生産部長を務めるロジェ・ムヒンド(Roger Muhindo)さんは工場の入り口に立ち、誇らしげに「私たちは先駆者です!」と言った。中では従業員10人が地元産カカオのチョコレート「ビルンガオリジンズ(Virunga Origins)」を製造している。
紛争地域の同国東部では武装集団の脅威やインフラの不備が、ビジネス活動にとって常に大きな障害となっている。反政府勢力はこの1年で1000人近くを殺害。有刺鉄線と一帯を巡回する武装警備員が、最前線が遠くないことを物語っている。
国連(UN)のコンゴ専門家グループは6月、主要武装勢力の「民主同盟軍(ADF)」による襲撃や拉致事件に加えて、政府軍の不正を報告した。耕作放棄された畑で兵士たちがカカオの実を収穫し、隣国ウガンダでカカオ豆を違法に売りさばいているのだ。
多くの問題を抱えながらも、ビルンガ国立公園(Virunga National Park)はチョコレート工場の操業を維持している。この野生動物公園はマウンテンゴリラで有名な世界遺産(World Heritage)だが、2020年1月、戦闘で疲弊したベニ(Beni)地区のムトワンガ(Mutwanga)に工場を設立した。
目標は収穫の現場でカカオを加工し、農業に依存する国の経済に付加価値のある仕事を創出することだ。またそれによって、あまたある武装勢力に加わる以外の選択肢を地域に提供したいと願っている。
「投資したいと考えている人は他にもいますが、怖いのです。ここでは戦争とかいろいろ起きますから」とムヒンドさん。
初めてチョコレートバーを出荷してから数か月後の昨年12月、ムトワンガと周辺の集落がADFの犯行とされるかつてなく激しい襲撃を受けた。
チョコレート工場から半径20キロ以内では、1年足らずの間に200人以上の民間人が殺されている。
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