近年、慢性疾患の発症には、「慢性炎症」が深く関係しているということが分かってきました。炎症には一時的に起こる「急性炎症」と、持続的に起こる「慢性炎症」の2つがありますが、いずれにせよ「炎症」とは、そもそも身体に存在しない“異物”を体外に排除しようとする正常な機能です。なぜ「止まらない炎症」が長期間にわたって治療が必要な慢性疾患を引き起こすのでしょうか? 慢性炎症の特徴と、それによって具体的にどんな病気が起こってくるかということについて見ていきます。※本連載は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師による書下ろしです。
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「止まらない炎症」が起こす負の連鎖
「一時的な炎症」と「ずっと起こり続ける炎症」の違い 急性炎症では、外から入ってきた病原体に存在する分子(PAMP ※1)が誘因となって免疫反応が発動し炎症反応が起こります。病原体が体外へ排出されると通常は収まるため、急性炎症は異物が排除されるまでの一時的な反応です。 一方、慢性炎症では、自分自身の身体の細胞の一部が、傷ついたり死滅したりするときに放出される分子(DAMP ※2)が誘因となって免疫反応が発動し炎症反応が起こります。そのとき、誘因となる異物は持続的に体内に存在しているため、炎症がずっと続くわけです。慢性炎症はブレーキがかからず、ずっとアクセルを踏み続けた状態になっていると言い換えると分かりやすいでしょうか。 ※1 PAMP(pathogen-associated molecular pattern:病原体関連分子パターン) 文字通り、外から侵入してきた細菌やウイルスの表面に出ているタンパク質を指す。急性炎症で排除しきれない場合、慢性持続感染を起こすこともあるが、大抵は急性炎症で終わると考えてよい。 ※2 DAMP (damage-associated molecular pattern:傷害関連分子パターン) 自分自身の身体の細胞が壊れたときに放出される分子を指す。DAMPでは、自分自身の身体の細胞の一部が、寿命が来たり傷害を受けて分解されたりしたときのかけらが残って炎症を起こす原因になる。 異物を排除するには「活性酸素の放出」が不可欠だが… 急性炎症と同様、慢性炎症においても、炎症の元凶は活性酸素です。活性酸素の放出が持続することで、細胞や組織がダメージを受け続けます。急性炎症においては、外から入ってきた異物がなくなると活性酸素の放出は止まりますが、慢性炎症では、活性酸素が持続的に体内に放出され続けます。 炎症が持続することで活性酸素が放出され、周りの細胞や組織の破壊が新たに起こります。すると炎症の誘因となる異物(DAMP)がさらに放出され、慢性炎症が持続する原因となるわけです。つまり今ある炎症が次の炎症を引き起こすという、歯止めがかからない状態になっているといえるわけです。 炎症によって、わたしたちの身体の細胞が壊されて死滅することを「壊死(ネクローシス)」といいます。少し余談になりますが、これに対して、炎症によってではなく、寿命の来た細胞が自分自身で死滅する場合があります。これを「アポトーシス」といいます。アポトーシスでは炎症が起こらないので、分解された細胞の成分が周りに放出されることはありません。そのためDAMPを放出せず、周りに炎症を起こすこともないのです。周りに迷惑をかけずに、きれいに死んでいくという状態です。アポトーシスについてはいずれ機会を改めて詳しく説明しましょう。 話を元に戻しましょう。このように慢性的に炎症が持続することで、組織の機能低下、組織の崩壊、繊維化が起こります。肺繊維症、腎硬化症、肝硬変症などは、このように身体の臓器に炎症が持続し繊維化が進んだ結果起こってくる臓器機能不全の病態であるといえます。繊維化というのは、炎症の成れの果てに、繊維に置き換わって、硬くなる状態のことです。戦場が焼け野原になって硬い地面が露出した状態をイメージしていただくと良いと思います。
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