進めたい。

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