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サマリー:米経済の「ソフトランディング」の成功は歓迎すべきである。しかし、長引く不確実性はリーダーを悩ませている。本稿では景気後退の予測が外れた理由と今後の見通しを考察する。ソフトランディング後にはどのような状... もっと見る況が待っているのだろうか。 閉じる
米経済の緩やかな減速後に何が待っているのか
米経済がまたしても不吉な予言を吹き飛ばした。景気後退は避けられず、「ソフトランディング」は不可能に近いと言われてから1年以上が経過した。しかし現在、ソフトランディングは完全ではないとしてもかなり進んでいる。連邦準備制度理事会(FRB)は、景気後退を引き起こさずにインフレ率を下げることに成功したのだ。景気後退の唯一の確実な証拠である労働市場は、失業率を押し上げることなく落ち着いている。
これは歓迎すべきニュースだが、経済を取り巻く長引く不確実性は、多くのリーダーを困惑させている。景気後退を見越して早々に身を守ろうと動いた人々は、コストを被ることになった。この不確実性はしばらく続くだろう。
本当にソフトランディングに成功したとしても、その後に何が待っているのか。本稿では、この問いに答えるために、景気後退の予測がなぜ外れたのかと今後の見通しを考察する。
不況の予言、成就せず
パンデミック下で悲観論者が「大恐慌」を予言した時のように、この1年半はかなり否定的な意見が世論を支配していた。まもなく「ハリケーン」が経済を襲うだろうと予想したリーダーや、ソフトランディングの可能性を否定する人もいた。
しかし、グラフが示すように、この16カ月間はまさにソフトランディングが続いている。企業の労働力の逼迫が緩和されて求人数は過去最高水準を下回り、労働者の転職意欲が減退して離職率が低下。失業率は60年ぶりの低水準を維持しており、景気後退の兆候は見られない。
何が間違っていたのだろうか。より適切に言えば、何がうまくいったのだろうか。
否定的な予測の多くは、米経済のレジリエンスを過小評価するパターンに沿っていた。なぜなら、こうした予測は、状況や特異な文脈ではなく、歴史的なモデルや前例に基づいていたからだ。以下の4つのレジリエンスを考えてみよう。
労働市場の回復力:一般的な前提として、金融政策の影響で労働需要が全体として低下すると見られていた。しかし実際は、部分的な弱さを総体的な力強さがカバーしてきた。雇用が過剰な業界(テック業界など)では大幅なレイオフが実施されたが、その他の業界(サービス業界など)では雇用が需要に追いつかず、労働市場は好調を維持した。レイオフされた労働者は次の仕事を見つけた。不況と好況の業種が入り混じる異例な経済の多様化も、レジリエンスにつながった。
消費者の回復力:レイオフが増えて、インフレが家計を蝕み、ポートフォリオの崩壊でバランスシートが悪化して、消費支出が急減すると見られていた。ただし、重要なのはその文脈だ。バランスシートには現金などの緩衝材があった。また、個人の家計は圧迫されたものの、雇用が継続したことで所得総額は大幅に増えて、消費を支えた。全体的な落ち込みは起きていない。
住宅市場の回復力:一般に、金利上昇は住宅市場の足かせになると懸念されてきた。建設活動を遅らせ、価格を押し下げ、あるいは一部の悲観論者が予測したように住宅を中心とした不況を再び引き起こすのではないかと思われていた。しかし、こうしたシナリオは、住宅の在庫が少ないからこそ住宅建設活動は持続するという事実を見落としていた。その結果、金利上昇は住宅活動を先細りさせるというより抑制した。住宅の着工が減少して価格が下落し、取引も減少したが、その後は安定し、再び上昇しつつある。
金融システムのレジリエンス:もう一つ広く懸念されていたのは、FRBが、何かが壊れるまで利上げを続けるというシナリオだ。シリコンバレーバンク(SVB)の破綻が示したように、金融システムが利上げの巻き添えを食うという考え方は不合理ではない。しかし、悪影響が伝染するリスクが過大評価され、それを回避する政策決定者の能力が過小評価されていた。
予想を上回る結果には、共通のパターンがある。それぞれの懸念には評価すべき点もあったが、検討する範囲が狭すぎたのだ。歴史的な関係や、それに基づくモデルが物語ることより、文脈と状況に沿った特異な要因のほうが重要だった。
マクロ経済モデルを信頼しすぎる弊害の教訓は、何回繰り返しても学び足りないようだ。景気循環のサイクルの特殊性を考えた時、「正確な予測」よりも「的確な判断」が求められる。一方で、悲観的な声は決まって増幅される。
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