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Monday, September 13, 2021

コロナワクチンの謎、なぜ効果が続かないのか【WSJ厳選記事】 - 琉球新報


ヘルス


他のワクチンでは特定されている予防の基準、コロナでは不明のまま

By Jo Craven McGinty
2021 年  9 月 13 日 05:09 JST 更新

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 新型コロナウイルスワクチンはなぜ、効果が長続きしないのか?

 はしかワクチンは生涯、効果が持続する。水痘ワクチンは10~20年、破傷風ワクチンは10年以上だ。だが新型コロナについては、1回目の接種を受けた成人が早ければ半年でブースター接種(追加接種)を受けるべきかを巡り、米当局者が承認の是非を検討している。

 ワクチンの目標は、自然感染した場合に得られる防御を提供することにあるが、重症化や死亡のリスクがないわけではない。

 「本当に望ましいワクチンは、ウイルスにさらされても感染を予防するものだ」。エモリー大学のラストム・アンティア教授(生物学)はこう指摘する。「だがすべてのワクチンが理想的なわけではない」

 アンティア氏によると、予防効果は3段階に分かれている。具体的には、感染と他人への伝染を全面的に予防する効果、重症化と他人への伝染を予防する効果、そして重症化を予防する効果だ。

 ワクチンの効果は、接種により生み出した免疫反応の程度や接種により生まれた抗体が弱体化するペース、ウイルスや細菌が変異する傾向があるかどうか、また感染の箇所によって決まる。

 予防効果の基準とは、罹患(りかん)を十分に防ぐために必要な抗体の水準だ。これはすべての病原体によって異なり、どのように判断するのかさえ異なる。

 オレゴン健康科学大学のマーク・スリフカ教授は「基本的には血液1ミリリットル当たりの抗体か中和抗体のレベルだ」と説明する。

 (T細胞も予防に貢献するが、測定が容易なのは抗体の方だ。)

 破傷風については、1942年にミリリットル当たり0.01国際単位が基準であることが確認された。ドイツの研究者らが動物実験で得られた結果を試すため、意図的に自らの体を病原体にさらすことで分かった。

 はしかの基準が確認されたのは1985年。献血イベント直後に、大学寮がはしかにさらされた後のことだ。学生の献血サンプルで抗体の濃度を測定し、はしか感染の予防にはミリリットル当たり0.02国際単位が必要なことが特定された。

 これらの疾患については、ワクチンへの反応の程度と抗体の弱まるペースから、持続的な免疫反応が生成される。はしかの抗体は非常にゆっくりと消えていく。破傷風の抗体ははしかよりも速いペースで衰退するが、ワクチン接種が必要な量をはるかに超える抗体を作り出すため、消滅分を相殺する。

 スリフカ氏は「破傷風、ジフテリア、牛痘については、われわれは非常に恵まれていた」と話す。「予防の基準を特定できたし、長期的に抗体の衰退ペースも追跡できた。基準が分かっていれば、効果の持続力についても計算できる。コロナについては、分かっていない」

 過去の事例を踏まえると、最も効果的なワクチンは複製ウイルスを使用しており、これは基本的に一生涯にわたる免疫を生み出す。

 はしかと水痘ワクチンは複製ウイルスを使用している。

 非複製ワクチンやタンパク質ベースのワクチン(破傷風ワクチンなど)はそこまで持続しないが、免疫反応の程度を高めるアジュバント(補助剤)の追加で効果を強化することができる。

 破傷風とA型肝炎ワクチンはいずれもアジュバントを使用している。

 米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)と英アストラゼネカのコロナワクチンは非複製アデノウイルスを使っており、アジュバントは含まれていない。米ファイザーと米モデルナのコロナワクチンは「メッセンジャーRNA(mRNA)」と呼ばれる技術を使っており、ウイルスは全く含まれていない。

 問題をさらに複雑にしているのが、ウイルスや細菌が人間の免疫反応をすり抜けるよう変異することであり、このことが抑制をさらに難しくしている。

 はしか、おたふく風邪、風疹、水痘のウイルスが変異することはほぼない。一方で、英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルによると、新型コロナについては、これまで少なくとも8種類の変異ウイルスが見つかっている。

 前出のスリフカ氏は「これによりワクチンが効果を発揮するのが難しくなる」と指摘する。「時間とともに複数のターゲットを追うことになる。インフルエンザのウイルスも変異する。インフルエンザの場合、変異株にできる限り近いワクチンを毎年作ることで適合してきた」

 インフルエンザワクチンの効果は少なくとも半年持続する。

 変異を続けるウイルスに対抗できる有効なワクチンを製造する難しさは別として、集団免疫を形成することでコロナに打ち勝つとの期待も出ている。だが、前出のアンティア氏は、コロナウイルスの感染の仕方を踏まえると、実現は期待できないと話す。

 「多くの呼吸器系感染症については、ワクチン接種により長期持続する集団免疫を生み出せる公算は小さい」という同氏。「集団免疫はわずかな期間しか持続しない。ウイルスがどれだけ速く変異するか、免疫がどれだけ速く衰退するかに左右される」

 問題の一つは、コロナウイルスが気道の上部と下部の両方で複製することだ。

 オレゴン健康科学大学のスリフカ氏は「肺と体の循環は良いが、鼻孔の表面はそうではない」と指摘する。「深刻な病気を阻止できるのは、気道の下部に抗体があるおかげだ」

 だが、気道の上部で低レベルの感染が起こるリスクはくすぶる。

 コロナワクチンは今後、変異株に対抗できるよう改良される見通しだ。またイペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者によると、次世代ワクチンは鼻と肺の湿った表面にある免疫を強化することが主眼になる可能性がある。




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