
「腹切りプライス」は持続不可能
石油・石炭製品や鉄鋼、化学製品、非鉄金属などの素原材料は経済における「上流」であって、今後は中間財、さらには最終財へと「下流」に物価上昇圧力が移ると考えられる。 その点に注目して、企業物価指数を需要段階別・用途別に分解したのが【図表2】だ。 素原材料の価格上昇が突出していることがよくわかる(右軸は左軸のスケールを倍にして表現)。 素原材料の伸びは前年同月比プラス63.0%(前月比プラス4.9%)と著しい。中間財も前年比プラス14.3%(同プラス1.9%)とふた桁の伸びを示している。 一方、最終財は前年比プラス3.8%(同プラス1.0%)にとどまっている。なかでも、消費者物価指数と関連の強い最終消費財(国内品)については前年比プラス2.8%(同プラス0.9%)と、伸び率が低い。 言い換えれば、企業物価の上昇が一般物価に波及する勢いは、10月の数字からはまだ感じられない。 今後の焦点は、素原材料や中間財のコストと最終財価格の「かい離」がどれほど持続するのかにある。 このかい離は、企業部門が(素原材料や中間財の)コスト増を吸収することによって維持されており、当然のことながら収益の圧迫につながる。 目下みられるような「企業物価指数が上がっても消費者物価指数が上がらない構図」は、企業が俗に言う「腹切りプライス」での商売を強いられていることを意味する。 この状況が続けば、収益の悪化を通じて雇用・賃金情勢にも悪影響がおよぶ懸念がある。そうした状況を金融市場が問題視すれば、株価にも影響がおよぶことになる。 また、コスト増を吸収できず値上げに勤(いそ)しむ企業が増えてくれば、その間隙(かんげき)を突くように値下げでシェアを拡大しようとする企業が出てくるかもしれない。 そこには日本がたどってきたデフレ経済の面影がちらつく。
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