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Monday, January 17, 2022

世界で増えている「エコビレッジ」とは? 国内の取り組み事例を紹介 - ARUHIマガジン

2015年9月の国連サミットで明確にされた「SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)」を受け、世界中で「持続可能(サステイナブル)」というキーワードが注目されるようになりました。

そしてSDGsに関連するワードとして、「エコビレッジ」という暮らし方の概念があります。90年代初頭から普及した言葉ですが、環境負荷や人間生活へのダメージが大きい大量生産・大量消費社会に対してのオルタナティブな在り方を理念とするコミュニティの多くは70年代から存在しており、世界で最も有名なスコットランドのエコビレッジ、フィンドホーンは60年代にスタートしています。現在ビジネストレンドにもなっている持続可能性について理解を深めるために、エコビレッジの定義やエコビレッジにおける持続可能性の要件、エコビレッジの国内事例などを解説します。

エコビレッジとは?

エコビレッジとは、「お互いが支え合う仕組み」と「環境負荷の少ない工夫」を取り入れた暮らし方やコミュニティのあり方です。「エコビレッジ」という名称は91年頃つけられましたが、コミュニティとしては70年代から盛んでした。

1998年には国連の選ぶ持続可能なライフスタイルのすばらしいモデルとして 「100 Listing of Best Practice」にも挙げられており、世界中の都市や農村に展開されています。

世界のエコビレッジや新しいコミュニティづくりを推進する国際団体「グローバル・エコビレッジ・ネットワーク(GEN)」は、エコビレッジには以下の要素が必要であるとしています。

・ヒューマンスケール(人間の感覚に適合した住みやすさ)を基準に設計されること

・生活のための装備が十分に備わった住居があること

・人間が自然界に害を与えず、調和した生活を行っていること

・人間の健全な発達を促進すること

・未来に向けて持続可能(サステイナブル)であること

つまり、単に環境に優しい仕組みを取り入れるだけではなく、人が住みやすいと感じられて、資源や産業、生活から社会までが総合的に持続可能な地域でなければ、エコビレッジとは呼べないのです。

エコビレッジの持続可能性を4つに整理

エコビレッジに必要な要素のひとつである「持続可能性(サステイナビリティ)」について、もう少し詳しく紐解いていきましょう。地域の持続可能性は、次の4分野に整理して考えるのが一般的です。

持続可能な食料自給

持続可能な食糧自給においては、田畑を耕して植物や動物を育てる「自給的な農」を基盤とする、自給自足の仕組みをつくることが最重要となります。

十分な生産だけでなく、食品ロスの少ない消費も目指す必要があり、農家と消費者の間の地産地消ネットワークを持つことも大切です。

持続可能なエネルギー

持続可能なエネルギーとは、一般的に石油・石炭・天然ガスといった化石燃料にできるだけ頼らないエネルギーとされています。例えば、太陽光や風力など自然の力や、廃棄物・未使用資材・資源作物といったバイオマス燃料などの再生可能エネルギーが該当します。

エネルギーと密接な関係をもつ水資源の観点では、雨水や排水を雑用水(水洗トイレや清掃などの用途に利用する水)として再利用し、渇水対策とする仕組みなどが持続可能性を高めます。

持続可能な経済

地域ごとの持続可能な経済とは、食糧自給にプラスアルファされる生産によって、その市町村の財政が他の地域に頼らずとも黒字が出せる状態と定義されています。

例えば、地域資源を活かしたグリーンツーリズム(※)や特産品の地域外への出張販売など、地域経済を応援するような産業との連携が重要です。

※グリーンツーリズム:農村や漁村で自然や食事、文化などを味わいながら滞在する旅行スタイル

また、グローバルに対してお金を地産地消する「ローカリズム」も非常に重要となります。1970年代から日本でも「有機農業にかかわる人々」などが様々な取り組みをしてきました。CSAなどは、その成功例として今でも続いているところが多いです。

持続可能なコミュニティ形成

持続可能なコミュニティは、住民が自分のことは自分でするという自治を実践できる状態が重要とされます。

例えば、自分たちの地域が誇る文化を伝える活動や、空き店舗が増えた商店街を活性化させる活動など、住民同士がミッションをもって交流する機会などが具体例です。

住民の自治能力や交流レベルが高まることで、災害時の連携や高齢者のコミュニティ活性化などが促進される効果も期待でき、自治的な要素と行政への働きかけが同時に行えるコミュニティが持続しやすくなるでしょう。

エコビレッジの国内事例を3つ紹介

日本国内でエコビレッジはどれくらい進んでいるのでしょうか。エコビレッジの事例を紹介します。

農村型エコビレッジ「サイハテ村」

熊本県宇城市、宇土半島の真ん中に位置する「SAIHATE(サイハテ)村」は、東日本大震災後の2011年11月に開村したエコビレッジです。サイハテ村は新しいライフスタイルや文化を生み出すため、ルールやリーダーを設けない形でコミュニティがスタートしました。

村の中心にあるテーマは、「パーマカルチャーデザイン」。このテーマは、持続性の高い生態系と文化を築くため、気候・土地・風土・人などのあらゆるものが自律的に相乗効果を生み出せるように地域をデザインするという考え方です。

大人や子供を含む約30名の村民は土のうで作った天然由来の住居に住み、農耕や約1万坪の敷地の整備などを行いながら、パーマカルチャーデザインを具現化する活動を行っています。

また、特殊なスキルをもった村民が多く、来訪者に向けて藍染やヨガ、ドローン撮影などの体験サービスを提供したり、出稼ぎしたりして生活費を確保しながら暮らしているそうです。

参考:三角エコビレッジサイハテ ホームページ

都市型エコビレッジ「アズワン鈴鹿コミュニティ」

アズワン鈴鹿コミュニティは、「AsOne=一つの世界」のモデル社会を実現する試みとして2001年から始まったエコビレッジです。コミュニティは三重県鈴鹿市を舞台に、特定の範囲を設けず、規約や義務もない状態で進められています。

コミュニティの目的は、「誰もが本心で生きられる社会」の構築です。そのために、話し合いで営むことを重視し、ものやサービスを心からの行為や贈り物として、お金が介在しない経済の形態を実験しています。

2015年には、グローバル・エコビレッジ・ネットワーク(GEN)が選ぶ「低炭素社会実現に向けた世界60か所のエコビレッジ」の一つとして、アズワン鈴鹿コミュニティが選ばれています。

参考:アズワンネットワーク 誰もが本心で生きられる社会に!

富山県南砺市のエコビレッジ構想

自治体全体でエコビレッジに取り組む事例としては、富山県南砺(なんと)市の「エコビレッジ構想」が挙げられます。

この取り組みは、2011年の東日本大震災をきっかけに、「本当の豊かさとは何か?」ということを追求するためにスタートしました。

これ以降、市では地域内エネルギーの自給に関する知識や技術を教育する機会の創出や、農林業の再生と商工観光業との連携、ソーシャルビジネスまたはコミュニティビジネスによるエコビレッジ事業の推進など、多角的な視点で施策が実施されています。

これらの取り組みが評価され、南砺市は2019年7月に国(内閣府)よりSDGs未来都市に選定されました。これを機に、SDGsの理念も取り入れる形で既存のエコビレッジ構想をさらに深化させる方針が表明されています。

参考:南砺市エコビレッジ構想: ECOTO

まとめ

近年、持続可能で多様性と包括性のある社会を実現する目標であるSDGsが世界中で注目されており、現代の人々にはこれまで以上にサステイナブルな生き方が求められています。

従来からエコビレッジに特に力を入れているデンマークでは、SDGsに設定される17目標すべての達成を目指す「UN17 Village」という持続可能なエコビレッジをつくるプロジェクトが進行中です。

このようにSDGsとエコビレッジは密接なつながりをもっており、今後はSDGsを実現する手段のひとつとして、エコビレッジという考え方がさらに重要視される時代となっていくでしょう。

【監修者】
伊藤 伸二さん

教員を早期退職し、2年ほど世界各地を放浪。その後、10数年前に北海道で自給的生活を始めました。現在は、田んぼや畑、家畜、エネルギー自給などの実践をシェアする学びの場「エコビレッジライフ体験塾」を主宰しています。塾にかかわってくれる方々のネットワークが広がり生まれたコミュニティが、いずれエコビレッジへと移行していくことを目指しています。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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